インバスケット思考の方法と効果~管理職の判断力を強化~
働き方改革で働く時間が減らされる中、一人ひとりが短時間で処理しなければならない仕事量が増えています。
人手不足になる中、一人当たりの仕事量がさらに増えることは、十分予想されます。
「忙しくて手が回らない」状況に追い込まれる可能性があります。
そして、追い込まれた状況では、判断を間違える可能性があります。
特に経営者や管理職が判断を間違えると、大きな問題につながります。
そのため、リーダーは判断力、意思決定力の強化がもとめられます。
短時間で多くの意思決定を行わなればならない状況に、対応力アップのためのトレーニングがインバスケット思考です。
インバスケット思考について解説します。
| 【目次】 |
意思決定はスピードと正確さが必要
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ビジネスのグローバル化によって、企業間競争の激しさが増しています。
新型コロナウイルスの感染拡大や自然災害、地政学リスクなど、競合企業の動きだけでなく外部環境変化のスピードが増しています。
経営者・管理職は、意思決定のスピードアップとともに、判断の正確さが求められるようになりました。
間違った判断が、大きな損害を会社に与えるからです。
判断力が問われる時代に
仕事量が増えつつ、人手不足に陥っています。
一人当たりの仕事量が増えています。
その中には、緊急で対応しなければならない仕事も多くあります。
その対応の結果が、会社の業績に現れます。
逆に言うと、会社の業績は、経営者や管理職の意思決定力のバロメーターとも言えます。
判断の正確さが求められる中、失敗が許されない空気もあり、判断を先延ばしにする場合もあります。
いま忙しいから落ち着いてからと、判断を先延ばしにする場合もあります。
「判断を先延ばしにする」も意思決定です。
経営判断の結果、成長する企業、衰退する企業、停滞する企業などに分かれていきます。
生産性を高めなければいけない
一人当たりが、処理しなければならない仕事が増えています。
働き方改革の影響もあり、生産性を高めて、さらに短い時間で処理する能力がもとめられています。
それは、海外の企業に比べて、日本の企業の生産性が低いからです。
生産性を高めるには、高付加価値の商品やサービスを開発するか、時間当たりの生産量を増やすことが必要です。
高付加価値の商品やサービスを開発するのも、スピードがもとめられます。
しかし、スピードだけでは困ります。
正確性も必要です。
日々の意思決定にスピードと正確性が求められるのです。
「意思決定のスピードと正確性をアップする」を目的としたトレーニング方法が「インバスケット思考」です。
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インバスケット思考
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意思決定のスピードと正確性をアップする方法に、インバスケット思考という考え方があります。
管理職研修などで採用される機会の多い、インバスケット思考について説明します。
インバスケット思考とは
インバスケットとは、未処理箱の中の未処理案件のことです。
インバスケット思考とは、複数の未処理の案件を、制限時間内のどのようにこなすかの思考方法です。
経営者や管理職になると、自分自身の仕事のほかに、社員からの相談などにも対応しなければなりません。
数多くの案件を、いかに短時間にこなすかを追求しなければなりません。
トレーニングでは、ある仕事の担当者になりきって、出される課題に対応するという体験をします。
参考にWikipediaでは、次のようにあります。
インバスケットとは、架空の人物になりきり、制限時間の中でより多くの案件を高い精度で正しく処理することを目標とするバーチャル・ビジネス・ゲームのことである。インバスケット(未処理箱)に入っている案件を処理していくことが求められるゲームなので、「インバスケット」という名前がついたと言われている。インバスケットのルーツは、1950年代にアメリカ空軍の教育機関で、訓練の結果測定のために開発されたものだと言われている。
(引用:Wikipedia:https://ja.wikipedia.org/wiki/インバスケット)
【インバスケット思考のルールについて】
・課題に直面している人物になりきる
・制限時間を設ける
・優先順位を自分で決める
・絶対的な正解は無い
インバスケット思考の効果
インバスケット思考による効果は、さまざまです。
まずは短時間で数多くの未処理の案件をこなさなければなりませんので、優先順位を決めなければいけません。
その重要性や緊急性などを見極める力が養われます。
案件を見極めたうえで、優先順位を決断しなければなりません。
決断力、意思決定力が養われます。
意識決定のうえ、正確にスピーディーな処理がもとめられます。
訓練により、問題解決能力が高まります。
このように、案件の優先度を見極める力、意思決定力、問題解決能力が高まります。
インバスケット思考のトレーニングを行った結果、生産性が高まります。
【インバスケット思考の効果まとめ】
・問題解決力の向上
・意思決定力の向上
・優先順位判断力の向上
など
インバスケット思考のトレーニング
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インバスケット思考は、トレーニングによって養われます。
インバスケット思考とは何か?を知っただけでは、意思決定力は高まりません。
企業研修などで行われているインバスケット思考のトレーニング例を紹介します。
トレーニングの一例
トレーニングの一例。
例えば、
あなたが、製造業の開発部の課長だったとします。
本日9時半から、出張で会社を出なければなりません。
9時にパソコンを開くと、50件のメールが届いていました。
会社を出るまでに、すべてのメール案件に対応してください。
というものです。
メールの内容は
・クレームに対する相談
・経営者からの指示
・部下からの退職相談
・部品購入許可の確認
などです。
制限時間が決まっているので、優先順位の高いものからこなさなければなりません。
どれだけの数を処理できるかをトレーニングします。
インバスケット思考の留意点
インバスケット思考の留意点は「絶対的な正解が無い」です。
そのかわり「間違い」は存在します。
客観的にみて、未処理の案件に、重要なものが残っていたら、それは問題となるでしょう。
最初からうまくこなせる能力はありません。
インバスケット思考の経験の積み重ねによって、早くなってきます。
そもそも論として、追い込まれた状況をつくらないことが大切です。
問題を先延ばしにするクセがあると、未処理箱の中がいっぱいになってしまいます。
早め早めの対応が大切です。
また、一人で仕事を抱えこむ人も未処理箱の中がいっぱいになります。
仕事ができる人に、作業量が偏るのも問題です。
「チームで仕事を処理する」も大切です。
仕事を任せたチームメンバーから「もっと早く言ってよ」と思われたら、信頼関係が崩れるので注意が必要です。
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コミュニケーション能力がベースにある
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急に多くの仕事が降りかかることがあります。
そのような時、瞬時に判断をもとめられます。
判断を間違えると、大きな問題になるかもしれません。
「慌ててたからすみません」で済まないのがビジネスの世界です。
同時に多くの意思決定に迫られた時の判断力を強化するトレーニング方法として、インバスケット思考があります。
結論的には、数多くのケーススタディを繰り返して、経験の中で学習するしかありません。
インバスケット思考は、生産性の向上とリスクマネジメントに有効です。
やってみると気づくと思いますが、短時間で多くの仕事の処理をこなすには、他の社員の協力が必要です。
仕事をお願いするにも、それまでの人間関係がどのようになっているかで、頼みにくいという問題が発生します。
普段から仕事を頼みやすい関係を構築するには、社員のコミュニケーション能力強化が必要です。
また、それ以上に大切なのが、重要な意思決定を短時間でもとめられる状況に追い込まれないことです。
余裕を持った意思決定ができるような、チームマネジメントを心がけましょう。