中小企業の人材育成の課題と対策~組織の高齢化を防ぐ~
人材育成は中小企業にとって大きな課題です。
若手人材の育成に失敗すると、組織の高齢化が進みます。
組織の高齢化が進むと若手人材の採用が難しくなる悪循環が生まれます。
中小企業は人材育成能力の強化がもとめられます。
人材育成能力は、直接的な「教え方」と感じるかもしれません。
しかし、人材育成の環境ができていないと、「教え方」を強化しても機能しないかもしれません。
中小企業の人材育成の課題と対策について説明します。
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【目次】 |
中小企業の人材育成強化
「中小企業には良い人材が来ない」「採用してもすぐ辞めてしまう」と不満を耳にします。
確かにそうかもしれません。
何も改善しないのであれば、問題が大きくなり取り返しのつかない状況になるかもしれません。
中小企業が人材育成の強化をもとめられる理由について説明します。
業績アップと人材の成長
・人材の時間当たりの作業スピードの早さがコストに影響する
・商品開発、販路開拓などを考えるのも人材
・コストダウンの方法を考えるのも人材
以上のように人材の能力によって売上アップもコストダウンも左右されます。
そして、企業は常に競争にさらされています。
競合他社の方が良い人材がそろっている場合、自社の業績に与える影響は大きくなります。
逆に自社が良い人材を確保できれば、有利に経営できます。業績をアップするなら人材の成長が欠かせません。
優秀な人材を採用
求職者は、基本的に賃金や福利厚生に重点を置いて就職先を探します。
優秀な人材ほど、規模の大きい会社に行く傾向です。
人件費など経営資源の少ない中小企業は、期待するレベルの人材の採用が難しいです。
中小企業は社内で優秀な人材を生み出す仕組みがもとめられます。
優秀な人材を育てるノウハウができたら、それが競争優位性の一つになります。
組織の高齢化
国内の少子高齢化の流れに沿って、組織が高齢化する中小企業が増えているように感じます。
組織の高齢化が進むほど、次のような悪影響が発生します。
・人件費が高止まりする
・高齢化により将来性が不安視される
・資金調達のハードルが高くなる
・若い人材がいない会社を若い人材が避ける
・高齢化により市場の新しい考え方とのギャップが生まれる
もちろん、アグレッシブで挑戦的な高齢者が多いのも事実です。
そのような会社であれば大丈夫かもしれませんが、もし上記のような症状が見られたら対策が必要かもしれません。
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中小企業が抱える人材育成の課題
中小企業の経営者も人材育成の大切さは把握しています。
しかし、思うように人材育成ができていない会社も多いようです。
それは、次のような課題が存在するからです。
人材育成の時間
中小企業によっては次のような課題があります。
・生産性が低く、有休が取得しにくい
・さらに人手不足で、仕事に追われている状況になっている
生産性が低いと、人材育成の時間を確保できません。人材育成が進まないので、人材の生産性は高まりません。
人材育成が非効率⇒生産性が低迷⇒人材育成の時間が確保できない⇒人材育成が非効率⇒・・・
悪循環に陥ると、生産性の低い状態が常態化します。
指導者の能力に左右
中小企業では、先輩が後輩を指導するOJTがメインで行われます。
後輩が育つかどうかは先輩の指導力によって左右されます。
そして、後輩のタイプも時代によって変わります。
先輩が指導してもらった方法が、後輩に通用するかわかりません。
「見て覚えろ」という指導方法は昔はよかったかもしれませんが、近年は「教えてくれない」と後輩の不満につながります。
後輩のモチベーションを低下させる指導者は、人材育成能力が低くなりがちです。
育てても退職される
中小企業の場合、定着率の問題もあります。
せっかく人材育成を行っていても、退職されてしまうと採用にかかったコスト、育成にかかったコストが無駄になります。
本来だったら得られる利益も失われ、機会損失も発生します。
これが何回も発生するようになると、会社へのダメージは大きいです。
また、若手社員を育てても辞めるが繰り返されると、会社の高齢化が進みます。人材育成に力を入れる前に、定着率を高める取り組みが必要です。
人材育成の改善方法
中小企業の人材育成を改善する方法について説明します。
もちろんOJTのやり方などの工夫が必要ですが、ここでは人材育成のやり方以前の課題に対処します。
人材育成しても辞められてしまう状況を防ぐのが中小企業には重要です。人材育成の効果を高めるのに、社員のモチベーションに着目がもとめられます。
育成の時間をつくる
会社を退職する理由の一つとして、「成長を感じられないから」があります。
「会社が人材育成に力を入れてくれている」と社員が感じられるようにする工夫が必要です。
「時間がないから人材育成できない⇒社員が退職する」の流れを防がなければなりません。
社内教育の時間の確保がもとめられます。育成の時間を確保するには生産性の改善がもとめられます。
OJTは先輩の仕事、OFF-JTでは教わる人の仕事を止める必要があるからです。
人材育成の時間を確保しつつ、業績低下を防ぐには、生産性改善が必要です。
指導者のコミュニケーション能力
特に指導者はコミュニケーション能力が必要です。
本人は教えているつもりでも、後輩に伝わっていないのであれば人材育成の効果は無いからです。
「見て覚えろ」では伝わらないかもしれません。
指導者は、後輩のタイプに合わせて「教え方」コミュニケーションを柔軟に変えなければなりません。
指導が伝わらない場合、「教えてくれない⇒成長できない⇒退職する」の流れが生まれる可能性が高まります。
社員が退職する理由の上位に、「職場の人間関係」があります。
指導者のコミュニケーション能力強化して、後輩のモチベーションアップが大切です。
会社の将来性の明確化
せっかく育成した人材に退職されないようにしないと、会社全体のパフォーマンスは向上しません。
社員が退職する理由の上位に「将来性を感じないから」があります。
「この会社は将来成長しないな」と感じたら、より成長が期待できる会社に転職されてしまうかもしれません。
「成長しない会社=給料が上がらない会社」だからです。
また、「先輩の姿を見たら、自分の将来像が見える」との話も耳にします。
社員が「この会社で働き続けたい」と思ってもらえるようにしなければなりません。
中小企業の場合、現状にいろいろ課題があるのは仕方が無いです。
しかし、将来は「こんな会社になる」と、期待を社員に持ってもらう必要があります。
人材の若返りを図ろう
企業によっては「自社の指導方法に合わない人材はいらない」というこだわりがあるかもしれません。
良い考えかもしれませんが、人材が豊富に存在する場合が前提です。
日本は労働生産人口が減少傾向なので、今後、期待する人材が少なくってなってくる可能性がますます高くなります。
多様な価値観をもった人材を育成できる能力が会社にもとめられます。人材育成能力を強化して人材の若返りを図りましょう。