モンスター社員の特徴と対処方法~コミュニケーション改善~
管理職になると、さまざまなタイプの部下を持ちます。
部下は上司を選べませんが、上司も部下を選べません。
中には、対応に困る部下もいるでしょう。
一時期、モンスター社員の存在が問題となっていました。
新型コロナの影響で、あまり聞こえなくなってきましたが、上司と部下の問題は常に存在します。
日本では、問題ある社員がいたとしても、簡単に解雇できません。
ムリヤリ辞めさせようとすると、パワハラと指摘される場合もあります。
モンスター社員の対処法は、かなり難しいです。
だから、モンスター社員を入社させない、発生させない企業風土づくりが大切です。
モンスター社員の特徴と対処法について整理します。
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【目次】 |
モンスター社員とは
社員の特徴もさまざまで、どのような特徴がモンスター社員なのか正確な定義はありません。
ここでは、「会社の期待どおりに働いてくれない特徴」の社員をいいます。
「社員の方が会社の将来を思って発言している」「会社の方が保守的になっている」場合もあるので、一概にモンスター社員であるともいえません。
もし、会社と社員がコミュニケーションの問題に悩んでいる状況であれば、早く解消しなければなりません。
改めて、一般的に「モンスター社員とはどのような特徴の社員なのか」を解説します。
モンスター社員の特徴
モンスター社員は、「キレる」「スネる」「自己中」などさまざまな種類が存在します。
大きく2つのタイプ、「自己防衛タイプ」と「自信過剰タイプ」に分かれます。
【自己防衛タイプ】
ブラック企業が話題になり過ぎたせいか、過剰防衛的になります。
自分自身が傷つけられるのを避けようとします。
残業時間があるだけで「うちはブラック企業」と発言する場合もあります。
「忘年会に残業代出るんですか?」と発言する特徴を持つ社員もこのタイプです。
【自信過剰タイプ】
自分の考え方に自信をもち、仕事を頼まれても自分の考えと違えば反論するのが特徴です。
最悪、仕事を拒否します。
「では、やってみて」と指示すると、行動しますが成功すると調子にのります。
失敗すると人のせいにするなど対応が難しいタイプです。
一見やる気があるように見えますが、協調性が無く、周りを振り回す特徴があります。
モンスター社員が生まれる理由
モンスター社員の特徴をもつ社員が増えてきた要因は以下のようなものです。
【人手不足と面接の質の低下】
人手不足を解消する目的で、「本来なら採用しない人材を採用してしまった」が原因と考えられます。
辞められると困るので、部下の立場が以前より強くなったとも考えられます。
また、日本では、正社員にすると、なかなか辞めさせるのが難しいです。
しかし、立場が強くなったからといって、みんながモンスター社員になるわけでは無いです。
モンスター社員は、性格の問題が大きいです。
採用面接で、見極められなかったのが問題です。
【生産性が低くなる日本独自の仕組み】
日本は生産性が先進国で最下位です。
日本の特徴は、時間で給料が決まります。
仕事をしなくても、出社すれば給料がもらえます。
仕事をしなくても、残業すれば残業代がもらえます。
年功序列で、頑張っている後輩よりも、頑張っていない先輩の方が給料が多いです。
それならば「仕事を頑張らない方が得」と考える社員が、現れやすくなるかもしれません。
【コンプライアンス】
パワハラ、セクハラなどのコンプライアンスが厳しくなり叱りづらくなったのも原因です。
日本では、正社員の解雇が難しいので、それを逆手にとり、モンスター化する場合があります。
就業規則などを熟読し、権利を主張し、会社より優位の立場に立ちたがります。
【教育】
教育の影響は大きいです。
学校でも、家庭でも、保守的な考え方が広がっています。
学校の進路相談も、安定している理由だけで大企業を勧めるケースが多いそうです。
会社に入る目的が、「仕事をする」ではなく「給料をもらう」に偏り、「できるだけ楽をして、給料をもらう」が生産性が高いと思っているのかもしれません。
逆に、積極的な学生も存在します。
学生時代に主体性を持って何かをチャレンジさせるってケースが増えてきています。
企業側もそのような学生を望んでいるところがあります。
学生時代に何かやりきって自信がついた学生には、上司のやり方は古く感じるかもしれません。
この場合は、上司と部下、どちらがモンスターなのかわからなくなります。
【情報過多】
情報量の増えすぎも原因です。
処理する情報量が多くなりすぎて、社員との対面でのコミュニケーションを取る時間が少なくなりました。
マスコミやインターネットの影響も大きいです。
マスコミによって、不安をあおられるケースも多くあり、極端にブラック企業への過剰反応を示すようになった問題も日本の特徴です。
インターネットで横の情報がよく見えるようになり、比較できるのも要因です。
他の会社が良く見え、それが会社への不満となって態度に現れます。
【価値観の違い】
結論的にいえば、価値観の違いが大きな要因です。
会社が持っている価値観と若い世代が持っている価値観は違います。
昔は「社員は上司に従うもの」という価値観だったかもしれません。
若い社員は「個々の主体性が大切」という価値観かもしれません。
その価値観の違いがぶつかり、お互い「ブラック企業」「モンスター社員」と呼ぶようになるのです。
どのような時代でも世代間ギャップは存在しいます。
価値観の違いがコミュニケーション不全にあらわれます。
【コミュニケーション不足】
上司側、部下側の双方のコミュニケーション力の欠如も大きな原因です。
部下は、自分の身を守るのに必死で、会社や上司の話を聴こうとしない。
上司は、部下の必死に身を守ろうとする気持ちを無視して、仕事を頼もうとする。
お互い分かり合おうとする関係にないからコミュニケーションが上手くいかない。
そうするうちにお互いが敵になって、モンスター社員になるのかもしれません。
【リーダーシップ不足】
モンスター社員が現れたとき毅然と対応できるかも大切です。
コミュニケーション不足も含まれています。
キレるモンスター社員に対して冷静に対応できるか
すねるモンスター社員にも毅然とした対応ができるか
自己中なモンスター社員にも論理的に説明できるか
会社を退職する理由として、上司との人間関係が挙げられることが多いです。
リーダーシップ力不足も部下の不満を生む可能性があります。
モンスター社員の発生につながります。
【コラム】チームワークの一体感を醸成するコミュニケーション方法
モンスター社員の対処法
さまざまな理由で発生するモンスター社員について、対処法を紹介します。
放置すると、「他の社員に負担が集中する」「上司がダウンする」など、会社の生産性が大幅に落ち込みます。
方向性は「入社を阻止する」「仕組みで改善する」の2つです。
解雇する方法もあるかもしれませんが、下手に解雇しようとすると、訴訟問題のリスクがあります。
毅然とした対応が求められます。
入社を阻止する
もっとも大切なのは、モンスター社員となりそうな特徴をもつ求職者を見極めて、「採用しない」です。
なぜなら人は変えられないからです。
「社員にやる気をもって働くようにさせたい」とききますが、「人をコントロールする」は、まず不可能と前提を持ってください。
自由に社員の性格を変えられるなら、面接は不要です。
だからこそ、面接担当者の責任は重大です。
採用面接時に、会社にふさわしい人材か見極めなければいけません。
面接担当者のコミュニケーション能力の強化が必要です。
採用基準も見直す必要があるでしょう。
中小企業によっては、「人材が来ないから、面接に来た人を無条件で採用しなければいけないんだ」な状況もあるでしょう。
しかし、「人材が来ない」が問題ではなく、「人材が来ない会社になっている」が問題です。
中小企業でも、人材が来る会社は存在します。
「多くの人材が働きたい」と思うような会社にするのが大切です。
仕組みで改善する
いきなり「多くの人材が働きたい」と思うような会社にはできません。
理想的な会社になるような取り組みが必要です。
効果が出るまで時間がかかります。
時間がかかるから早めに対応してきた会社は、現在人材不足に悩んでいません。
時間がかかるからと後回しにしてきた会社が、現在人手不足に悩んでいます。
リーダーシップ、経営判断の差が会社の将来を決めます。
時間がかかるので、少しずつでも取り組む姿勢が重要になります。
社員がモンスター化しないように、以下のような仕組みを取り入れる施策が大切です。
上司を周りがサポートする体制を作る
モンスター社員の特徴をもつ人材が配属された上司は大変です。
モンスター社員が仕事をしないから、部下の分を上司が仕事を抱えて倒れてしまう。
モンスター社員を残して、優秀な人材が倒れてしまうのは、会社にとってマイナスにしかなりません。
課長同士、部長同士、社長も含めて、助け合える体制が必要です。
相談し合える関係づくりの仕組み、モンスター社員を柔軟に配置転換できるような仕組みをつくり、周りの社員への影響を最小限に抑えます。
就業規則など会社のルールの勉強会などを開催する
社員教育の仕組みでモンスター化を防ぎます。
まず会社に就職する意味について、共通認識を持っておくのは大切です。
前提条件に、会社は「会社の目的」を果たすために人を雇用しています。
会社は従業員に仕事を指示しますし、成果も期待します。
基本的には、上司が指示した仕事を嫌だとは言えないですし、いい加減に仕事をできません。
仕事を放棄の度合いが大きければ、労働契約違反になる可能性がでてきます。
労働契約や就業規則に「会社が社員に期待する事項」「解雇要件など」が書いてあれば、毅然と説明が必要です。
モンスター社員と認定するには、「仕事の様子を記録する」も大切です。
しかし、「モンスター社員」とレッテルを貼られると、社員側も反発します。
簡単に「モンスター社員」と決めつけないようにすることも大切です。
解雇などまで考えますと、法律が頻繁に変わりますので、弁護士や社会保険労務士など専門家にご相談ください。
モンスター社員が居づらくなるような特徴をもつ組織風土、職場環境を作り上げるのが大切です。
重要なのは、時間がかかってもやり切るリーダーシップの存在です。
お互いに協力し合おうとコミュニケーション能力の高さが必要になります。
コミュニケーションの活性化
コミュニケーションが一方的になりすぎると、ひずみを生みます。
・発言しても否定される
・すぐ怒られる
・指示ばかりで、こちらの意見はきいてくれない
ひずみが大きい状態が常態化すると、上司VS部下の構図ができてしまいます。
お互いの話を聴こうと言う姿勢で、コミュニケーションを活発に行われるよう変えてください。
リーダーシップ強化
モンスター社員の対応方法は、職場全体の仕組みで解決するのが望ましいです。
しかし、その仕組みは勝手にできるわけではありません。
リーダーシップが必要です。
「みんなが協力し合う職場にしよう」というかけ声に対して、協力が得られるようにする。
そのためのリーダーシップが必要です。
もし、協力が得られないのであれば、信頼関係ができていないのかもしれません。
信頼関係をつくるには、やはりコミュニケーション能力強化が必要です。
リーダーシップとコミュニケーション
モンスター社員の特徴を変えるのは難しいです。
基本的に、「人を変える」は難しいです。
何年もモンスター社員になるように教育されてきた人を、上司が短時間で変えられません。
だから「上司自身が変わっていく」が対処法になります。
上司自身の「リーダーシップ」「コミュニケーション」の強化です。
リーダーシップを強化する
「リーダーシップを強化してください」と言われて何をしますか?
リーダーシップの定義もリーダーそれぞれです。
リーダーシップ理論も多くの種類があります。
一度「モンスター社員にも落ち着いて対応できるリーダーって、どのような人だろう?」をイメージしてください。
「そのリーダーは、自己防衛型の社員をどのようにして、主体性を引き出しているでしょう?」
「そのリーダーに対して、自信過剰型の社員は、どうして素直に従うのでしょう?」
「そのリーダーの特徴は?」
その特徴を得るのがリーダーシップ強化につながります。
コミュニケーション能力を強化する
リーダーの役割については、さまざまな考え方があります。
弊社は、リーダーの役割は「組織づくり」としています。
組織をつくるにはコーチング・コミュニケーションが必須です。
自己防衛型の特徴をもつ社員には、本人のモチベーションを引き出すコミュニケーションが必要です。
自信過剰型の特徴をもつ社員には、自分自身を客観的に見つめなおす、内省を促すようなコミュニケーションが必要です。
大きく2つに分けましたが、実際は人の数だけコミュニケーションのやり方は変わります。
上司は部下の数だけ、柔軟に対応したコミュニケーションを取る必要があるのです。
柔軟性が高まれば高まるほど、どのような特徴をもつ部下が来ても上手にコミュニケーションが取れるようになります。
「上司自身のコミュニケーション能力を強化する」が、根本的なモンスター社員の対処法です。
【コラム】ビジネスでワンチームになるために-会社組織の一体感を醸成する方法
コーチング・コミュニケーションを学ぶ
モンスター社員の対処法は、上司のコミュニケーション能力の強化です。
もちろん、すぐに強化できるものではありません。
迅速に対応しなければならない場合は、弁護士や社労士など専門家への相談をおすすめします。
長期的に見れば、採用面接の質向上、社員のモチベーションを引き出す職場環境づくりなどが必要となります。
それには、コミュニケーション能力の強化は欠かせません。
実際、コミュニケーション能力の大切さは、多くの企業が痛感しています。
コミュニケーション能力強化に取り組んでいる上司も多いです。
しかし、思うように効果を上げられていないのが現状です。
それは「コミュニケーションとは」を正確に理解していないのが原因です。
コミュニケーションとは
コミュニケーションとは「話す力」と「聴く力」で構成されています。
当然と感じるかもしれませんが、コミュニケーション能力を強化する場合、「話し方」や「伝え方」ばかり強化する人がほとんどです。
「聴く力を強化しなさい」といわれても、何をすれば良いか分からない人が多くいます。
コミュニケーションは通信です。
情報の完全性が求められます。
電子メールの文章が、届くときに文字化けしていたらコミュニケーションが取れません。
これも当然と感じるかもしれませんが、言葉になると突然難しくなります。
話し手が伝えた言葉だけでなく、言葉の裏に含まれる目的、意図まで伝わらないと完全な情報とは言えません。
例えば。
「できるだけ早くお願いします」で伝わるでしょうか?
言葉は伝わっていますが、「できるだけ早く」の解釈は、聴き手の価値観で決まります。
「そのようなつもりで言ったのではないのに相手を怒らせてしまった」
「頑張るって言っていたのに、期待したほどでは無かった」
「すごく難しいって聴いてたわりに簡単だった」
このようなミスコミュニケーションが、よく発生します。
誤解の連続によって、上手くコミュニケーションがとれなくなり、人間関係が悪化します。
採用面接で失敗するのも、モンスター部下とコミュニケーションがとれないのも、話を聴く力が欠如しているからです。
聴く力とコーチングスキル
「聴く力」とは「相手に本音でたくさん話してもらう力」です。
言葉はとても曖昧です。
「できるだけ早く」「むずかしい」「がんばる」など、具体的な内容は、人それぞれです。
だから、具体的にたくさん話してもらわないと、情報が足りないのです。
たくさん本音で話してもらうコミュニケーションによって、誤解が生まれる可能性を減らせます。
「聴く力」を高めるのは意外に難しいです。
極端に言えば、嫌いな人がいくら話を聴き出そうとしても、相手は本音で話しません。
「信頼関係構築」まで含んで「聴く力」だからです。
モンスター社員と「信頼関係構築」するのは、時間がかかるでしょう。
「聴く力」は強化方法がよくわからないのに加え、強化に時間がかかるのです。
そこで、オススメするのがコーチングスキルの習得です。
コーチングスキルは「傾聴」「質問」「フィードバック」で構成されるスキルです。
「相手に本音でたくさん話してもらう中、自分自身で答えに気づいてもらう」スキルになります。
モンスター社員は、あれこれ指示されるのを嫌がります。
だから、自分自身で考えるように促す方が望ましいです。
「聴く力」を強化するには、コーチング・コミュニケーションの導入がおすすめです。
【コラム】連鎖退職とは~若手社員が連鎖退職する原因と対処方法
魅力的な職場環境に改善する
モンスター社員を抱えると、上司は大変です。
人の性格を変えるのは難しいです。
だから、「上司自身が変わっていく」が大切です。
優秀な人材が働きたいと思うような会社にする施策が大切です。
優秀な人材が殺到する会社になれば、わざわざモンスター社員を採用する必要がありません。
それでは、優秀な人材が働きたいと思うような会社とは、どのような会社でしょうか?
給料が高い、福利厚生が良い、業績が高いなど、さまざま存在すると思います。
どれも、お金がかかるのが課題です。
まずは、職場の人間関係、働きやすい環境づくりが重要となります。
コミュニケーションが活発で、社員が協力し合う環境が必要でしょう。
そのような環境づくりを進めようとのリーダーシップも必要です。
魅力的な職場環境は、優秀な人材を引き寄せます。
企業風土に改善に、コーチング・コミュニケーションを取り入れましょう。