アンゾフの成長マトリックス~経営戦略のフレームワーク~
アンゾフの成長マトリックスは、経営を学んでいる人の多くが耳にするキーワードでしょう。
とてもシンプルで理解しやすく、頭を整理するには役立ちます。
経営を勉強している人は知っている一方、経営を学んだ経験の無い方には知らないキーワードです。
経営戦略を検討中の経営者のために、アンゾフの成長マトリックスについて説明します。
知っていたからといって、素晴らしい戦略が練れるわけでは無いです。
しかし、間違いを減らすには有効です。
参考にしていただければと思います。
【コラム】アフターコロナのビジネスチャンス-世界経済と仕事の変化に対応する
【目次】 |
アンゾフの成長マトリックスとは
アンゾフの成長マトリックスとは、イゴール・アンゾフによって提唱された、事業拡大戦略のフレームワークです。
アンゾフの成長ベクトルと呼ばれる場合もあります。
市場軸(既存・新規)と製品軸(既存・新規)の2軸の組み合わせによって、4つの成長戦略にわかれます。
市場浸透戦略
既存市場×既存製品の成長戦略です。
現在販売中の製品・サービスを、現在の市場で強化する戦略です。
認知度向上による販売シェアの獲得、顧客満足度向上によるリピート購入を発生させる戦略をとります。
ブランドイメージの構築など、基本となる成長戦略です。
生産性を向上させるには、欠かせません。
新市場開拓戦略
新市場×既存製品の成長戦略です。
現在販売中の製品・サービスを、新しい市場に進出する戦略です。
例えば男性用に販売していたものを女性も対象に広げてみる、大阪だけに店舗があったものを東京にも出店するなど。
売上拡大を狙った戦略となります。
規模の拡大によるコストダウン、リスク分散の効果が得られます。
新製品開発戦略
既存市場×新製品の成長戦略です。
現在販売中の製品・サービスについて、付加価値をアップさせて、既存市場に投入する戦略です。
品質のアップによって、従来製品で獲得できなかった顧客の獲得を狙います。
スマートフォンであれば性能のアップ、飲食店であれば味の改良などを行います。
ガラケー⇒スマートフォン、ブラウン管テレビ⇒液晶テレビのようなイノベーションが重要となる戦略です。
買い替え需要も含めて、顧客の囲い込みを狙います。
多角化戦略
新市場×新製品の成長戦略です。
もっとも失敗の可能性の高い戦略です。
多角化戦略は、無関連多角化と関連多角化の2つに分かれます。
無関連多角化は、いままでやった経験のない事業にチャレンジするので、失敗の可能性が高いです。
関連多角化は、いままでに培ったノウハウなど資産を活かして新しい事業にチャレンジします。
新市場開拓戦略と新製品開発戦略との違いがあいまいになり、必要性が不明確になるかもしれません。
目的は事業拡大しつつ、リスク分散です。
例えば、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、飲食店がダメになったとしても、ネットショップ事業があれば、影響を抑えられたかもしれません。
【コラム】メンタルヘルスとは~職場からメンタル不調者を出さない取り組み~
アンゾフの理論の活用と注意点
アンゾフの成長マトリックスは、とてもシンプルでわかりやすいです。
しかし、シンプルであればあるほど、「こんな場合は?」など、抜けや矛盾点が生じてきます。
あくまで参考となる考え方として、捉えることが大切です。
経営資源と意思決定
事業を成長させていくフレームワークですが、事業を成長させていくには、経営資源を投入しなければなりません。
そして、経営資源は、限りある資源です。
特に中小企業では、経営資源が限られているので、慎重に行わなければなりません。
どの方向で事業を拡大するか、経営者の意思決定が重要となります。
市場浸透戦略がもっとも進めやすいです、
しかし、市場が縮小してきたとき、経営危機に陥ります。
経営者は会社の持続可能性を高めるために、積極的に新市場開拓戦略、新製品開発戦略の意思決定が必要です。
戦略性が必要
どの成長戦略を選んでも、デメリットは存在します。
・市場浸透戦略は、リスク分散できない
・新市場開拓戦略は、新市場に人材、物(拠点)の投資が必要
・新製品開発戦略は、研究開発費や技術力向上の投資が必要
・多角化戦略は、経営資源が分散する
そして、どの戦略も失敗するリスクが存在します。
なぜなら、競争相手がいるからです。
自社以上の投資をしてくる可能性があります。
経営者は、戦略性をもっての意思決定が必要です。
アンゾフ理論の補足~組織と戦略~
アンゾフの有名な言葉に「戦略は、組織に従う」があります。
チャンドラーの「組織は、戦略に従う」と対比されるケースが多いので、それぞれについて見解を述べたいと思います。
アンゾフの言葉「戦略は組織に従う」
「戦略は組織に従う」は、「戦略は、組織に左右される」とも読みかえられます。
新製品開発戦略をしたいとしても、技術者がいない組織であれば、実行ができません。
また、組織は、意思を持つ集団です。
そして、意思の中心的な存在が経営者です。
「戦略は、経営者に従う」という原点にもどります。
戦略が成功するか失敗するかは、経営者の意思決定次第となります。
チャンドラーの言葉「組織は戦略に従う」
アンゾフの言葉は「戦略は、組織に制限される」と読み取れます。
対するチャンドラーは「戦略に合わせて、組織をつくらなければならない」となっています。
新製品開発戦略がしたいなら、戦略に沿った組織をつくらなければなりません。
しかし、大きな投資が必要です。
すべての会社ができるわけでは無いです。
理想的にはチャンドラーの言葉が正しいが、現実的にはアンゾフの言葉に従わなければならないケースも多いといえます。
【コラム】部下のモチベーションを下げるタイプの上司にならないため大切なこと
戦略は経営理念ありき
アンゾフの成長マトリックスを紹介しました。
このフレームワークはあくまで参考にするもので、使わなければならないというものではないです。
経営戦略で大切な要素は、会社としての信念、経営理念です。
経営理念が間違っている、もしくは、方向性がブレると、経営に失敗する可能性が増えます。
たとえば、子供服メーカーがリスク分散といって、大人向けアパレルに進出したりすると失敗する可能性が大きくなります。
成功する可能性も存在しますが、経営者の本気度に左右されるでしょう。
まずは経営理念をしっかり定めて、経営の軸が大切です。
弊社は、経営理念を軸とした、ビジョナリー経営のサポートをしています。
ぜひご活用ください。