コーチングの基礎知識~ビジネスでのメリット・デメリット~
「コーチング」というキーワードを、耳にするケースが増えてきました。
インターネット上でも、セミナーの案内が増えています。
管理職なら、知っている人が多いのではないでしょうか。
しかし、本当に理解している人は、少ないと感じます。
コーチングの基礎知識を整理します。
コーチングは、多くの方が思っている以上に、奥の深いスキルです。
短期間の研修セミナーで、理解できたつもりになるかもしれません。
しかし、できるかどうかは別問題です。
研修セミナーを選ぶ際は、活用できるレベルになるトレーニング重視の姿勢が大切です。
| 【目次】 |
コーチングとは
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「コーチングとは」を説明します。
言葉に、絶対的な定義があるわけでは無いです。
「コーチング」のイメージが、独り歩きしています。
実際、さまざまなシーンで使われています。
スポーツのコーチをイメージする人も多いでしょう。
ここでは、主にビジネスの世界の「コーチング」を説明します。
コーチングの語源
コーチングの語源は、「馬車(COACH)」といわれています。
由来は、「お客様(クライアント)を乗せて、目的地(ゴール)まで連れていく」ところからきています。
ここで重要なポイントは、「目的地(ゴール)を具体的に伝えないと、連れて行ってもらえない」です。
「楽しいところ」と伝えても、運転手にとって楽しいところであるかもしれませんが、クライアントにとって楽しいところとは限りません。
コーチングの目的
コーチングの目的は、「クライアントの問題解決、もしくは目標達成をサポートする」です。
似た目的を持つものに、ティーチングやカウンセリングなども存在します。
それぞれとの違いを説明します。
コーチングとティーチングの違い
ティーチング(教える)、コンサルティング、アドバイスなども、目的はクライアントの問題解決です。
しかし、アプローチ方法が異なります。
ティーチングなどは、「先生が、知識と経験を持っている」が前提です。
知識と経験をクライアントに与えて、問題解決をサポートします。
コーチングは、「クライアントが、答えを持っている」が前提です。
クライアントの知識や経験などから、気づきを引き出し問題解決をサポートします。
特徴として、ティーチングの方が問題解決が速いです。
しかし未知の問題に対しては弱いです。
コーチングは考える力を養うので、未知の課題に対しても強くなります。
ただし、解決に時間を要するので、長期間にわたって「継続的に行う」が基本になります。
コーチングとカウンセリングの違い
コーチングもカウンセリングも、クライアントの中から答えを引き出す点は同じです。
しかし、目的が若干異なります。
コーチングは、目標達成に焦点が当たっています。
対して、カウンセリングは、問題(悩み)解決の方に焦点が当たっています。
カウンセリングは、疲れている人、悩んでいる人を癒す目的があります。
コーチングは、元気な人の目標達成を支援する目的があります。
しかし、明確に区別できるものではありません。
コーチングを受けに来られる方も、はじめは「悩み」から来られるので、コーチはカウンセリングのスキルも必要です。
コーチングの資格と種類
コーチングを学ぼう、受けようとされる方を悩ませるのが、資格や種類の多さでしょう。
資格や種類について、どれが良いかは一概には言えません。
それぞれのスクールは、自分たちのところが一番と思って教えています。
学ぶ側、受ける側は、それぞれの価値観とマッチするかで、選択することが大切です。
またコーチングを受ける場合は、さらに注意が必要です。
同じスクールを卒業した人でも、まったく違うコーチングを行います。
レベルもさまざまです。
それは、お医者さんや弁護士さんなどのように、同じ資格を持っていても、性格やスキルによりさまざまなタイプに分かれます。
コーチングを受けるメリット
コーチングを受けるメリットの一例を紹介します。
・目標が明確になる
・視野が広がる
・ポジティブな面にも目が向けられるようになる
・問題解決が着実に前進する
・自信がつく
・行動の積み重ねで成長する
・考える力が強化される
など
コーチングを学ぶメリット
コーチングを学ぶメリットを説明します。
学ぶと「受けるメリット」は、すべて得られます。
・コミュニケーション能力【傾聴力、質問力】が強化される
・信頼関係の構築方法が身につく
・意思決定力が強化される
など
コーチングで使われる言葉
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コーチングで使われる言葉を、簡単に説明します。
コーチングとコーチとクライアント
コーチングとは、定期的に行われるコーチングセッションを包括した全体像です。
提供する側をコーチと呼び、受ける側をクライアントと呼びます。
コーチングセッション
コーチングセッションとは、コーチとクライアントの面談をいいます。
「コーチングする」「コーチングを受ける」は、コーチングセッションを指しているケースがよく見られます。
通常30分~2時間程度を、2週間に1回から月1回のペースで行います。
セッションとセッションの間に、クライアントが行動するように促します。
セッション⇒行動⇒セッション⇒行動⇒・・・・を繰り返しにより目標達成します。
この繰り返しをまとめて、「コーチング」と呼びます。
コーチングスキル
コーチングスキルは、コーチングセッションで使われるスキルです。
「傾聴」「質問」「フィードバック」で構成されます。
傾聴
傾聴は、「耳を傾けてる」だけととられがちです。
コーチングでは、「本音で話せる環境づくり」の力と捉えてください。
クライアントの本音を、引き出さなければなりません。
傾聴力がなければ、コーチングは機能しません。
「承認」「認める」も、このスキルに含まれます。
質問
質問は、「自分が知りたいことをたずねる」が、一般的かもしれません。
コーチングでは、クライアントの視野を広げ、気づきを促す目的で用いられます。
気づきを引き出すには、欠かせないスキルです。
しかし、「傾聴」がベースに無いと、質問攻めになり機能しなくなります。
フィードバック
フィードバックときくと、評価面談のフィードバックを思いつくかもしれません。
コーチングのフィードバックは、評価を含みません。
「コーチが感じたこと、気づいたこと」を、評価を含めずそのまま伝えます。
例えば、「髪切ったんですね」がフィードバックです。
「似合ってますね」などの評価を含めません。
セルフコーチング
セルフコーチングは、自分で自分にコーチングする方法です。
【メリット】
・コストがかからない
・好きな時に、いつでもできる
【デメリット】
・質問の種類が、自分の思いつく種類に限られる
・甘えが出がちで、行動を促す力が弱い
デメリットを解消する方法は、質問カードを使うなどがおすすめです。
コーチングセッションの進め方
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セッションの進め方を説明します。
実際には、進め方にはルールがありません。
状況に合わせて進めます。
このコラムでは、基本の型を紹介します。
GROWモデル
コーチングセッションの進め方の基本として、GROWモデルがあります。
GROWとは、次の単語の頭文字をとったものです。
Goal(ゴール)
Reality(現状)
Option(選択肢)
Will(意思)
進め方は、次のようなイメージです。
1.テーマについて、達成したいゴールの具体的な状態を話してもらう
2.ゴールに対して、現状が具体的にどうなっているかを話してもらう
3.ゴールと現状のギャップを、埋める行動(選択肢)を具体化する
4.次のセッションまでにする行動の意思を宣言してもらう
最後にクライアントに行動を宣言してもらい、次のセッションまでに行動を促すのが大切です。
コーチングセッションの壁
コーチングは「ただ聴けばいいんでしょ」では無いです。奥が深くとても難しいスキルです。
これまでに数千人スクールを卒業していると思いますが、実際にできる人がどれぐらいいるのでしょう。
管理職研修でコーチング研修を受講した上司も、実際にはできていないケースも多いでしょう。それはトレーニング量が足りないからです。
答えはクライアントの中にある
上司が部下にコーチングする場合、「答えが、部下の中にある」ができない事例が多いです。
どうしても知識も経験も豊富な上司が、答えを持っています。
コーチングと言いながら、アドバイス、指導している場合があります。
また、良かれと思ってするアドバイスですが、問題解決につながらないケースもあります。
なぜなら上司の知識や経験は、時代遅れになっている可能性もあるからです。
また、上司のアドバイスでうまくいかなかった場合、部下は上司のせいにします。
ティーチングと、使い分けがもとめられます。
解決を焦る
上司がコーチングといいながら、指示命令に走るのは、上司自身が上からプレッシャーをかけられているからです。
コーチングのデメリットは、時間を要する点です。
部下が自分の中で気づくのに、待ってられなくなるのです。
解決を焦ると、アドバイスや指示命令に走ります。
その時点で、コーチングではなくなります。
指示命令、評価をするようになると、部下はコーチングを嫌がるようになります。
そして、ますます機能しなくなります。
上司、部下双方が、コーチングは役に立たないとレッテルを貼ります。
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コーチング研修セミナーはトレーニングを重視
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コーチングは、特に管理職に必要とされるスキルです。
経営者含めて、上位の役職者ほど必要になるスキルと感じます。
コーチングは、主体性を引き出すスキルです。
その主体性にブレーキをかける可能性がある人物が、上位の役職者だからです。
上位の役職者がコーチングに理解を示さない限り、機能しません。
アメリカでは、経営者の7割がエグゼクティブコーチをつけているといわれています。
日本にコーチングが入ってきて20年以上になりますが、いまだに普及している感じがしません。
経営者のコーチングに対する理解が、進んでいないことが原因と考えています。
もしかしたら、役に立たないと感じているのかもしれません。
コーチングは、長時間のトレーニングが必須です。
研修受講者が、どれだけトレーニングしたか確認が大切です。
日本企業より生産性の高い欧米企業が、コーチングを取り入れている理由を考えみるといいでしょう。