中小企業の人手不足関連倒産の原因と対策方法
中小企業の人手不足倒産が増加傾向です。
主な原因は「生産年齢人口の減少」と「就職先としての魅力の低さ」です。
生産年齢人口の減少は、日本全体の問題なので、自社だけでは変えられません。
しかし、労働者から見て魅力的な会社になるのは、自社の問題なので、変えることができます。
魅力的な会社とは、働きがいのある会社です。
「中小企業の人手不足倒産の原因」と「働きがいのある会社にする方法」について説明します。
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【目次】 |
人手不足倒産の実態
人手不足倒産の問題について、ニュースで聴く機会が増えています。
人手不足倒産とは
人手不足倒産とは、事業を行っていくのに必要な人材を、確保できずに発生した倒産です。
仕事があるのに、
「人材がいない理由、で引き受けられない」
「引き受けられないから、売り上げが下がってしまう」
そして、人手不足倒産に至ります。
人手不足倒産の発生には、以下のような原因があります。
・ベテラン社員の退職
ベテラン社員が辞めてしまう理由は、「待遇面などに対する不満からの転職」「定年による退職」などがあげられます。
仕事ができるベテラン社員が辞めてしまうと、大幅に生産性が落ち込み、売上に大きな影響を与えます。
・求人しても応募がない
求人をしても応募がない理由は、より魅力的な条件の会社が、人材を募集しているからです。
国内企業の多くで人材獲得競争が発生しているので、求人を出しても差別化できなければ、応募がない状況になります。
・作業の効率性改善が進まない
作業の効率性改善が進んでいない会社は、同じ仕事内容でも、より多くの人材が必要です。
その結果、人手不足に陥りやすくなります。
・人件費の高騰
求人難の対応に、給料アップの必要に迫られます。
人件費をアップさせた原因により、赤字に陥り、倒産に追い込まれます。
人手不足倒産の状況
東京商工リサーチの調査によると、2019年1月~7月に発生した人手不足倒産は227件でした。
過去最悪だった2018年と同じペースで発生しており、2019年度は、過去最悪の更新の可能性がでています。
倒産の理由は多いものから順に「代表者や役員の引退などによるもの」「求人難」「従業員の退職」「人件費の高騰」でした。
産業別では、もっとも多いのが老人福祉、介護、飲食などを含む「サービス業他」、ついで「建設業」「製造業」「卸売業」「小売業」と続きます。
一般的に「仕事がきつい」「給料が低い」というイメージがある仕事で、人手不足倒産が発生しやすいようです。
実際に、人手不足倒産がどのような理由で発生しているのか紹介します。
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人手不足倒産の原因
人手不足倒産の原因は、大きく分けて「外部環境の変化によるもの」と「中小企業内部の問題」が存在します。
それぞれについて説明します。
生産年齢人口の減少
生産年齢人口の減少は、人手不足倒産の大きな原因です。
日本の将来推計人口(平成29年推計)【国立社会保障・人口問題研究所】によると、労働の中心となる15~64歳の生産年齢人口は減少傾向になっています。
戦後から1995年までは増え続け、1995年に8,726万人に達しましたが、以降減少しはじめ、2015年には7,728万人となっています。
将来の予想としては、2029年に7,000万人、2040年に6,000万人、2056年に5,000万人、2065年には4,529万人と減少の一途をたどるとされています。
働いてくれる人口が増加しないかぎり、人手不足の解消は期待できないでしょう。
中小企業で働く理由がない
若者の大企業志向も人手不足倒産の原因です。
人手不足の状況は大企業も同じで、国内の大半の企業同士で人材獲得競争が発生しています。
労働者にとって有利な売り手市場となっています。
大企業に入れる可能性を持っている労働者にとって、中小企業に就職のメリットは何でしょうか。
中小企業庁が転職者に「前職を辞めた理由」を調査しています。
1位 労働条件が悪い(12.2%)
2位 職場の人間関係(9.8%)
3位 収入が少ない(9.3%)
4位 仕事の内容に興味を持てず(6.0%)
5位 会社の将来が不安(5.4%)
6位 能力・個性・資格を生かせず(4.9%)
参照:H28(2016)年度中小企業白書「平成27年度(2015)の中小企業の動向」(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H28/h28/html/b1_2_2_4.html)
これらの理由について、他社よりも優位性がない場合、人手不足に陥る可能性が高くなります。
中小企業は、大企業にはできない魅力をつくって、労働者を惹きつけるのが大切です。
働きがいのある会社に
人手不足を解消には、上述した「転職者が前職を辞めた理由」を取り除かなければなりません。
その中で、中小企業が大企業に勝てるのは、「職場の人間関係」「仕事の内容への興味」「会社の将来」「能力・個性・資格を生かせる」といった項目です。
「労働者自身と会社の将来に自信がもてる」「人間関係が良い」といった、条件を満たす会社に変える施策が、中小企業には大切です。
会社の目標と個人の目標を共有
「仕事の内容に興味を持てず」「会社の将来が不安」「能力・個性・資格を生かせず」といった転職理由について考えてみます。
社員の中に「このような仕事をやっていて、この会社大丈夫なのだろうか?」「この会社に自分がいる意味があるのだろうか?」といった疑問が生まれると、転職への意欲が高まります。
これらの課題の解消には、会社と個人の目標をお互いに共有が必要です。
会社側は「会社の将来性を社員に信用してもらう」「社員自身の『このように成長したい』を引き出し、支援していく」の両方が必要です。
その結果、社員にやりがいが生まれ、退職の理由が無くなります。
コミュニケーションが活発な職場づくり
上述の「前職を辞めた理由」を見ると、2位に「職場の人間関係」です。
それは「職場の人間関係」が良くなれば、会社への不満が少なくなるという点です。
「職場の人間関係」の改善には、コミュニケーションの質の改善が必要です。
改善のヒントを得るために、一度「人間関係を悪化させてしまうコミュニケーション」を考えてみましょう。
質を下げてしまうコミュニケーションには、以下のような要素が考えられます。
・非難、否定
提案した件に対して非難、否定をすると、された相手は提案する気持ちがなくなります。
また、理由なく怒るのも同様です。
・押しつけ
話を聴かずに、自分の意見を押しつけてばかりいると、相手の不満は大きくなります。
・無視
相手は無視をされると、「ここに自分は必要ない」と感じるようになります。
・信用されない行為
成果やアイデアを奪ってしまうと、相手は不信感をもち、話さなくなります。
これらの要素をできるだけ排除すれば、コミュニケーションの質が良くなります。
社員が安心して活発に発言できる「居心地のより職場づくり」が、社員の退職防止には必要です。
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人材が集まる「働きがいのある会社」にしよう
これからの日本の生産年齢人口を考えると、人手不足の状況はますます厳しくなってくるでしょう。
人手不足の解消には、労働者が「働きたい」と思える会社に変えるのが大切です。
労働者が「働きたい」と思える要素には「会社の将来性が期待できる」「労働者自身の成長も期待できる」「人間関係が良い」という条件があげられます。
どれも簡単にできるわけでは無いですが、目標を決めて構築していけば、人材が集まる「働きがいのある会社」にできます。
少しずつできるところから改善していきましょう。