同一労働同一賃金、有給休暇取得の義務化などの働き方改革、新卒一括採用の廃止など、会社員の働く環境が大きく変化しています。
人手不足や人材の流動化の影響で、人材獲得競争の激しさは増加傾向です。
通年採用が一般的になると、さらに激しくなるでしょう。
会社は、業績を高めるために、組織が一丸にならないといけません。
ワンチームという言葉がよく使われるのは、そのためです。
多くの企業が、組織が一丸となるために、社員の「離職率の低下」「モチベーションアップ」などの、課題に取り組んでいます。
従業員のモチベーションアップが、最終的に会社の業績につながるとわかっているからです。
「やる気のない社員がいる」「社員の退職」などの原因で、生産性が落ち込むからです。
社員のモチベーションアップを目的に、社内表彰制度を新設しようと考えている会社も多いかもしれません。
すでに社内表彰制度が存在するという会社も多いと思います。
しかし、形骸化していて「社内表彰制度は、いらない」「意味が無い」といった意見も存在します。
社内表彰制度そのものは有効なものですが、組織風土次第で、意味の無い制度になります。
ギスギスした職場では、社内表彰制度の効果は小さいでしょう。
社内表彰制度の効果的を高めるには、質の良いコミュニケーションが活発な組織風土であることが大切です。
社内表彰制度の構築に、大切なポイントを説明します。
社内表彰制度でモチベーションが下がる?
社内表彰制度を設ける目的は、仕事のやりがいを刺激し、従業員満足度を向上し、モチベーションのアップさせることです。
従業員のエンゲージメント・帰属意識を高め、離職を防ぐことも目的としています。
頑張った社員を評価して、「働きがいを感じてもらおう」「次も頑張ってもらおう」を目的とした制度です。
では、社内表彰制度という仕組みさえあれば大丈夫なのでしょうか?
そうでは無いでしょう。
社内表彰制度が無くても、社員のモチベーションが高い会社も存在します。
ほかに、社員がやりがいを感じる仕組みが存在するなら、社内表彰制度は不要です。
モチベーションは、いらない?
そもそも「モチベーションは、いらない」と議論も聞こえてきます。
モチベーションの捉え方は、さまざまです。
人はやりたくない仕事に対して、「やる気を出せ」と言われてもやる気はでません。
逆にやりたいことは、「やめろ」と言われてもやろうとするでしょう。
「やりたい気持ち=モチベーション」と捉えることをオススメします。
内から湧いてくる「やりたい」状態。
社内表彰してあげるからといっても、やりたくない仕事にすすんで取り組む人は少ないでしょう。
社員のモチベーションを高めたいなら、社内表彰制度より先に、本人がやりがいを感じる仕事を与えるのが大切です。
社内表彰制度は、いらない?
社内表彰制度が整っている会社は、モチベーションが高いのでしょうか?
上場企業であれば、多くの会社で何かしらの表彰制度は存在していそうです。
では、上場企業の社員はみんなモチベーションが高いのでしょうか?
やりたくない仕事であれば、たとえ表彰制度があったとしてもやりたくないでしょう。
社内表彰制度が形骸化していて、モチベーションが上がらない職場も存在します。
そのような職場では、確かに必要ではないかもしれません。
一方、社内表彰制度をうまく活用している会社も存在はします。
上手に活用できている会社は、本人がやりがいが感じられるように仕事を与えているのでしょう。
社内表彰をもらった社員は、やりがいを感じ、次も頑張ろうと思います。
もらえなかった人も「次こそは」とやる気が引き出されます。
この効果は生むには、仕事の与え方から見直さなければなりません。
社内表彰制度より優先するべき課題でしょう。
社内表彰制度の現状と問題点
社内表彰制度が機能していないのであれば、社内表彰制度以外のところで問題を抱えている可能性が高いです。
社内表彰制度が形骸化
社内表彰制度が存在するが、効果を生んでいない場合。
そもそも形だけになっていて、何の目的で始まったか、誰もわからない状態です。
それでは何の効果も生まれません。
もらえた人は少しは嬉しいかもしれませんが、すぐに冷めます。
もらえなかった人が、欲しいと思わない表彰制度であれば、効果は無いでしょう。
社内表彰制度が不公平感を生む
社内表彰制度の問題点は、モチベーションよりも「不公平感」を感じさせる場合があります。
何をもって表彰されるのかが、明確でなければなりません。
「営業の人は、成果が見えやすいから表彰されやすい」
「品質保証部の人は、成果が見えにくいから表彰されにくい」
のようなケースがあります。
そもそも、表彰してもらえる見込みの無い方は、モチベーションは高まりません。
社内表彰を取った人は、会社側の期待が大きくのしかかり、逆にモチベーションを下げてしまうケースもあります。
社内表彰制度の上手な運用には、多くの工夫が必要です。
社内表彰制度に期待するメリット
社内表彰制度には様々な課題が存在しますが、社内表彰制度自体が不要なわけではありません。
効果的な運用方法さえ構築できたら、期待通りの効果を出すことはできるでしょう。
不公平感を生じさせるケースもある制度ですが、次のようなメリットも確かに存在します。
優秀な人材の囲い込み
社内表彰を受けられる社員は、優秀な方です。
優秀な社員の、やりがいの強化方法としては、良いでしょう。
優秀な人材のやりがいを強化し、帰属意識を高めるメリットがあります。
優秀な人材を囲い込む効果は、高まると考えられます。
しかし、優秀な人材は、さらに待遇の良い会社をもとめるかもしれません。
優秀な人材が流出し、優秀でない人材のモチベーションを低下させるだけの制度になったら問題です。
社内表彰制度があれば安心なわけではないので、注意が必要です。
継続的に表彰されたくなるような制度に設計する必要があるでしょう。
存在意義を感じてもらう
社員によっては、この会社に貢献できているのだろうか?
この会社にいて意味があるのだろうか?
などと感じている人がいます。
そのような社員が、社内表彰を受け取れると、自分自身の存在意義を感じられます。
モチベーションを高めるところまではいかないかもしれませんが、安心感を高められます。
帰属意識を高め、離職の抑制ができる可能性が高まります。
ただし、そのような社員にどのような名目で社内表彰するかは課題です。
勤続年数で表彰のケースもありますが、それまでの期間に、どのようにモチベーションを高めるかが課題です。
【コラム】部下のモチベーション低下の理由~退職の決意前に気づく~
社内表彰制度を改善
社内表彰制度の設計の仕方について、「絶対的な正解」はありません。
形骸化させないためにも、PDCAサイクルを回しながら、改善の繰り返しが大切です。
仕組みで工夫
市場が成長している部署と、市場が縮小している部署で、評価に差が現れると、市場が縮小している部署に配属されている人材は、モチベーションが低下します。
不公平感をなくすために、「評価の対象を、前年からの伸び率」などと、何かしらの工夫があると良いかもしれません。
しかし、そうすると、「最初に頑張りすぎると後が大変」と考えて、「今回は抑えよう」という意識が働くかもしれません。
設計は本当に複雑で、見直し続けることが大切でしょう。
個人戦にする場合、協力関係が生まれないかもしれない。
チームで評価しようとすると、依存する人材が現れるかもしれない。
どのような評価方法を取り入れたとしても、メリット・デメリットが現れます。
試行錯誤が必要です。
「絶対的な正解をもとめない」「定期的な修正が必要」が正解です。
一つのパラメーターでの評価ではなく「実績」「伸び率」「アイデアの数」「アイデアが出した効果」「チームの成果」「会社の成果」などを複合的に評価すると良いでしょう。
「どのようにやる気を出してほしいのか」
目的をもっての設計が必要です。
チームで協力関係を生んでほしいのであれば、「チームの成果とメンバーの貢献度で表彰する方法」も考えられます。
大切なことは、社員とコミュニケーションをとり、評価方法に納得しているかの確認です。
コミュニケーションを強化
ゲーム感覚で評価されるような仕組みを、取り入れている会社も存在します。
しかし、社員に納得していもらっていなければなりません。
逆に、コミュニケーションが活発で認め合う組織文化であれば、社内表彰制度は必要ないかもしれません。
近年、会社を辞める理由に「人間関係」が上位にきています。
「仕事の質が低い」「給料が低い」「評価してもらえない」も上位に来ています。
つまり、「自分の能力・仕事を認めてもらえない」のが原因です。
社内表彰制度があったとしても、「認めてもらえていない」と感じる社員の方が多いのです。
「能力を認めてくれないから、単純作業しかさせてくれない」
「仕事を認めてくれないから、給料が低い。評価されない」
社員側はそう感じています。
やりたくない仕事をさせられているのに、社内表彰制度が存在すると矛盾が発生します。
社員表彰制度があっても、もらえない人は「頑張ったのに認めてもらえなかった」となる恐れがあります。
このような矛盾は、コミュニケーションで、お互い納得するまで話し合うしかないです。
コミュニケーションを活発にし、認め合う組織文化を作れば、モチベーションは高まります。
【コラム】バーナード組織の3要素~共通目的・協働意欲・コミュニケーション~
認め合う組織風土をつくろう
働き方改革がはじまり、会社は生産性をアップさせなければならないようになりました。
各企業は、いかに生産性を上げるかの課題に取り組んでいます。
生産性を向上するには、社員一人ひとりのモチベーションアップが欠かせません。
モチベーションの低い社員がいると、モチベーションの高い社員の足を引っ張ることになります。
そのため、いかに社員のモチベーションを上げるかに関心が集まっています。
社内表彰制度も、社員のモチベーションアップにつなげるには有効です。
しかし、効果があるかどうかは、みんなが「欲しい!」と思うような制度である必要があります。
また、社内表彰をもらうために仕事をするのではありません。
「なんのために、制度を導入するのか」を踏まえての設計が大切です。
普段から、メンバー同士認め合い、協力し合える組織風土・組織文化になっていれば、社内表彰制度はいらないかもしれません。
社内表彰制度が無くても、ワンチームになれる組織であれば、生産性は大幅に上昇するでしょう。
尊敬する上司からの承認があれば、社内表彰よりもモチベーションアップ効果があるでしょう。
そのためには、リーダー含む社員のコミュニケーション能力の向上が欠かせません。
近年、大企業を中心に導入が進んでいる1on1ミーティングを取り入れるのも効果的です。
年に1回、もらえるかもらえないかわからない社内表彰よりも、年中、尊敬する上司からもらえる承認の方が、モチベーションアップ効果があると感じます。
まずは社内表彰制度よりも先に、社員のコミュニケーション能力を高めて、活気ある職場づくりを優先することをオススメします。
【コラム】報連相の目的と重要性~メリット・デメリット~