ゼブラ企業VSユニコーン企業~期待されるベンチャー企業~
近年、急成長を重視するユニコーン企業に対して、ゼブラ企業が注目されています。
行き過ぎた資本主義によって生じた歪みの調整役として期待されています。
日本のゼブラ企業の例を調べても、あまり事例がみつかりません。
まだ新しい概念だからかもしれませんが、ゼブラ企業として成長発展するのは難しいようです。
ユニコーン企業と比較しながらゼブラ企業について説明します。
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【目次】 |
ゼブラ企業とユニコーン企業
ゼブラ企業とユニコーン企業について、まずは定義について説明します。
ユニコーン企業は、条件が定義されていますが、ゼブラ企業はあいまいです。
ゼブラ企業とは
ゼブラ企業とは、Wikipediaに次のように説明されています。
急激な成長や市場の独占などを特徴とするユニコーン企業とは対照的な成長を目指す。ゼブラ企業は持続可能性や共存性を重要な価値とする。「ゼブラ」(シマウマ)の呼称は、企業利益と社会貢献という相反する課題の両立を目標とする点に由来する。
(出典:Wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/ゼブラ企業)
急成長を重視するユニコーン企業とは対照的に、成長はゆっくりで良いから、社会との協調を重視しているのが特徴です。
近年、SDGsが注目されています。
課題解決型のビジネスがもとめられています。
さまざまな課題を解決するゼブラ企業が、成長発展してくれる。
社会にとって理想的な企業として注目されています。
ユニコーン企業とは
ユニコーン企業とは、Wikipediaに次のように説明されています。
ユニコーン企業(ユニコーンきぎょう)は、評価額が10億ドル以上の未上場のスタートアップ企業。「創業10年以内」「評価額10億ドル以上」「未上場」「テクノロジー企業」といった4つの条件を兼ね備えた企業を指す。上場を果たすなどして、この4条件から外れればユニコーン企業ではなくなる。誕生するユニコーン企業と退場するユニコーン企業によって、その総数は絶えず増減し変動している。
(出典:Wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/ユニコーン企業_(ファイナンス))
定義があいまいなゼブラ企業に比べて、ユニコーン企業は定義が数字で表されています。
シンプルに表現すると、急成長が期待され、実績も伴っている上場前のベンチャー企業です。
勝ち組企業として、イメージしやすいです。
ユニコーン企業も、ニーズに応えることによって急成長します。
ただし、社会全体のニーズよりも、個人や法人のニーズを重視しているのが特徴です。
企業間競争に勝つことを主に置いています。
市場の新陳代謝を促し、イノベーションを誘発する貴重な存在です。
しかし、一旦競争に勝って、支配的地位を手に入れると、新規参入を阻止しようとするので、イノベーションを停滞させます。
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日本はユニコーン企業が少ない
日本はユニコーン企業が少ないと指摘されています。
2020年時点で、アメリカが約150社、中国が約80社に比べて、日本は約5社程度しかありません。
日本企業の競争力の弱さを表しているように感じます。
少ない理由
ユニコーン企業が少ない理由は、ベンチャーを支援する制度が整っていないからと指摘されています。
日本は、ゾンビ企業を国が補助金などで守られているので、倒産や廃業が少ないです。
新陳代謝が働きにくいとも言われています。
廃業が多い国ほど、起業も多い傾向にあるからです。
スガノミクスにより中小企業再編というキーワードが広がっています。
今後は企業の統廃合が進み、新陳代謝が誘発されるかもしれません。
また、バブル崩壊後以降の保守的な体質が、イノベーションを起こせなくなった理由とも指摘されます。
新しい事業にチャレンジする力が弱いとされています。
新型コロナの影響によって、オンライン診療やオンライン教育、FAXやはんこの廃止など、日本政府自体のデジタル化も全然進んでいない実態が明らかになりました。
変化に対して保守的な体質も、イノベーションを起こしにくくしています。
ユニコーン企業を目指すには
ユニコーン企業になるには、タイムリミットがあるので簡単ではありません。
日本は顧客側も保守的であるので、心理的壁を壊し、一気にシェアを獲得しなければなりません。
ユニコーン企業を目指すのに必要なポイントは次の通りです。
・インキュベーション施設など、スタートアップのハードルを下げる優秀なサービス、パートナーをみつける
・ネットワーク外部性を活用し、ユーザーが増えれば増えるほど利便性が増すような仕組みを作る
・新技術に心理的抵抗が少ない若い人達に一気に普及させる
・投資家に「絶対に投資しないと損」と確信させるようなビジョンと、達成できる証拠を見せる
特にベンチャー企業は、しばらく赤字が継続します。
アマゾンやテスラのように、赤字であっても、資金調達力が継続できる状況を生み出さなければなりません。
そのため、売上高の急成長は欠かせません。
ゼブラ企業が注目されている
近年、成長を優先するユニコーン企業よりも、社会の持続可能性への貢献を重視したゼブラ企業への注目度が高まっています。
NPO(特定非営利活動法人)に目的は似ていますが、営利か非営利か、持続的成長を目指すのか目指さないのかの違いがあります。
注目される理由
ゼブラ企業が注目される理由は、行き過ぎた資本主義による歪みが無視できないぐらい大きくなってきたからでしょう。
都心と地方、正規と非正規、男性と女性、さまざまな格差の問題が大きくなっています。
過度な成長を優先すると、勝ち組と負け組が発生します。
その結果、貧富の格差を拡大させる。
環境が破壊される。
さまざまな問題が生じます。
本来は国が政策によって改善するべきなのでしょうが、国の借金は膨大に膨らんでおり期待できません。
ビジネスとして、税金に依存せず、利益を出しながら社会問題を解決する企業が望まれているのです。
ゼブラ企業を目指すには
ゼブラ企業を目指すのはユニコーン企業よりも難しいです。
社会的課題の解決にお金を支払う顧客が少ないからです。
例えば、貧困による教育格差の問題解決にお金を払ってくれるのは誰でしょう?
貧困者が抱える問題を解決するのに、貧困者からお金をとるのは難しいです。
例えば、海洋プラスチックごみの問題解決にお金を払ってくれるのは誰でしょう?
おそらく国が解決しなければならない問題だと考えるでしょう。
結局は税金です。
税金に頼らず、社会的課題を解決して、さらに成長するビジネスモデルは難しいです。
都市鉱山のリサイクル事業、リユース事業などのようなビジネスモデルがもとめられます。
しかし、地方の高齢化の問題などの解決は、一企業では難しいです。
地方の自治体と協調してのビジネスや、CO2排出権のように大企業の企業価値拡大を支援するビジネスモデルがもとめられます。
小さな成功モデルを確立し、国に働きかけていくなどが考えられるでしょう。
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ベンチャー企業が増えるような土壌を
ユニコーン企業やゼブラ企業に関わらず、日本は起業が増える土壌が整っていません。
アメリカのようにエンジェルが多いわけでもなく、1回失敗したら信用を失って資金調達が難しくなるなど、起業家には厳しい環境となっています。
起業は90%は失敗すると言われています。
成功するベンチャー企業を増やしたければ、増やしたいベンチャー企業数の10倍の数の起業が行われるように促す仕組みが必要です。
大企業が整えてくれると良いと考えています。
社内ベンチャーも良いですが、できれば社外ベンチャーを支援してほしいです。
社内ベンチャーで有名になった事例をあまり耳にしないからです。
いち早く成長するベンチャーを発掘する目を養ってほしいと願います。
新しいベンチャーを発掘するインキュベーション機能をもった大企業だけが成長できる時代が来るかもしれません。