中小企業のM&Aの注意すべき買収失敗の理由
労働人口減少による人手不足、後継者不足などにより、日本は大廃業時代に向かっていると言われています。
そのため、M&Aの件数も増加傾向です。
そして、M&Aは、会社を大きく成長させるチャンスです。
しかし、「M&Aは、6割ぐらいが失敗する」といわれています。
失敗となれば、会社を大きくできるどころか、逆にピンチに追い込まれる可能性が高まります。
M&Aの失敗を、できるだけ避けるチェックポイントを紹介します。
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【目次】 |
M&Aで失敗するケースとは
企業のM&A(買収・合併)が活発です。
日本企業のM&Aの件数は、1996年に500件程度だったものが、2018年には3500件を超えています。
後継者不足による大廃業時代が、じわじわと始まっていることが要因です。
2019年9月11日の大和総研のコンサルティングレポート「成功するM&A、成功しないM&A」には、2017年でM&Aを失敗と感じている企業は63%にものぼるそうです。https://www.dir.co.jp/report/consulting/ma/20190911_021009.pdf
M&Aの失敗は、経営資源の少ない中小企業にとっては、致命傷になりかねません。
M&Aは、買収時点で成功とはいえません。
M&Aをきっかけに、成長ができて初めて成功といえます。
大企業の事例になりますが、M&Aに失敗のケースを紹介します。
セブン&アイ・ホールディングスのそごう・西武の買収
2006年にセブン&アイホールディングスは、そごう・西武を累計2,300億円で買収しました。
再建にかかりましたが、業績が改善せず、多額の評価損を計上しました。
成長性の低い産業の買収は、リスクが高いことがわかります。
パナソニックの三洋電機の買収
2009年にパナソニックは、三洋電機を累計8,100億円以上で買収しました。
電池事業などの将来性の読み違いなどにより、6,000億円以上の評価損を計上しました。
液晶などと同様、外国企業が価格破壊を起こされそうな事業は、リスクが高いとわかります。
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M&Aで失敗する要因とは
M&Aに失敗要因について、さまざま存在します。
大きな要因を3つ紹介します。
M&Aの目的が不明確
「M&A自体が目的で、M&A後のことを考えていなかった」
「なんとなく、会社が大きくなりそうだからという理由だけでM&Aした」
このような場合、M&Aした会社を活かせなくなります。
買収先の会社の赤字の補填で、大きなダメージを受け続ける可能性もあります。
M&A後のビジョンが不明確で、外国企業の参入など、外部環境変化によって失敗のケースもあります。
デューデリジェンス不足
デューデリジェンスとは、買収先の会社の調査です。
財務状態などを中心に行います。
外部から見たイメージとは異なり、内部の会計はメチャクチャの場合が存在します。
不正会計などで大きな負債が隠されていたら、買収後大きな損害をうけます。
顧客から大きなクレームを抱えている場合、買収後立て直すのに時間がかかるかもしれません。
また、社員の技術力を期待して買収したのに、技術力のある社員が辞めていく可能性も大きいです。
東芝の米原発大手ウェスチングハウスの買収は、デューデリジェンス不足の失敗事例です。
巨額の赤字が発覚、評価以上の価格で買収していたのが判明しました。
その結果、東芝を経営危機にまで追い込みました。
コミュニケーション不全
M&Aは、後の方が大変です。
M&Aまでは、経営幹部同士で事務的に進められるかもしれません。
M&A後は、買収先の社員の抵抗にあうと、大きな負担になります。
買収した側と買収された側のモチベーションは、大きなギャップが生まれがちです。
組織風土の違いがぶつかります。
連携がうまくいかない場合、全く仕事が動かなくなります。
その結果、M&A先の業績悪化により、失敗する可能性が高まります。
M&Aの失敗を回避するために
M&Aの失敗の回避に、気をつけるポイントを紹介します。
環境変化を前提として目的・目標を明確に
まず、何のために買収するのかを明確にします。
・自社の目的やビジョンは何なのか?
・買収先の「顧客」「商品」「販路」「パートナー」など、何が手に入れば自社のビジョンに近づけるのか?
・手に入れた後、どのような戦略はどうするのか?
・外部環境の変化など、戦略にない想定外の問題の発生時にどうするのか?
などが明確でなければなりません。
社員が納得していることも大切です。
デューデリジェンスをしっかり行う
M&A先の調査・デューデリジェンスは、M&Aの専門家の活用をオススメします。
M&Aならではの注意点が存在します。
費用はかかりますが、東芝のようにならないように専門家に調査してもらってください。
信用できる専門家を選択する必要があります。
あまり費用を削らないようにしてください。
安かろう悪かろうでは、問題です。
費用を買収後に取り戻せる自信があるときだけ、買収にかかってください。
多くの場合、買収の確定まで社員に隠されるケースが多いです。
買収先の社員のモチベーションに関わるからという理由です。
しかし、買収後モチベーションが下がって辞められたら困ります。
特にキーマンに辞められてしまうと、買収した意味がなくなるかもしれません。
M&A先の社員の状況も、把握しておくことが大切です。
組織のコミュニケーション能力を高める
M&A後、失敗の要因の多くは、思い描いていたような成果につながらない点です。
買収先の社員が、思ったような成果を上げてくれないという状況です。
買収元の想いが、買収先の社員に伝わらないのが原因です。
「買収されたんだから従うのが当然」という理屈では、人は動きません。
基本的に買収された側は、弱い立場なので、モチベーションが低いです。
買収された側のモチベーションが、上がるような関わり方が必要です。
買収した側のコミュニケーション能力です。
コミュニケーション能力を強化して、早く一体感ができるようにしなければなりません。
M&Aの失敗は、買収後に発生します。
買収後のコミュニケーション不全まで、M&Aの専門家は責任を持ってくれません。
M&A前にチェック
新型コロナの影響もあり、廃業が増加し続けることが予想されています。
M&Aは、ますます活発になると考えられます。
上手に買収すれば、会社の競争優位性を高められます。
逆に、失敗すればピンチになります。
M&Aは専門家の助けを頼るのが大切ですが、成果は専門家にも左右されます。
専門家に丸投げせず、自社でもチェックが大切です。
チェック項目について、主なものを整理しました。
チェックリスト
□M&Aする目的は明確?
□5年後の国内外の競合の状況は?
□M&A後、競合に勝てる理由は?
□M&A5年後のビジョンは?
□M&A3年後の会社の組織体制は?
□M&A3年後の財務状況の予測は?
□M&A3年後の商品や顧客の状況の予測は?
□M&A先のデューデリジェンスに抜けは無いか?
□デューデリジェンスの専門家は、信頼できるところか?
□M&A先の経営者の発言と、デューデリジェンスの結果に矛盾は無いか?
□M&A先の社員は、M&Aに納得しているか?(完了まで社員には知らせないケースも多いです)
□自社の社員は、M&Aに納得しているか?
□M&A後、両方の社員がモチベーションが上がるような関係性をどのように築く?
□M&A後、組織内のコミュニケーション力強化する方法は?
自社に合わせて活用してください。