部下のモチベーションの見える化はできない
経営者、管理職の重要な仕事として、部下のモチベーションマネジメントが存在します。
どのような施策ならモチベーションがアップするのか。
確認のためにはモチベーションの見える化がもとめられます。
実際、「モチベーションを見える化」するサービスを見かけるようになってきました。
しかし、実際には「見える化」は難しいです。
「見える化」できても、それを確認する人によって判断が変わります。
「新しいことに意欲的」な部下に、上司が「余計なことは考えず、まずは今の仕事に集中してほしい」と考えていたらどのように評価されるのでしょう。
「現在の仕事に消極的」と評価されないでしょうか?
モチベーションは人それぞれの価値観によって、大きく見え方が変わります。
モチベーションの見える化について、大切なポイントを説明します。
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【目次】 |
部下のモチベーションを見える化したい理由
上司にとって、部下のモチベーションの状態は気になる課題です。
なぜなら、部下のモチベーションの高さによって、チームの成績が左右されるからです。
モチベーションの低い状態に気がつかないと、離職率アップの可能性もあります。
組織の生産性を向上するには、部下のモチベーションの見える化が大切です。
課題がわからないから不安
部下のモチベーションの状態が見えないと、現在が良い状態なのか悪い状態なのかわかりません。
課題がわからなければ、何を改善したらよいのかわかりません。
上司自身はうまくマネジメントしているつもりでも、急に社員がストレスでダウン、退職する場合があります。
理由を聞いても正直に答えてくれない場合、大きな課題となります。
上司としては、上手くやっているつもりなのに、部下のモチベーションが下がってしまうことがあります。
そして、どのような施策がよいのかわからなくなります。
施策の効果がわからない
さまざまなモチベーションアップ施策を考えて取り組んでも、モチベーションの見える化(数値化)ができないと、どれぐらいの効果があったのかがわかりません。
そもそも中間管理職の場合、部下のモチベーションアップ施策自体が難しいです。
会社から、部下のモチベーションアップ施策を行うようにと指示される一方、早く成果を出すようにプレッシャーをかけられます。
中間管理職は、待遇面や人事権の与えられていません。
効果があるかわからないモチベーションアップ施策よりも、仕事の成果を部下にもとめがちです。
効果の見えない施策は、後回しにされる傾向があります。
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モチベーションは見える化できない
「社員のモチベーションを見える化する」ようなサービスが現れています。
簡易的な評価方法としては良いと思います。
しかし、厳密にモチベーションの見える化は難しいでしょう。
それは、ストレスを見える化するストレスチェック制度が義務化されているにも関わらず、精神疾患による労災申請が増えつづけている点からもわかります。
モチベーションって何?
モチベーションの見える化の前に、「モチベーションって何でしょう?」「何をもってモチベーション?」という問題が存在します。
モチベーションの定義は会社側、社員側の立場によって異なります。
会社側が、社員に「モチベーション高く働いてほしい」という言葉は、「会社の思い通りに行動する状態=モチベーションが高い」と判断しがちです。
社員側が「モチベーションが上がる」という言葉は、「やりたい仕事ができている」「仕事にやりがいがある」という時に使われます。
会社側がやってほしい仕事と、社員がやりたい仕事が異なる場合、会社側は「社員のモチベーションが低い」と判定しないでしょうか?
上司と部下の仕事に感じる「やりがい」は、異なります。
さらに言えば、人それぞれ異なります。
それを固定化された基準で見える化しようとすると、逆に「モチベーションを下げる」可能性が高まります。
会社側は、「見える化したつもりで満足してしまう」点も問題です。
モチベーションの見える化の方法と問題点
モチベーションの見える化は、「成果」での測定が望ましいと考えます。
なぜなら、社員のモチベーションを高める目的は、生産性の改善、成果の最大化だからです。
そのため、望ましい成果が得られたら、社員のモチベーションが高まっていると判断できます。
ところが問題があります。
ブラック企業のように、社員を強引に働かせて、一時的に成果を高めることができます。
この場合は、社員のモチベーションが高まっているとは言えません。
新型コロナウイルスの感染拡大による不況時など、「乗り越えるんだ!」と社員のモチベーションが高くても、成果が思うように出ない場合も存在します。
社員のモチベーションが高くても、経営者や管理職が経営判断を間違えたら成果が出ません。
職種ごとにも成果基準の検討が必要でしょう。
モチベーションの見える化方法は、ストレスチェック制度を組み合わせるのをオススメします。
ストレスとモチベーションは相関します。
ストレスが高いほどモチベーションが下がるからです。
新職業性ストレス簡易調査票は、仕事に対するポジティブな感情(モチベーション)の項目も含まれています。
【https://mental.m.u-tokyo.ac.jp/jstress/】にサンプルがあります。
ただし、アンケート方式にも問題が。
会社や上司からのプレッシャー、本人が見栄をはるなどで、ウソの回答をする可能性があります。
ストレスチェック制度が開始された以降も、精神疾患による労災申請は増えつづけています。
その原因は、ストレスチェックでは社員のストレス状況を見える化できないのか、それともその結果を会社が無視しているのかでしょう。
多くの場合、会社が業績を重視するあまり、社員のストレスやモチベーションを後回しする結果ではないかと考えます。
・会社が存続してこそ、社員の生活が守られる。だから我慢して働こう
・社員のモチベーションが高いから、会社の業績が向上する
どちらも大切な考え方です。
しかし、前者に重点が置かれると「モチベーションの見える化」の意味が小さくなります。
上司の直感力で部下のモチベーションをはかる
それでは、部下のモチベーションが見える化できない課題はどうするのか?
まず、モチベーションは厳密に数値化が必要ないと考えます。
なぜなら、部下の個性はすべて異なるからです。
モチベーション、メンタルヘルスの状態は日々変化するからです。
年1回程度のアンケート方式では、正しい実態をはかれません。
上司自身が評価面談、1on1ミーティング、日常会話などのコミュニケーションで、部下の状態をはかる方が望ましいと考えます。
部下のメンタルヘルスの問題も基本は、「いつもと違う様子に気づく」となっています。
つまり、上司のコミュニケーション能力が必要になります。
上司の関わり方が重要
部下のモチベーションの状態について、結局は、上司が感じ取るしかないと考えます。
それは、社員それぞれに個性があるため、固定されたパラメータでの測定が難しいためです。
「褒められて伸びるタイプ」もいれば、「叱られて伸びるタイプ」もします。
それを数値化するのは難しいでしょう。
厳密に数値化しなくても「高い」「低い」の2択でも良いぐらいです。
部下のモチベーションの状態に気づけるかどうかは、部下にどれだけ関心をもっているかの強さに左右されます。
仕事の成果優先にしすぎると、部下の気持ちに気づきにくいでしょう。
家庭をかえりみない仕事ばかりの人が、家族の問題に気がつきにくいのと似ています。
モチベーションの状態に気がつくには、頻繁にコミュニケーションをとることです。
近年活用が広がっているのが、1on1ミーティングです。
1on1ミーティングは頻繁に、コミュニケーションをとりながらモチベーションを引き出すことを目的としています。
積極的なコミュニケーションが、モチベーションをはかるために必要です。
上司の「聴く力」を高める方法
部下のモチベーションの状態に気づけるかどうかは、上司のコミュニケーション能力の高さによって左右されます。
1on1ミーティングの効果も同様です。
積極的にコミュニケーションをとっても、「指示命令、否定批判」などばかりでは、モチベーションは下がります。
部下から情報を聴き出さなければなりません。
つまり、上司には「聴く力」がもとめられます。
「聴く力」とは、「相手に本音をたくさん話してもらう力」です。
本音なので、信頼関係構築が前提になります。
「聴く力」を高める方法は、コーチング・コミュニケーションを学んで、ひたすらトレーニングです。
コーチング・コミュニケーションとは、コーチングスキルを取り入れたコミュニケーションスキルです。
コーチングスキルとは「傾聴」「質問」「フィードバック」で構成されるスキルです。
強化によって、「相手に本音をたくさん話してもらう力」が強くなります。
部下が気軽に仕事に関しての悩みなど、上司に相談できる環境をつくる。
そうすれば、モチベーションの状態に気づきやすくなります。
【コラム】チームワークの一体感を醸成するコミュニケーション方法
社員が楽しそうに働いている職場づくりを
明確なデータがみつかりませんが、私たちは感覚的にモチベーションが高い方がパフォーマンスが高まります。
そのため、経営者や管理職は社員のモチベーションアップをもとめられます。
注意点は、モチベーションは「やる気を出せ!!」といっても高まらないということです。
社員が楽しそうに働いている状態を、モチベーションの高い状態と考えています。
社員が楽しそうに働いている職場づくりを目指してみてはいかがでしょうか。