コミュニケーション能力の評価基準と目標設定方法

経団連の新卒にもとめるスキルのアンケート結果で、「コミュニケーション能力」が、20年近く1位を継続しています。

 

コミュニケーション能力

(出典:2018年度 新卒採用に関するアンケート調査結果 (keidanren.or.jp):https://www.keidanren.or.jp/policy/2018/110.pdf)

 

逆に言えば、20年たっても、コミュニケーションの問題に悩み続けている様子がみてとれます。

 

 

コミュニケーション能力がもとめられる理由は、どんなに他のスキルが高くても、コミュニケーション能力が無ければ仕事が進まないからです。

 

指示命令を理解できない」「問題があっても報連相しない」などがあれば、仕事の進みが遅くなります。

 

 

5GやAI、グループウェアなど、IT技術の発展により、コミュニケーション量は増加したと感じるかもしれません。

 

問題は、コミュニケーションの量より「質」です。

 

電子機器同士の通信速度は上昇を続けていますが、人同士の通信速度がボトルネックとなっています。

 

 

 

経団連のアンケート結果を見ると、インターネットが普及しはじめた2000年以降に、コミュニケーションの問題が大きくなっています

 

処理しなければならない情報量が急増したことにより、処理しきれず、ミスコミュニケーションが増加したと考えられます。

 

そのため、情報量の増加に対応するためにコミュニケーション能力の強化がもとめられているのです。

 

 

 

ところで、プログラミングなどのスキルは、やればやるほどスキルが上達します。

 

しかし、コミュニケーション能力は、経験年数(年齢)と能力の高さは相関しません

一生使うスキルですが、なかなか上達しない不思議なスキルです。

ベテラン上司のパワハラやセクハラ、働かないおじさんなども問題になっています。

 

 

コミュニケーションが難しい理由は、人間人間の答えのない世界で活用されるスキルだからです。

褒めるのが正解なのか、叱るのが正解なのか、相手によって変化します。

 

だからこそ、コミュニケーション能力の強化がもとめられます。

 

 

 

そこで課題となるのが「自分のコミュニケーション能力が、どれぐらいなのか?」の評価です。

 

現状の評価をできないと、課題も見つけられないからです。

 

 

コミュニケーション能力強化の目標設定と、評価方法について説明します。

 

 

 

【コラム】職場のコミュニケーション改善方法~発言しやすい環境づくり~

 

 

【目次】

 

コミュニケーション能力の強化がもとめられる理由

コーチング・コミュニケーション研修セミナー

企業が社員にもとめるスキルとして、コミュニケーション能力が常に上位に挙げられます。

 

報連相の有無活発な意見交換の有無によって、会社の生産性が大きく影響をうけることを、体感的に理解しているからです。

 

 

 

 

 

 

会社の生産性を改善

社員のコミュニケーション能力のレベルによって、会社の生産性が大きく左右されます。

 

社員が問題にぶつかったとしても、報連相が行われなければ対応が遅れます

最悪、問題が隠蔽される恐れもあります。

 

また、会議においても、参加者の発言が無いのであれば、議論が行われず、創造性が抑制されます

 

 

 

職場のコミュニケーション不足に対する注意点は、部下のコミュニケーション能力の低さを指摘されがちです。

 

しかし、上司に問題がある可能性も忘れてはいけません。

 

 

内向的な性格、話すのが苦手な部下は、確かに存在します。

一方、否定批判を繰り返す、威圧的な態度で、部下に話しをさせない上司も存在します。

 

 

 

企業の不祥事の隠ぺいなどは、発言しにくい会社の組織風土の中で発生しがちです。

 

 

 

 

 

 

 

社員の退職や休職を減らす

会社の生産性を低下させる要因として、社員の退職や休職の発生があります。

 

社員の退職や休職が発生する理由にも、コミュニケーション能力が大きくかかわっています。

 

 

もし社員の退職や休職が発生すると、残されたメンバーにしわ寄せが生じます。

 

場合によっては、手が回らなくなり、生産性が落ち込むでしょう。

 

 

また、同じレベルの人材を補完するために、コストと時間を要します。

退職や休職した社員の教育に費やした、コストと時間も無駄になります。

 

 

 

退職や休職の大きな理由になっているのが、職場のストレス要因です。

そして、職場のストレス要因として上位に挙げられるのが「職場の人間関係」です。

 

 

職場の人間関係」を悪化させる要因が、以下のようなコミュニケーションの問題です。

 

・パワハラ、セクハラ

・否定、批判

・無視、評価しない

・威圧的な態度

 

これらが発生するとコミュニケーションの質が悪化し、人間関係が悪化します。

 

人間関係の悪化によるストレスの増加によって、社員が退職、休職に追い込まれます。

 

コミュニケーションの問題は、最終的に、会社の生産性を低下させます。

 

 

 

チームの成果は、上司の責任です。

チームの成果を高めるために、上司は、部下とのコミュニケーションの質を改善しなければなりません。

 

 

 

 

【コラム】コーチング、ティーチング、カウンセリング、セラピーの違いとは

 

 

 

コミュニケーション能力の基準とは?

コーチング・コミュニケーション研修

社員のコミュニケーション能力の強化を課題としている企業は多いです。

コミュニケーションの企業研修が多いことからもわかります。

 

 

コミュニケーション能力を評価基準に加えたいと考えますが、評価基準の決め方がわからないというところが多いです

 

実際、コミュニケーション能力は複雑で、細かく評価することは難しいでしょう。

 

評価基準の決定が、むずかしい理由を説明します。

 

 

 

 

 

 

「話す力」と「聴く力」

評価に大切なポイントは、コミュニケーション能力を構成するスキルを分解することです。

しかし、分解も困難です。

 

まず最初に、「話す力」と「聴く力」に分解されます。

 

「話す力」と「聴く力」のそれぞれ、レベルを分けると次のような例を考えられます。

 

 

 

〇話す力

レベル1:たどたどしく話す

レベル2:流ちょうに話す

レベル3:相手が理解しやすいように話す

レベル4:相手に心に響かせる(感動)

 

 

 

〇聴く力

レベル1:相手の話が聞こえている

レベル2:相手の話している言葉がわかる

レベル3:相手の伝えたい内容がわかる(誤解無く)

レベル4:相手が発言していない裏まで読める

 

 

 

一例として、このようにわけられますが、具体的にどこに当てはめるかは困難です。

 

また、「話す力」のレベルは、「話してもらわないかぎり、評価できない」問題があります。

 

 

報連相や発言を、積極的に行う人は評価しやすいです。

しかし、そもそもあまり話さない人は、「話す力が無いから」なのか、「話しづらい雰囲気の職場だから」なのか判断できません。

 

 

 

また、「聴く力」のレベルは、「頭の良さ」「理解力」「記憶力」とくっつけて評価している場合があります。

 

 

よく「ちゃんと聴いてたのか?」という人がいます。

 

「ちゃんと聴いていたのか?」は、「なんで理解できないのだ?」という意味を含んでいると考えられます。

もしくは、「なんで覚えていないのだ?」という意味かもしれません。

 

 

学者さんが話すどんなに難しい理論も「ちゃんと聴いていれば」、子どもでも理解できるのでしょうか?

知識がないテーマに対して、専門用語で話されては、ちゃんと聴いていても理解はできません。

 

 

話し手は、伝わらなかったこと(コミュニケーションの失敗)を、聴き手の責任にしがちです

 

 

コミュニケーション能力は、単純に「話す力」「聴く力」だけでなく、「価値観」「知識量」「理解力」「記憶力」「主観」「客観」が複雑に絡み合うため、評価が難しいのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

数値化できない

コミュニケーション能力は、数値化が困難です。

 

例えば、アメリカのオバマ元大統領のコミュニケーション能力を100点とするなら、池上彰さんは何点でしょう?

林修さんは何点でしょう?

そしてご自身は何点でしょうか?

そして、その根拠は?

 

などと質問されると、困るのでは無いでしょうか?

 

 

コミュニケーション能力は、「主観」「客観」が絡み合うため数値化できません。

 

部下の話に聴く耳をもたない上司が、部下のコミュニケーション能力の評価は難しいでしょう。

 

 

また、「主観」には、好き嫌いの感情が大きく影響します。

好きな部下はコミュニケーション能力が高く、嫌いな部下はコミュニケーション能力が低いと判定しかねません。

 

 

コミュニケーション能力は、個性でもあります。

個性が大切なら、無理に数値化しようとしない方が良いでしょう。

 

 

コミュニケーション能力を構成するものは、複雑と述べました。

さらに、もう一つの変数が加わります。

 

 

それは、状況という複雑な変数です。

 

 

例えば、日産自動車の元会長カルロス・ゴーンのコミュニケーション能力は高いでしょうか?

不祥事発覚前は高いと評価されていました。

現在は、いかがでしょうか?

 

 

本人のコミュニケーション能力が変わっていないにもかかわらず、周りからの見え方が変わると、コミュニケーション能力が変化するのです。

 

日本人が評価すると低くなるかもしれませんが、レバノン人が評価すると高くなるかもしれません。

 

 

一方で、話すのが上手くない人でも、一生懸命に話す姿が感動を与える場合もあります。

 

評価者の価値観が、大きく影響するのです。

 

コミュニケーション能力の定量的な評価は、難しいのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コミュニケーションを能力の目標設定方法

コーチングスキル

コミュニケーション能力の評価は、複雑で難しいです。

 

しかし、社員のコミュニケーション能力の強化をするためには、何かしら評価する方法が必要になってきます。

 

 

下記の大切なポイントを押さえつつ、工夫しながら評価してみましょう。

・厳密に評価せず、敢えてあいまいさを許容する

・評価する側と評価される側が納得している

・個性が大切なら、他人と比較しない

・給料と連動させない

 

 

 

 

 

 

 

多面的に評価

コミュニケーション能力を評価するなら、多面的な評価が必要です。

評価者の価値観に、評価が左右されるなら、さまざまな価値観を持った人で評価すれば、偏りが少なくできます。

 

ただし、職場の人間関係が良好である」が前提です。

 

「正直に評価したら、人間関係が悪くなるから止めとこう」という意識が働けば、正しい評価が行われません。

 

 

 

多面評価がオススメの理由。

 

「コミュニケーション能力が高い」と自己評価している上司も、部下からは「話しかけにくい」と思われている可能性もあります。

 

上司にゴマをする部下は、上司からは「コミュニケーション能力が高い」と評価されるかもしれませんが、同僚からは「協調性が無い」と評価されるかもしれません。

 

「自分はコミュニケーション能力が高い」と勘違いしている部下も存在するでしょう。

 

 

お互い「主観」「客観」の評価が異なると、良い面では「気づき」を促しますが、悪い面では、「相手を悪者にする可能性」があります。

 

両者の関係性によって、「お互い悪く評価」という問題も発生するかもしれません。

 

 

多面的に評価することにより、客観性が高まります。

評価される側が、客観的に自分自身を見つめる内省を促せます。

 

 

しかし、繰り返しになりますが、「好き嫌いの主観」が強く反映される可能性もあります。

 

職場の人間関係が良好であることが望ましいです。

しかし、最初から職場の人間関係が良好であることは無いでしょう。

少しずつでも前進するという意識が必要です。

 

 

 

 

 

 

 

自分で決める

多面評価も、さまざまな問題があります。

 

結局のところ、コミュニケーション能力の目標設定は、「自分で決める」が、最も望ましいと考えます。

 

コミュニケーション能力について、現状を自己評価してもらい、目指すべき目標設定をしてもらいます。

 

 

一言でコミュニケーション能力といっても、スピーチ、プレゼンテーション、カウンセリング、ファシリテーション、ディスカッション、営業スキル、交渉スキル、説得術など、さまざまです。

 

さらに、「誠実さ」「おもいやり」などのパラメーターも加わります。

 

 

本人が目指したいコミュニケーション能力を、自分自身で具体化、数値化してもらいます。

 

例えば、プレゼンテーションであれば、「どのような場面のプレゼンテーションで、どのような結果が生み出せたら100点満点なのか」具体化してもらいます。

そして、現状が何点なのか、その理由も含めて言語化してもらいます。

 

そうすることで、目標数値に対して、進捗がどのようになっているか見える化して、評価が可能になります

 

そして、補強するべき課題も明確になります。

 

 

この際、目指したいコミュニケーション能力は、「会社側の希望」と「本人の自覚」とのすり合わせが必要になります。

 

 

例えば、「自分のコミュニケーション能力は高い、自分の意見に賛成しない周りが悪い」と自己評価している社員がいたらどうするか。

 

まず、「会社が期待するコミュニケーション能力の高い状態」を伝えてみます。

そして、それに対してどう思うか感想を確認します。

 

 

評価基準を工夫するなら、目標設定に「メンバーからの信頼度」を加えてみると良いでしょう。

 

メンバーから信頼されているのに、意見に賛成してもらえないのはどうして?」のような質問の繰り返しにより、課題が明確化されていきます。

 

・伝える力が無いのか?

・意見自体に問題があるのか?

・メンバーから信頼されていないのか?

・メンバーの理解力が低いのか?

・メンバーから問題を指摘されているなら、それを受け止めないのは何故なのか?

 

 

課題が明確にならない限り、コミュニケーション能力は改善に進みません。

 

「自分は悪くない」と認識しているかぎり、コミュニケーション能力の改善は進みません。

 

 

 

目標設定を自分で行い、現状とのギャップから課題を見つける」が、コミュニケーション能力改善に大切です。

 

 

この際、責めているようになると相手は、反抗的な態度に出ます。

痛みを避けるため、できるだけ「他人の責任にしたい」のです。

 

 

課題を見つける内省を促す評価者自身のコミュニケーション能力強化がもとめられます。

 

 

 

【コラム】報連相の目的と重要性~メリット・デメリット~

 

 

 

 

 

コミュニケーション能力の目標設定を促すのもコミュニケーション能力

コーチング・コミュニケーション

コロナウイルス感染拡大の影響により、テレワークの活用が広がっています。

テレワーク以外もグループウェアなど、社員同士のコミュニケーションツールはひろがっています。

 

 

コミュニケーション量の急拡大とともに、コミュニケーションの質の悪化が懸念されています。

 

 

各企業、社員のコミュニケーション能力向上は、必須の課題です。

その際、現状の社員のコミュニケーション能力を把握し、強化の取り組みの効果を測定することが大切です。

 

 

しかし、コミュニケーション能力の評価、目標設定は複雑であると説明しました。

 

 

 

また、評価者自身のコミュニケーション能力自体が高くないと、他人を評価できません。

 

例えば、威圧的な態度をとる評価者に対しては、コミュニケーション能力を発揮できないからです。

 

 

まずは、評価者自身のコミュニケーション能力強化に取り組んでみましょう。

 

そうすることで、評価者自身が、コミュニケーション能力強化のための評価ポイントを体感できるでしょう。

 

弊社では、コミュニケーション能力強化を促す、コーチング・コミュニケーション研修セミナーを実施しています。

ぜひご活用ください。

 

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