イノベーションジレンマ・魔の川・死の谷・ダーウィンの海
「イノベーションを起こしなさい」と指示されたら、何をしますか?
いつもより真剣に考えますか?
真剣に考えたらイノベーションって起こせるのでしょうか?
経営者はイノベーションという言葉をよく使います。
しかし、「イノベーションを起こせ」との指示だけでは、イノベーションが起こせません。
実際、日本国内では外国企業がイノベーション起こした商品、サービスの方が目立つようようになってきました。
スマートフォン、ドローン、YouTube、ネットフリックス、Facebook、Instagram、Tiktok、Uberなどなど。
日本の国際競争力は、低下していると指摘されています。
イノベーションを起こすには、イノベーションを阻害する壁の理解が大切です。
一般的には、魔の川、死の谷、ダーウィンの海、イノベーションジレンマなどが挙げられます。
しかし、根本的な原因は保守的な企業風土の影響が大きいです。
・GDP世界3位
・教育制度も整っている
・インターネットや書籍など情報も入手しやすい
お金も知識や経験もあるのに、イノベーションが起こせないのは何故なのか?
「イノベーションを阻む要因」「イノベーションを起こす方法」に大切な考え方について説明します。
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【目次】 |
イノベーションがもとめられる理由
企業は常にイノベーションがもとめられています。
その理由は、イノベーションが、企業の持続性に欠かせないからです。
イノベーションとは
イノベーションとは「技術革新」と訳されるケースが多いです。
ここでは「技術」に限らず、「物事に新しい価値観を起こす」とします。
イノベーションといっても、いくつか種類にわけられます。
改良程度のインクリメンタルイノベーション
これまでの概念をガラッと変えるラディカルイノベーション(破壊的イノベーション)
このコラムでは「イノベーション=ラディカルイノベーション」とします。
イノベーションの大切な要素は次の2つです。
・斬新である
・価値がある
斬新であっても、誰も必要としない発明は、イノベーションとしません。
企業間競争に勝つ
イノベーションの目的はさまざまですが、最終的な目的は「企業間競争に勝つ」です。
逆に言えば、イノベーションを起こせないと、競争に負ける可能性があります。
ブラウン管テレビから液晶テレビのイノベーションが起きたとき、ブラウン管用部品を作っていた会社は窮地においこまれたでしょう。
ガラケーからスマートフォンへのイノベーションが起きた後、日本の携帯電話の多くが撤退させられました。
日本が強い一眼レフカメラでさえも、スマートフォンにとってかわられようとしています。
今後は、「自動車のエンジンがモーターに変わる」「はんこが電子印鑑に変わる」などによっても競争環境が大きく変動するでしょう。
また海外から、新しいビジネスが入ってくる可能性があります。
他社に、先にイノベーションを起こされると、経営の安定性がなくなります。
経営者は、自社のイノベーションを促す必要があります。
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イノベーションを阻む壁
イノベーションは大切と知っていますが、日本のイノベーション力は低下しています。
一般的にイノベーションを阻む要因とされているキーワードを紹介します。
魔の川
魔の川とは、基礎研究から応用研究、製品開発への移行を阻む壁です。
基礎研究は、特に製品化を目的とせず行われるケースが多いです。
そのため、この研究結果が一体何の役に立つのか?となりかねません。
「ポストイットの粘着力の弱い接着剤」「フリクションの色の消えるインク」など
何の役に立つのか?と捉えられたままだと、魔の川を渡れなかったでしょう。
死の谷
死の谷とは、製品開発まで進んだ研究が、実際に生産して販売できる状態への移行を阻む壁です。
製品開発を進めていても、次のような問題により、事業展開を断念するケースがあります。
開発コストや生産コストが高くついた
耐久性の課題などの対応
スケジュールが遅れる(コストが増える)
発売後の失敗の方が損失が大きくなるので、早めの決断は大切です。
もっと言えば、商品企画の段階でもっと深くシミュレーションが大切です。
ダーウィンの海
ダーウィンの海とは、実際に販売した商品、サービスが、市場で認められてシェアを獲得し、事業として成立できるかを阻む壁です。
斬新な商品が、市場に受け入れられずに消えて行く事例も多く存在します。
VHSとベータ、ブルーレイとHD DVD、WindowsOSのスマートフォンなど
市場に受け入れてもらえなかった商品は消えていきます。
セグウェイも、注目度は高かったですが、生産中止となりました。
イノベーションジレンマ
イノベーションジレンマとは、顧客のニーズに応えることに追われているときの、「新しい技術への挑戦したいけどできない」というジレンマです。
トリニトロンという技術に強みをもっていたソニーは、液晶テレビの開発に出遅れました。
部品の多くが日本製であるのに、スマートフォンの開発に出遅れた日本企業も、イノベーションジレンマに陥っていたと考えられます。
イノベーションを左右する要因
「イノベーションを起こせ」
多くの企業で指示されていると思います。
しかし、指示している本人もイノベーションの起こし方を知らないケースがほとんどです。
イノベーションは、真剣に考えたら起こせると思っていたら間違いです。
頭の良さが必要なら、東大生の数だけイノベーションが起こっていても不思議ではないでしょう。
イノベーションを左右する要因について説明します。
多様性とテスト回数
イノベーションは、天才であれば数時間で良いアイデアが思いつくかもしれません。
天才でなければ、何時間考えても良いアイデアが出てこないかもしれません。
多くの会社は、「天才がいない」を前提で、イノベーションを起こす方法を考えなければなりません。
イノベーションを起こす方法として、大切なキーワードが「多様性」と「テスト回数」です。
一人で何時間考えても思いつかないアイデアを、他人は思いつきます。
多様な人材を集めれば集めるほど、お互い補完し合ってアイデアが広がるのです。
また、アイデアがうまくいくかどうかは、試してみないとわかりません。
イノベーションはこれまでにない斬新な発明です。
これまでに経験の無い物事は、失敗がつきものです。
だから、「失敗前提で、何度もアイデアをテストする」が、イノベーションを起こすには大切です。
ネガティブな言葉
イノベーションを阻む要因として、魔の川、死の谷、ダーウィンの海、イノベーションのジレンマを紹介しました。
しかし、もっとも大きな壁は、ネガティブな言葉です。
・そんな暇がない
・目の前に集中しなさい
・難しいでしょ
・だれがやるんだ?
・だれが責任取るんだ?
・失敗したらどうする?
ネガティブな言葉が、イノベーションをつぶします。
そして多くの場合、上司や先輩が、この言葉を発します。
失敗したとき、責任をとらなければならない人達です。
だから、イノベーションを起こす人がいなくなります。
バブル崩壊以降、日本は失敗を恐れる風土になったと指摘されています。
もちろん失敗したら、会社にダメージが与えられてしまいます。
かといって、競合企業がイノベーションを先に起こすと、会社にダメージが与えられてしまいます。
同じダメージを受けるなら、どちらが良いか?
選ぶ必要があります。
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イノベーションを起こす企業風土に変えよう
企業間競争に勝つために、イノベーションがもとめられています。
イノベーションを起こすには、何が必要でしょうか?
イノベーションを起こすには、お金や知識や経験が必要と考えられがちです。
頭が良い人がイノベーションを起こすのだと思われがちです。
しかし、知識や経験のあるアパレルメーカーや家電メーカーが倒産することがあります。
逆に、お金や知識や経験のない学生が起業して、大企業にまで成長させることがあります。
Facebookは典型的な例でしょう。
現実的には、イノベーションに知識や経験よりも重要な要素が存在すると分かります。
それは、情熱やモチベーションです。
そして、それらを高める企業風土です。
ネガティブな言葉ばかり飛び交う企業風土では、イノベーションを起こすことは難しいでしょう。
イノベーションを起こしたいなら、意欲に燃えたベンチャー企業のような企業風土をつくりましょう。