働き方改革推進中の日本において、どうして精神疾患労災認定が過去最多なのか?
厚生労働省の発表によると、2023年度の精神疾患による労災認定件数は883件となり、なんと5年連続で過去最多を更新しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE288N20Y4A620C2000000/
「働き方改革」「健康経営」「ホワイト企業」といったキーワードが溢れる現代社会において、この結果は大きな矛盾のように思えますよね。
社内コミュニケーション活性化セミナーやストレスチェック制度も普及しているのに、なぜ精神疾患の労災申請は増加し続けているのでしょうか?
ストレス増加の背景にある「価値観ギャップ」と「不十分なフィードバック
社員のストレス増加には、大きく2つの要因が潜んでいます。
1. 価値観ギャップ
昔と比べて、働く人の価値観は大きく変化しました。
昔:
会社に入ったら上司の指示は絶対
がむしゃらに働くことが美徳
現代:
個人の考えやワークライフバランスを尊重
会社が個人の価値観に合致しているかどうかを重視
しかし、企業側の意識が変化に追いついていないケースが多く、社員自身の「こう働きたい」という思いと、会社が求める働き方にギャップが生じてしまうのです。
例えば、長時間労働が当たり前だった時代の名残で、個人の裁量権が少なく、裁量労働制の導入やテレワーク制度があっても形骸化しているケースなどが挙げられます。
2. 不十分なフィードバック
頑張っても成果に繋がらなかったり、上司からのフィードバックが曖昧だったり、成果に対して十分な評価や報酬が得られなかったりする場合も、社員は大きなストレスを感じます。
特に、近年では成果主義的な考え方が広まっており、目標達成が難しいノルマが課せられたり、評価制度が不透明だったりする場合も、社員のストレスを増幅させる要因となります。
社員のストレスを減らし、モチベーションを高めるために企業がすべきこと
では、企業はこうした課題をどのように克服し、社員のストレスを減らし、モチベーションを高めていくべきなのでしょうか。
1. コミュニケーションの質を高め、価値観ギャップを埋める
社員と経営者・管理職が互いの価値観を理解し、尊重し合えるコミュニケーション環境を構築することが重要です。
そのためには、以下のような取り組みが有効です。
定期的な面談や1on1ミーティングの実施
意見交換の場を設ける
積極的に社員からの声を聞く
上司・管理職向けのコミュニケーション研修の実施
2. 成果と貢献を実感できる環境づくり
社員が「自分の仕事が社会に貢献している」と実感できる環境を作ることも重要です。
目標設定制度の導入
定期的な進捗確認とフィードバック
成果に繋がる報酬制度の導入
社会貢献活動への参加機会の提供
3. 自律性を尊重し、主体的に働ける環境づくり
裁量労働制の導入やテレワーク制度の積極的な活用など、社員が主体的に働ける環境を作ることが重要です。
業務内容や進め方に裁量権を与える
自身の成長を支援する制度や研修を用意する
失敗を恐れず挑戦できる風土づくり
4. わかりやすく、具体的なフィードバック
社員の頑張りを認め、具体的なフィードバックを返すことが重要です。
定期的な1on1ミーティングでフィードバックを行う
頑張りを具体的に褒める
成果だけでなく、プロセスも評価する
課題に対して改善点を明確に示す
まとめ
働き方改革が進む現代社会において、精神疾患労災認定件数の増加は深刻な課題です。
企業は、社員一人ひとりの価値観を尊重し、コミュニケーションの質を高め、成果を実感できる環境を作ることで、社員のストレスを減らし、モチベーションを高めていくことが求められています。