ECRSの原則とは~業務改善・生産性改善の基礎知識~
日本企業は、外国企業に比べて生産性が低いと指摘されています。
生産性とは、「いかに少ない時間、少ないコストで、より多くの価値の高い商品、サービスを生み出すか」です。
そして、生産性改善の基本は「自社でコントロールしやすい社内の課題から取り組む」です。
社内の生産性改善、業務効率改善に活用するフレームワークが「ECRSの原則」です。
「どうしたら生産性を改善できるのか?」と悩んだときはECRSの原則に沿って検討すると、業務改善に着手しやすくなります。
「ECRSの原則とは」と「活用する際の注意点」などについて説明します。
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【目次】 |
生産性改善がもとめられる理由
企業は常に生産性改善をやり続けなければなりません。生産性改善がもとめられる理由について説明します。
収益性の改善
会社は持続的な成長が必要です。成長するには投資(資金)が必要です。資金を増やすには利益を増やすのが必要です。収益性の改善がもとめられるのです。
収益性を改善するには、いかに少ないコストで大きな売り上げを上げるかの追求が必要です。生産性の改善が、収益性の改善につながるのです。
社員の健康を守る
社員が働きすぎで、過労死や休職するような会社は問題です。社員がそれだけ働かないと、期待する利益が得られないのは生産性が悪い問題が考えられます。
働きすぎによる社員の健康問題について、国も問題視しています。有給休暇取得の義務化、働き方改革、健康経営など、国は社員の健康に、労働時間を短くしようと動いています。
つまり、企業は社員の労働時間を短縮しても、利益を拡大する取り組みがもとめられるのです。
人材育成の時間の確保
生産性が悪いと、薄利多売の経営になりがちです。少ない利益を量でカバーしているので、仕事を止めると大きな影響がでます。
固定費が大きい会社の場合は、赤字に陥るかもしれません。
「仕事を止められない⇒人材育成の時間が無い⇒人材が成長しない⇒会社も成長しない」の悪循環に陥る可能性がでてきます。
社員の人材育成に力を入れるには、生産性を改善し、人材育成の時間の確保がもとめられます。
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生産性改善のECRSの原則とは
生産性改善のフレームワークとして「ECRSの原則」を紹介します。
ECRSとはEliminate、Combine、Rearrange、Simplifyの頭文字をとったフレームワークです。生産性改善はE⇒C⇒R⇒Sの順番で行うと良いとします。
ECRSそれぞれの内容について説明します。
Eliminate(無くせないか?)
現在行っている業務の中で、「あまり意味が無い作業」を洗い出し、排除できないか検討します。
昔は必要だった業務も、時代の流れの中で効果がなくなっている業務があるかもしれません。新型コロナの影響により「出社する」行為自体も見直されています。
出社や出張を無くせれば、交通費や時間の削減につながります。
【具体例】
・無駄な会議を無くす
・無駄な出張を無くす
Combine(一緒にできないか?)
現在行っている業務の中で、「二度手間になっている作業」を洗い出し、一緒にできないか検討します。
大企業の場合、稟議を通すのに「何人もハンコが必要」で、時間がかかると問題が存在します。権限委譲などで、チェック回数を削減すると、それだけ時間が短縮できます。
会議のやり方、書類の種類なども一緒にできないか見直しができるでしょう。
【具体例】
・重複していた書類を一つにする
・2つの生産ラインを一つにする
Rearrange(変えられないか?)
IT技術などテクノロジーが進化して、業務効率の改善が進んでいます。現在行っている業務の中で、新しい技術に変えられる仕事がないか検討します。
紙で処理していた仕事を、パソコン上のデータで処理すると、業務が大幅に改善します。手書きの手紙を電子メールに変えるような方法です。
新型コロナの影響でテレワークが広がる中、「はんこを押す」業務が、「電子印鑑」に変わるかもしれません。
新技術に変える方法の他に、「順番を変える」方法もあります。別々に行っていた作業を、ある作業のついでに行うとその分時間を短縮できます。
【具体例】
・出張をオンライン会議に変える
・書類を電子データによる処理に変える
Simplify(簡単にできないか?)
現在行っている業務の中で、作業をもっと簡単にできないか検討します。
機械系の作業であれば、強度を保ったままネジを削減できないか検討します。組み立て作業が簡単になれば、それだけ業務効率が高くなります。
製造以外の事務系でも同様です。新型コロナの影響で雇用調整助成金の拡充がされましたが、業務が複雑すぎて作業が全然進まないようです。
申請書類の簡素化ができたら、業務効率が大幅に改善するでしょう。
【具体例】
・複数の操作をワンボタンで済むようにする
・稟議書類のフォーマットを簡素化する
ECRSの原則活用の注意点
ECRSの原則は、特に新しいフレームワークでは無いです。そして、内容的にも特に驚くような方法でもありません。
生産性改善に最も必要なのは、生産性改善をやりきる強い意志です。ECRSの原則活用の注意点を説明します。
リーダーシップが必要
生産性改善の問題点は、一旦生産性が悪化する点です。一見、生産性改善の余計な業務が増えます。基本的に今までの慣れたやり方を続ける方が楽なので、抵抗も生まれます。
不要となる仕事を担当している人からの抵抗もあるでしょう。生産性改善を進めるには、このようなデメリットを理解したうえで実施する強いリーダーシップがもとめられます。
また、生産性改善の時間をつくらなければなりません。生産改善の時間をつくれるのはリーダーだけです。社員に生産性改善に協力してもらえるようなリーダーシップが必要です。
PDCAサイクルが必要
生産性改善は、1回で成功するとは限りません。また、技術の進展により、競合他社が新しい仕組みを導入したら、自社はそれを上回る生産性改善が必要になります。
つまり、生産性改善をやり続ける仕組みが必要なのです。生産性改善を始めたら、それをPDCAを回す仕組みを組み込むのが大切です。
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会社の魅力を高めたいときはECRSの原則を
・会社が高コスト体質でなかなか収益が向上しない
・仕事が忙しすぎて社員を育成する時間がとれない
・人材不足の原因で有給休暇が取れない会社になっている
このような問題があると、人材確保にも不利になります。
会社の魅力を高めるには、生産性改善の継続が大切です。生産性改善はECRSの原則に沿って進めるとわかりやすいです。会社の課題解決にECRSの原則を活用しましょう。