傾聴力・質問力とは~トレーニングとコーチング・コミュニケーション
「傾聴力が大切」と、よく耳にします。
では、傾聴力を高める方法は?
傾聴を辞書で調べると「耳を傾けて集中して聴くこと」と書かれています。
それでは、傾聴力とは、耳を傾ける力?
そうではないでしょう。
聴き上手になる力と捉えることが大切です。
「質問力を高めよう」とも、よく耳にします。
では、質問力を高める方法は?
オープンクエスチョン、クローズドクエスチョンなどは習ったことがあるかもしれません。
しかし、質問力も奥が深いです。
そして、相手を問い詰める、尋問になるケースがよく見られます。
「自分が知りたいことを訊きだそう」「自分の意見を納得させよう」など、相手をコントロールしようとする意識が働くからです。
質問すれば良いというものではありません。
質問力の使い方を間違えると、傾聴力を打ち消します。
「相手を質問攻めにする聴き上手」は、存在しません。
質問力は、「誰のために質問をするのか?」で、大きく質が変わります。
会社が社員にもとめるスキルとして、コミュニケーションが上位にあげられています。
傾聴力、質問力は、コミュニケーション能力を強化するための重要な要素です。
問題は「トレーニング方法がわからない」です。
スピーチやプレゼンテーション、面接練習など話す力はトレーニングします。
しかし、傾聴や質問の鍛え方を知っている方は、少ないです。
傾聴力や質問力含めて、コミュニケーションの強化について説明します。
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【目次】 |
コミュニケーション能力とは
コミュニケーションとは、何でしょう?
会話(カンバセーション)との違いは?
改めて尋ねられると、答えに困るかもしれません。
コミュニケーションは、通信です。
送信と受信が存在して、初めて成立します。
コミュニケーション能力は、「話す力」と「聴く力」にわけられます。
話す力
コミュニケーション能力を高めるというと、多くの人が「話す力」を磨きます。
スピーチ、面接練習、プレゼンテーション、営業、交渉術など、相手にどう伝えるかを磨こうとします。
もちろん、自分の考えを相手に伝えるのは大切です。
しかし、コミュニケーションの相手も「話す力」ばかりに意識がいっていたらどうなるでしょう?
お互いの主張がぶつかり口論になる、もしくは勝ち負けが発生します。
「話す力」ばかりに偏ると、問題が生じます。
だからこそ「聴く力」が重要となるのです。
聴く力
「聴く力」を強化するのに、どのようなトレーニングをしますか?
多くの方が「???」となります。
耳を澄ます練習はしないでしょう。
スピーチ練習など話すトレーニングに対し、聴くトレーニングは、ほとんどの方が経験がありません。
そして傾聴力とは、「黙って耳を傾けて聴く」とされるケースが多いです。
「ちゃんと聴きなさい」「聴いてるの?」と注意されるからです。
それでは聴く力を、高いか低いか測定できません。
コーチング・コミュニケーションでは「聴く力は、相手が本音で話した量」で決まるとします。
聴き上手になる力です。
高ければ高いほど、相手は気持ちよくたくさん話してくれます。
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聴く力を構成するスキル
聴く力について、後述するコーチングスキルの考え方で説明します。
聴く力は、「傾聴力」「質問力」「フィードバック力」で構成されます。
この3つを駆使して、相手に本音でたくさん話をしてもらいます。
傾聴力
傾聴力とは、耳を澄ます力ではありません。
耳を傾けるスキルでもありません。
また、聴力とは別物です。
傾聴力は、「相手が本音でたくさん話せる環境を作る力」です。
傾聴力が低い人ほど、相手は本音で話さなくなります。
傾聴力が低い人ほど、報連相してもらえません。
傾聴力が低い人がいると、誰も発言しない会議になります。
つまり、傾聴力がなければ、一方通行の情報伝達になります。
双方向のコミュニケーションが成立しなくなります。
コミュニケーションにおいて、最も大切なスキルです。
質問力
質問力は、「相手から情報を引き出す、相手の視野を広げる力」です。
傾聴力が無い状況では、効果が発揮できません。
質問しても、相手は答えてくれません。
もしくは質問攻め、尋問、圧迫面接のようになります。
相手は委縮して、怒られないように本音を隠します。
質問は、相手の視点をコントロールする目的があります。
自分のための質問は、質問攻めになりやすいです。
相手のための質問を心掛けるのが大切です。
フィードバック力
コーチング・コミュニケーションのフィードバックは、相手に感じたことを、鏡のように相手に伝えるて気づきを引き出します。
フィードバック力は、観察力や直感力が必要になります。
評価面談などで使われるフィードバックと異なる点は、「評価を含まない」です。
感じたことをそのまま伝え、評価は相手自身に委ねます。
フィードバックも相手にたくさん話してもらうためのスキルですが、本コラムではここまでにしておきます。
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傾聴力のトレーニング方法
傾聴力のトレーニング方法を伝える前に、大前提の確認が必要です。
どんなスキルも上達するには、それなりにトレーニング量が必要です。
「傾聴」は、簡単にできる感じがするのです。
日本語なので、できていなくても、相手の言ってることは理解できた気分になります。
内容も「うなずき」「オウム返し」など、いつもやっていることに感じるので、簡単にできた気分になります。
そして、トレーニングを行わないから、本当の意味での傾聴はできるようになりません。
「傾聴」は、ものすごく奥が深いです。
カウンセラーもコーチも長時間のトレーニングを行っているのです。
傾聴が大事と言われながら、どうしてできる人が少ないのか?
それは、トレーニングをしていないからです。
傾聴力と信頼関係
傾聴力を発揮する前提として、信頼関係が最も重要です。
信頼関係が無い相手に、発揮できません。
傾聴で、最も難しいのが、信頼関係づくりです。
今まで嫌われていた上司が、部下と信頼関係をつくるのにどれぐらいかかるでしょうか?
おそらく簡単にはいかないでしょう。
信頼関係ができるまで、相手は本音を話しません。
どんなに「あいづち」や「笑顔」など小手先では、信頼してもらえません。
信頼してもらえるまで努力するか、相手を悪者にして挫折するか、傾聴力を高められるかの分かれ道になります。
多くの方が挫折するから、コミュニケーションはいつまでも改善しないのでしょう。
まず信頼関係づくりが大切です。
信頼関係をつくる過程も、傾聴が大切です。
話を聴かない相手を、信頼しようとは思わないからです。
基本型から始める傾聴
信頼関係が無いと傾聴力を発揮できませんが、信頼関係づくりには傾聴が大切です。
まずは基本の型から始めます。
考え方はシンプル、「こんな話し相手は嫌だ」の逆を意識します。
【こんな話し相手は嫌だ】
・無表情
・反応が無い
・目を合わせない
・スマホなどを見ながら
・話をさえぎる
・興味なさそう
・すぐ否定批判する
・すぐ怒る
・約束を破る
・秘密を守らない
・情報を横取りする
など、これらの逆から始めます。
【基本の型】
・目を合わせる
・あいづち、うなずき(反応する)
・認める(否定、批判しない)
・リフレイン、オウム返し(反応する)
・ペース、テンションを合わせる(ノリ)
・それで、それで(話を促す)
・沈黙(相手の話を遮らない)
などです。
これらを意識して、トレーニングします。
上位の役職者ほど、教えたい気持ちが強すぎて、沈黙ができない傾向がみられます。
話すと相手は黙ります。
「話す力」は、相手を黙らせる力になります。
聴くときは、「相手の話を遮らない(沈黙)」が大切です。
トレーニング方法の注意点
傾聴のトレーニングは繰り返しになりますが、長時間のトレーニングが必要です。
理由は様々な心理学の分野の知識が必要なので、ここでは省略します。
その他、傾聴のトレーニング方法として、よく紹介されている「ミラーリング」と「言い換え」について注意点を説明しておきます。
◆ミラーリングの注意点
ミラーリングとは、「相手がお茶を飲んだら、自分もお茶を飲む」ように、動作を鏡のように合わせる手法です。
人は共通点があると、親近感がわきやすいとされているからです。
傾聴の効果的な方法として紹介されるケースが多いです。
しかし、ミラーリングしているとバレたら逆効果です。
◆言い換えの注意点
相手が発言した言葉を、別の言葉に言い換えて確認するという方法もあります。
お互いの言葉に誤解が無いか確認する方法としては有効です。
しかし何事もやりすぎは信頼関係を壊します。
いちいち訂正されている気分になる恐れがあります。
質問力のトレーニング方法
質問力は、傾聴力があって、初めて機能します。
トレーニングは、傾聴力を優先してください。
コミュニケーションが難しいのは、人や話題が異なれば、すべて答えが異なるという点です。
コミュニケーションには、正解が無いともいいます。
たとえば、質問のスキルについて。
ある人では効果のあった質問が、他の人に効果があるかはわかりません。
相手に合わせて柔軟に質問を変える能力が必要です。
そして、相手に合わせるために必要な能力が、傾聴力です。
2つのタイプの質問を意識する
質問の目的は大きく分けて2つです。
「自分のため」か、「相手のため」です。
通常質問は、自分が知りたい事柄を質問します。
・仕事は何?
・頼んでた仕事の進捗は?
などです。
コーチングでの質問は、相手のためを意識します。
・今後のキャリアプランはどう考えている?
・この企画の根拠は?
など。
自分のために見えるかもしれませんが、相手の思考の整理や盲点に気づくのを促しています。
発散と収束を意識する
質問の目的は、視野をひろげるです。
それは、見えていなかった部分の見える化です。
そのためには、発散と収束を繰り返します。
発散は、オープンクエスチョンで話を広げます。
オープンクエスチョンとは、「はい。いいえ」で応えられない質問です。
逆に「はい。いいえ」で応えられる質問をクローズドクエスチョンといいます。
収束はチャンクダウンと呼ばれる方法を使います。
「具体的には?」という質問です。
さらに言えば「5W1H」で質問します。
注意点として、コーチング・コミュニケーションでは、「Why+過去形」は避けるのをオススメします。
「なんで、そんな失敗したんだ?」などは責めている感じがあるからです。
責められている感じがしたら、尋問になっていきます。
相手は委縮し、話さなくなります。
【コラム】チームワークの一体感を醸成するコミュニケーション方法
コーチング・コミュニケーションをオススメする理由
傾聴力、質問力の強化方法として、コーチング・コミュニケーションの学習が最適です。
なぜなら、傾聴力も質問力も、ここでは説明しきれないぐらい奥が深いからです。
上述したように「傾聴力の強化方法は?」と質問に答えられないケースが多いです。
弊社では傾聴力、質問力の強化方法として、カリキュラムが確立しているコーチング・コミュニケーションのトレーニングをオススメしています。
聴く力に特化したコミュニケーションスキル
コーチング・コミュニケーションとは、聴く力に特化したコミュニケーションスキルです。
コーチングとは、相手の話を聴くに集中して、相手の気づきと行動を引き出し、目標達成をサポートするスキルです。
コーチングを学ぶことにより、聴く力の強化方法につながります。
コーチングスキルのトレーニングにより、「傾聴力」「質問力」「フィードバック力」が強化されます。
それぞれのスキルは、何度も何度も練習によって強化ができます。
コーチングセミナーの注意点
コーチング系のセミナーも多種多様です。
コーチングセミナーも、1日だけの単発のものから、1年ぐらいかけて学ぶものもあります。
大切なのは、繰り返しになりますが、トレーニング量です。
そして、トレーニングの結果に対するフィードバックが無いと改善されないため、自己流に走った間違った方法での強化になるかもしれません。
コーチングを学ぶなら、「トレーニングとフィードバック環境のある研修やセミナーから選ぶ」をオススメします。
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コーチング・コミュニケーション研修セミナーを活用しよう
コミュニケーション能力の強化は、さまざまなシーンで望まれています。
しかし、多くの方がコミュニケーション能力の強化というと「話す力」ばかり強化しようとします。
コミュニケーションとは、「いかに相手に上手に伝えるか」と考えているからです。
コミュニケーションが上手くいかないのは、伝え方が悪いのでは?と考えてしまうからです。
「話す力」は、相手に理解できるように伝える力ではあります。
しかし、相手を黙らせる力でもあります。
相手を説得し、黙らせて、自分の意見を飲ませることを「話す力」と勘違いします。
「話す力」を強化すればするほど、相手をコントロールしようとする力が強くなります。
逆の立場になれば、わかりますが、人はいいようにコントロールされたくありません。
だから、「話す力」ばかり強化すると、人間関係が悪化する可能性があります。
無理やり仕事をするように論破してくる上司は、好きになれないでしょう。
人は、コントロールされたくありません。
自分のことを理解してほしいと思っています。
相手のことを理解しようとする力が「聴く力」です。
コミュニケーションを改善するには聴く力の強化が求められます。
「聴く力」を分解すると、傾聴力、質問力にわかれます。
傾聴力と質問力の強化がもとめられますが、特に重要なのが傾聴力です。
傾聴力のない質問は、ただの質問攻め、尋問になります。
傾聴力、質問力について、説明してきました。
しかし、どちらも、文章では説明しきれないぐらい奥が深いスキルです。
そして、どちらもトレーニングが必要です。
弊社では、傾聴力、質問力強化につながるコーチング・コミュニケーション研修セミナーを実施しています。
ぜひご活用ください。