囚人のジレンマとは~ゲーム理論とナッシュ均衡~
ビジネスでは、さまざまなジレンマに陥るシーンが存在します。
新型コロナウイルスの感染拡大抑制のために、自粛要請に応じるかどうか。
上司の不正を見つけた時、内部告発するかどうか。
さまざまなジレンマに陥ったとき、人はどのような判断をするのか。
それを研究したのがゲーム理論であり、囚人のジレンマ、ナッシュ均衡といったキーワードがあります。
囚人のジレンマについて、説明します。
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【目次】 |
囚人のジレンマとは
囚人のジレンマとは、Weblio辞書には次のようにあります。
相手の出方によって自己の利益に違いが出るという設定下で、二つの選択肢が与えられた二人の人間が遭遇するジレンマ。自白を求められた二人の囚人の状況になぞらえてこう呼ばれる。ゲーム理論の用語。
(出典:Weblio辞書「三省堂 大辞林 第三版」:https://www.weblio.jp/content/囚人のジレンマ)
囚人が、本当のことを自白した方が良いのか?
黙秘をつきとおした方が良いのか?
ジレンマに陥った状態のことをいいます。
1.共犯者が両方とも黙秘したら、刑の重さ1になるとする。
2.どちらかが自白した場合、自白した方は無罪、黙秘した方の刑の重さが10になる。
3.どちらも自白したら、両者の刑の重さは3になる。
両者はお互い相談できない環境にあり、相手の出方によって、自分の刑の重さが変わります。
「相手が先に自白したらどうしよう」という疑心暗鬼が、囚人のジレンマです。
ゲーム理論
ゲーム理論とは、Weblio辞書には次のようにあります。
利害の対立する事態にある集団の行動を数学的にとらえる理論。ゲームにおけるプレーヤーの行動様式をモデルにしたもので,経済現象の分析や軍事的シミュレーションなどに応用される。 〔1940年代,数学者のフォンノイマン(J. von Neumann)と経済学者のモルゲンシュテルン(O. Morgenstern)によって創始〕
(出典:Weblio辞書「三省堂 大辞林 第三版」:https://www.weblio.jp/content/ゲーム理論)
他のゲームプレーヤーの意思決定が、自分の意思決定に影響を与えるさまを理論的に説明したものです。
囚人のジレンマは、ゲーム理論の用語になります。
ナッシュ均衡
ナッシュ均衡とは、Weblio辞書には次のようにあります。
アメリカの数学者 J =ナッシュによるゲーム理論の概念。すべてのプレーヤーが相手の戦略のもとで自分の利益を最大化するように行動しているとき成立する均衡状態。
(出典:Weblio辞書「三省堂 大辞林 第三版」:https://www.weblio.jp/content/ナッシュ均衡)
上記の囚人のジレンマでは、「両者が黙秘」が、全体としては一番良い意思決定となります。
しかし、お互い相談できない状態では、自分の利益を最大化するように意思決定するので、「両者が自白」がナッシュ均衡になります。
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囚人のジレンマ活用法
囚人のジレンマの活用法について、ゲームをつくる場合は、迷わせるようにシステムをつくります。
しかし、一般的に活用の場合は、「迷わせないこと」が大切です。
例えば、新型コロナウイルスの感染拡大の影響抑制に、休業要請に応じるかどうかも、囚人のジレンマに近いでしょう。
自粛要請に応じる?応じない?
日本では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響抑制のための営業自粛要請は、お願いレベルです。
全額の休業補償が出るわけではないです。
その時、次のようなジレンマが生じます。
1.全店舗が休業要請に応じない。
一定程度の収益は確保できるが、感染拡大による影響で売上は減少していく恐れがある。
2.他店舗が休業要請に応じて、自社は休業要請に応じない。
お客様を独り占めでき、収益が最大。(企業イメージは低下するかもしれない)
3.自社以外が休業要請に応じない。
自社が休業要請に応じると一人負けのような状態になる。
4.全店舗が休業要請に応じる。
赤字に陥る変わり、感染終息が早まり、休業期間が最短で済む。
本来は4番を選ぶのが、社会的には一番最適に感じます。
しかし、他社の動きによって状況は変わります。
自社が自粛しても、他社が自粛しなければ、結局感染拡大が止まらず、社会的ダメージが大きくなります。
自粛に応じれば収入が無くなり、自粛しなければ経済の停滞が長期化する。
ジレンマに陥った状態になっています。
ジレンマに陥らず、全店舗が、休業要請に応じるた方が得だと感じる仕掛けをつくるのが必要です。
しっかりした休業補償を行うことが大切なのが分かります。
報連相する?しない?
職場では、報連相を迅速に行うことがもとめられています。
報連相で最も迷うのは、上司の不正でしょう。
内部告発は、ジレンマに陥りやすいです。
もし上司の不正を知っているのが、2人だった場合。
1.両者が内部告発しないと、2人には悪影響はない。(会社全体としては悪い方向に進む)
2.相手が先に内部告発すると、隠ぺいしたと判定されるかもしれない
3.自分が先に内部告発すると、報復人事の対象にされるかもしれない
一般的には、内部告発する方がデメリットが多いため、行われにくくなっています。
報連相も、すぐ怒る上司の場合は、報連相するかしないかジレンマに陥ります。
ジレンマに陥らないようにするには、内部告発、報連相した方がメリットが得られるような仕組みをつくる必要があります。
性善説と性悪説
少し話題を変えて、性善説と性悪説について書きたいと思います。
ジレンマは、この両者の間で発生します。
「人は良心に従って行動する」を信じるのか、「人の行動はルールで縛らないといけない」と考えるのか。
性善説とは
性善説とは、Weblio辞書に次のようにあります。
人間は善を行うべき道徳的本性を先天的に具有しており、悪の行為はその本性を汚損・隠蔽することから起こるとする説。正統的儒学の人間観。孟子の首唱。 ⇔ 性悪説
(出典:Weblio辞書「三省堂 大辞林 第三版」:https://www.weblio.jp/content/性善説)
「人は道徳的に正しい行動をするもの」という前提にたつ考え方です。
自粛要請をしたら、みんな文句を言わずに従う、不正をみたら、自然に内部告発、という行動をします。
性悪説とは
性悪説とは、Weblio辞書に次のようにあります。
人間の本性を利己的欲望とみて、善の行為は後天的習得によってのみ可能とする説。孟子の性善説に対立して荀子が首唱。 ⇔ 性善説
(出典:Weblio辞書「三省堂 大辞林 第三版」:https://www.weblio.jp/content/性悪説)
「人は自分の利益を優先して行動する」という前提にたつ考え方です。
自分にとってメリットが大きく、デメリットが小さいものを選択する意思決定を行います。
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「望ましい行動=メリット」の仕組み化
囚人のジレンマについて説明してきました。
囚人のジレンマに限らず、さまざまなジレンマが世の中には存在します。
ジレンマの解消には、ジレンマを解消する仕組みが大切です。
まずどのようなジレンマが課題になっているかをリストアップします。
そして、それぞれのジレンマについて、望ましい行動を検討します。
ジレンマに陥ったときに望ましい行動をとると、メリットが得られるような仕組み化が大切です。
「迷っている時間をいかに短くするか」が生産性を高めるには必要です。
仕組み化には、トップのリーダーシップが成否をわけます。
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