コーチングの基本スキル(傾聴、質問、フィードバック)
「コーチングって何?」と質問された時、言葉にできますか?
コーチングスキル(傾聴、質問、フィードバック)、コーチングセッション(GROWモデル)を説明します。
マイクロソフト元会長のビル・ゲイツやGoogle元CEOエリック・シュミットが「すべての人にコーチは必要」と言っています。
コーチングは欧米では普及していますが、日本はまだまだです。
おそらく、スポーツのコーチなど、コーチが数多く存在し、定義があいまいだから、なんとなくわかった気になるのでしょう。
ビジネスで活用されるコーチングは、とても奥が深いスキルです。まずは基本をしっかり押さえてください。
【コラム】コーチングのビジネスが怪しい、胡散臭いと感じる理由
【目次】 |
コーチングの基本
「コーチングとは?」
言葉は耳にする機会は多いかもしれません。
しかし、内容についてよくわからないという方はまだまだ多いです。
コーチときくと、スポーツのコーチのイメージをされるかもしれません。
また、スポーツのコーチといっても、メンタルコーチというカテゴリーも存在します。
ビジネスシーンでのコーチングは、スポーツのコーチ(指導するタイプ)とは別物と捉えてください。
コーチングの基本について説明します。
コーチングとは
コーチングとは、クライアントの課題解決をサポートする手法の一つです。
定義はスクールごとにさまざまですが、「クライアントの成長を促すもの」と捉えてください。
成長した結果、課題が解決できるようになります。
人材育成の場面で活用されるケースが多いです。
コーチングでは、基本的にコーチとクライアントが1対1で面談します。
その面談をコーチングセッションとよびます。
コーチが活用するスキルをコーチングスキルと呼びます。
コーチングセッションでは必ず次のセッションまでに実施する行動を約束します。
コーチングでは、課題解決方法はクライアント自身で考えます。
だから、1回のセッションで解決するわけでは無いです。
セッションを長期間にわたって定期的に繰り返します。
クライアントはセッション(考える)⇒行動⇒セッション(考える)⇒行動⇒・・・を繰り返します。
行動を積み重ねた結果、クライアントの成長が促されます。
この一連の流れをコーチングとよびます。
コーチングとティーチングの違い
クライアントの課題解決をサポートするスキルです。
同じ目的に、ティーチング(アドバイス、コンサルティング)があります。
ティーチングとは、先生が自身の知識や経験をクライアントにアドバイスするものです。
一般的に「教える」という方法です。
ティーチングに対して、コーチングは原則「教える」をしません。
課題解決の答えはクライアントが持っているという前提に立ちます。
コーチはクライアントから答えの引き出しに専念します。
コーチング、ティーチングそれぞれのメリット、デメリットは次の通りです。
〇コーチング
【メリット】
・考える力が高まる
・主体性、積極性が高まる
【デメリット】
・解決に時間を要する
・自分に無い知識経験はわからない
〇ティーチング
【メリット】
・教えてもらうので解決が早い
・新しい知識が得られる
【デメリット】
・考える力が養われない
・教えてもらってない事柄はできない
コーチングとティーチングはどちらが絶対的に優れているは無いです。
メリット、デメリットを補完し合う関係になっています。
バランスよく使いわけが大切です。
しかし、日本の教育はティーチングに偏っています。
その弊害として、「課題解決力の低下」「指示待ち社員」などの問題が発生しています。
それらの問題を改善する目的で、アクティブラーニングの採用、センター試験を廃止して課題解決力を問う共通テストの採用などの動きがみられます。
企業でも社員の考える力を育もうと、コーチング研修などが行われています。
コーチングの種類
コーチングをわかりにくくするものが種類の多さです。
スクールも資格も数多く存在します。
コーチングを分解すると「基本」+「応用」にわけられます。
「基本」は、ほぼ同じと捉えても問題無いです。
応用部分によって、種類がわかれます。
「脳科学」「NLP.アドラー,交流分析などの心理学」「カリスマコーチ独自の理論」などによって、種類がわかれています。
それらの違いは、主にセッションの進め方やスキルの内容に違いとして現れます。
コーチングをこれから学ぶ方は、まずは「基本」を押さえるところから始めてください。
「基本」ができていない限り、「応用」の効果が発揮できないからです。
ちなみにコーチングを受けたいと思った時にも、さまざまな種類のコーチが存在します。
それは教師が科目ごとに専門分野がわかれるように、コーチも得意分野にわかれています。
「基本」部分は同じですが、コーチから出てくる質問は、その分野をどれだけ知っているかによって深さが変わるからです。
受ける効果と学ぶ効果
コーチングは、受ける効果だけでなく、学ぶ効果も存在します。
〇コーチングを受ける効果
・目標、ビジョンが明確になる
・現状が明確になる
・行動するべきことが明確になる
・行動して経験を積むことにより自信がつく
・自信が高まることにより主体性がつく
・主体的に行動することにより目標に着実に近づく
・考える力が強化される
・柔軟性が増す
・ストレスコントロール、メンタルが強くなる
〇コーチングを学ぶ効果
・受ける効果の全部
・視野が広がる
・聴く力コミュニケーション能力のアップ
・人間関係改善
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コーチングスキルの基本
セッションで活用されるスキルをコーチングスキルとよびます。
セッションで重要なポイントは会話の8~9割、クライアントが本音を話している状態をつくるです。
どうやってクライアントにそんなにたくさん話してもらうのか?
その目的に活用するのがコーチングスキルです。
コーチングスキルとは
コーチングスキルとは、「傾聴」「質問」「フィードバック」で構成されるスキルです。
「フィードバック」以外は、なじみのある言葉かもしれません。
普段から意識していると感じるかもしれません。
しかし、どのスキルも奥が深く、長時間のトレーニングを必要とします。
傾聴
傾聴とは「耳を傾けるだけ」と捉えられるケースが多いです。
耳を傾けるだけで相手が本音で何でも話してくれるなら苦労しません。
コーチングで使う「傾聴」の意味が、よく使われる「傾聴」の意味と異なります。
ここでは「傾聴=安心して本音で話せる環境づくり」と捉えてください。
何でも話せる環境ができるから、他の「質問」などのスキルが活かされます。
スキルの中で、もっとも大切なスキルです。
傾聴には「承認、認める」という行為も含まれます。
否定、批判される場では、クライアントは安心して話ができません。
質問
質問は一般的には、自分が知りたいことを質問します。
コーチングの質問は異なります。
クライアントの課題解決のヒントを引き出すために質問します。
人は追い詰められれば追い詰められるほど視野が狭くなりがちです。
追い詰められていなくても自分自身の価値観によって視野が制限されます。
それを、コーチからの質問によって視野を広げます。
また、「難しい」「自信がない」という言葉で行動できないケースがあります。
それは、よくわからないという状態だから動けなくなるのです。
質問によって、課題の明確化をサポートします。
フィードバック
フィードバックもよく使われる意味とは少し異なります。
人事評価制度のフィードバックのように「評価」の意味を含みません。
コーチングのフィードバックは「評価」ではなく、「感じたことをそのまま鏡のように返す」をいいます。
例えば「歯にノリがついてるよ」と伝えるのと似ています。
そこに「かっこ悪い」などといった評価を含みません。
見たまま、感じたままを伝えます。
評価を含めると、安心の場が崩れます。
自分が上手くいっていると思っている事柄は、課題として気がつきにくいです。
それをコーチの客観的視点からのフィードバックによって気づきが生まれます。
コーチングセッションの基本
「コーチングを学ぶ」は、「セッションの仕方を学ぶ」と同じ意味である場合が多いです。
セッションの基本的な部分について説明します。
この基本部分にプラスアルファされ、多くの流派に分かれます。
応用を学ばなくてもセッションの基本をしっかり押さえておくと、セッションは問題なく行えます。
コーチングセッションとは
コーチングセッションとは、コーチとクライアントの面談をいいます。
時間:30分~2時間
頻度:2週間に1回~月に1回
方法:対面、オンライン
コーチングスクールでは、30分間のセッションを基本とするケースが多いです。
スタイルは「コーチの考え方」「スクールで学んだ内容」によりさまざまです。
対面かオンラインかは好みによります。
対面ではカフェなどで行われるケースが多いです。
地方在住の場合は、オンラインになる場合が多いかもしれません。
企業内の場合は対面が基本になります。
GROWモデルとは
コーチングセッションの話の流れについて、GROWモデルに沿って行われるのが一般的です。
GROWモデルとは、特にコーチング専用のフレームワークというわけではなく、一般的な計画達成のフレームワークです。
GROWモデルは次の頭文字をとったものです。
Goal(ゴール)
Reality(現状)
Option(選択肢)
Will(意思)
セッションの基本的な流れは次のようになります。
1.アイスブレイク
2.目指すべき目標(ゴール)の状態を明確化
3.ゴールに対して現状を明確化
4.ゴールと現状のギャップを埋める行動(選択肢)を明確化
5.次のセッションまでにする行動について意思を示す
最後に必ず「行動を促す」がポイントです。
順番は絶対的では無いですが、ゴールと現状が明確でないと、実施すべき行動(選択肢)がわかりません。
ゴールと現状を往復しながら明確化していく場合もあります。
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コーチングを学ぶ上での注意点
コーチングを学ぶ上での注意点を説明します。
大切なポイントは、「コーチングは難しい」との認識です。
資格はお金と時間さえあれば獲得できますが、実際にできるようになるかは別問題です。
コーチングが日本に入ってきて20年以上になりますが、欧米に比べて全然普及していません。
高額かけて学んでも離れて行く人は多くいます。
大企業の管理職研修にコーチング研修を取り入れているところは多いですが普及していません。
それぐらい現場で活用するのは難しいのです。
トレーニング量が重要
コーチングセッションでは、クライアントに8~9割話してもらいます。
意外にこれが難しいのです。
もともとおしゃべりなクライアントならよいかもしれませんが、あまり話をしないクライアントの場合、壁にぶつかる場合があります。
・質問が思いつかず、沈黙の時間が増える
・沈黙に耐えられず、コーチが話してしまう
・質問攻めにしてしまう
・アドバイスに走ってしまう
コーチの方が話す量が多くなってしまうと、コーチングとして機能しなくなります。
特に知識や経験の豊富な管理職ほどアドバイスに走りがちです。
また会社の上司の場合は、会社からのプレッシャーによって「教えた方が早い」となりがちです。
上達するまで多くの壁が存在しますが、トレーニングを丁寧に継続すれば、必ず上達します。
信頼関係が最も重要
コーチングスキルの中で、「傾聴」がもっとも重要といいました。
スキル以前に重要なのが「信頼関係」です。
セッションは、クライアントに本音を話してもらう必要があります。
信頼されていないコーチに対して、どんなに「傾聴」を駆使されてもクライアントは本音を話しません。
嫌われている上司が学んできたからといって、コーチングを実施しても部下は本音を話しません。
どんなに高額の応用のスキルを学んでも、信頼関係のない相手にはコーチング機能しません。
信頼関係のある相手であれば、基本だけで十分機能します。
基本を学びに行くと、まず信頼関係(ラポール)の大切さ、作り方から学ぶところがほとんどです。
もちろん信頼関係づくりが一番時間がかかります。
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コーチングを学んでみよう
副業としてコーチになりたい、部下のモチベーションを高めたい、自分自身の柔軟性を高めたいなど、さまざまな理由でコーチングを学びます。
コーチングに対する理解している人が広がるのが望ましいと感じます。
なぜなら、普及の壁がコーチングを知らない人である傾向を感じているからです。
せっかく学んでモチベーションが高まったとしても、上司が壁になれば、その効果が打ち消されます。
コーチングは経営者や管理職などの上位の役職者から習得をオススメします。
また、最初からコーチングに対する理解者が周りに多い方が良いので、グループで学ばれると良いでしょう。
弊社がおすすめする目的は、コミュニケーション能力強化です。
コーチングは、信頼関係構築が前提となります。
社員同士の信頼関係強化によって、組織力の強化が期待できます。
働きやすい職場環境づくりにも、ぜひ学んでください。