組織の生産性を高めるビジネスコミュニケーションの基礎知識
ビジネスコミュニケーションが大切な理由は、ほとんどの人が理解しています。
報連相が無い、会議で発言が無いなどがあれば、ビジネスがストップするからです。
しかし、ビジネスコミュニケーションは、いつまでも改善されません。
コミュニケーションが大切だと言い続け、社員に研修やセミナーを受講させているのに、どうしてでしょうか?
ビジネスコミュニケーション力強化の壁は、「コミュニケーションを正しく理解できていない」「会社からのプレッシャー」などが存在するからです。
組織の生産性を高める、ビジネスコミュニケーションの基礎知識を説明します。
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【目次】 |
ビジネスコミュニケーションとは
ビジネスコミュニケーションとは、ビジネスシーンで必要とされるコミュニケーションです。
面接での自己紹介、名刺交換、プレゼンテーション、ディスカッション、報連相、説明力、交渉力、説得力などビジネスのさまざまなシーンで、コミュニケーション能力が必要です。
そして、どれも奥が深く複雑です。
ここでは、部下にもとめられるコミュニケーション能力と上司にもとめられるコミュニケーション能力にわけて考えます。
部下のコミュニケーション能力
一般的に「社員のコミュニケーション能力が低い」という言葉は、「部下のコミュニケーション能力が低い」という言葉と、同じ意味になっているように感じます。
もちろん、上司のコミュニケーション能力が低い場合も存在します。
部下に必要なコミュニケーション能力は、「話す力」です。
経営者や上司が、「部下が報連相してこない」「部下が会議で発言しない」などと悩むのは、部下のコミュニケーション能力の低いからと考えられています。
部下にもとめられるコミュニケーション能力とは、具体的には次のようなスキルになります。
・報告、連絡、相談
・スピーチ
・プレゼンテーション
・自己主張
・ディスカッション
などです。
「自分の考えを論理的にまとめ、相手に分かりやすく伝える力」が必要です。
加えてTPO(時間と場所と場合)を考慮に入れて、適切に行う必要があります。(タイミングや言葉づかいなども含む)
上司のコミュニケーション能力
上司は、基本的に部下にもとめられるコミュニケーション能力は習得しています。
一定のコミュニケーション能力が無いと、管理職になれないからです。
しかし、上司に出世すると、必要なコミュニケーション能力が変わります。
上司の仕事は、「チームをまとめる」です。
必要なコミュニケーション能力は、「聴く力」にかわります。
上司になると「指示、命令」といった説得力や交渉力などが必要になると考えられるかもしれません。
しかし、上司になる人はたいてい「指示、命令」する力はあります。
管理職でなくても、後輩に「指示・命令」はしてきているでしょう。
もしかしたら、「命令に部下が従わない」「部下の反発が怖くて命令ができない」などがあるかもしれません。
原因は、部下との信頼関係がないからです。
信頼関係を築くために、必要なコミュニケーション能力が「聴く力」です
上司にもとめられるコミュニケーション能力とは、具体的には次のようなスキルになります。
・傾聴力
・質問力
・フィードバック力
評価面談、1on1ミーティング、会議、指示命令など、あらゆる場面で「部下を認め、モチベーションを引き出す力」が必要です。
重要なポイント。
部下のコミュニケーション能力を強化できるかは、上司のコミュニケーション能力に左右されます。
部下が「報連相をしない」のではなく、上司が「報連相をさせない」場合もあるのです。
いつもイライラ、否定批判、パワハラを繰り返す上司のもとでは、部下のコミュニケーション能力は強化されないでしょう。
「話す力」は、「話した量」により、強化されます。
「話せない環境」では、「話す力」は強化できません。
部下のビジネスコミュニケーション能力を強化したいなら、上司のコミュニケーション能力強化を優先することをオススメします。
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コミュニケーション能力強化の壁
ビジネスコミュニケーション能力が必要と、頭でわかっていながら、常に課題であり、改善されないのはどうしてだと思いますか?
「コミュニケーションをしっかりとりなさい」と言えば、コミュニケーションの問題が改善すると思っているからかもしれません。
コミュニケーションをしっかりととるには、「具体的に何をすればよいか?」が欠如していることが原因です。
ビジネスコミュニケーション能力の改善の壁を説明します。
コミュニケーションの基礎知識
コミュニケーションとは、何でしょうか?
会話(カンバセーション)との違いは、何でしょうか?
このように質問されると、答えに悩む方が多いです。
コミュニケーションと会話を辞書で調べると、次のように説明されています。
会話とは
[名](スル)複数の人が互いに話すこと。また、その話。「会話を交わす」
(出典:コトバンク:デジタル大辞泉:https://kotobank.jp/word/会話-458771)
コミュニケーションとは
社会生活を営む人間が互いに意思や感情、思考を伝達し合うこと。言語・文字・身振りなどを媒介として行われる。「コミュニケーションをもつ」「コミュニケーションの欠如」
(出典:コトバンク:デジタル大辞泉:https://kotobank.jp/word/コミュニケーション-66186)
コミュニケーションは、「意思、感情、思考」まで、伝達することが必要です。
IT技術の発展により、コミュニケーションツールは便利になりました。
しかし、メールなど文字でのやりとりで、本当にコミュニケーションがとれているでしょうか?
コミュニケーションは通信です。
データの完全性(改ざんされていない)が重要です。
電子メールも文字化けで届いたら、コミュニケーションがとれていないとなります。
受信側が持っていないアプリの形式のデータを送っても、受信者はファイルを開けません。
コミュニケーションが不完全になる原因は、送信者にあります。
「ちゃんと聴いていたのか?」「何回言ったらわかるんだ!」というセリフを、聴く機会があるかもしれません。
「聴き手」が怒られるケースが多いですが、コミュニケーションでは「話し手」の責任です。
相手に理解できるように伝えていないのが原因です。
これを理解していないと、同じ失敗を繰り返し、ビジネスコミュニケーションは、改善されないでしょう。
コミュニケーションの基本は、「話し手は、聴き手のレベルに合わせる」です。
外国人に、日本語で伝えても理解してもらえない可能性が高いです。
子どもに、学者が専門用語で伝えても理解してもらえないでしょう。
ビジネスコミュニケーションを成功させるには、話し手は、聴き手のレベルを事前に理解しなければならないのです。
聴き手のレベルを理解するために必要な力が、「聴く力」になります。
職場のビジネスコミュケーションを活発にするには、コミュニケーションの基礎知識を正確に理解することが大切です。
仕事の効率と成果のプレッシャー
ビジネスの世界では、コミュニケーションよりも、業績や成果を優先されがちです。
本来であれば、コミュニケーションが優先されるのが理想です。
職場で報連相が無い、会議で発言が無い、指示命令が通らないなどとなれば、仕事が進まなくなります。
コミュニケーションが無ければ、業績も成果も小さいものになります。
本来は、コミュニケーションを優先されるべきです。
しかし、現実的には、仕事の成果が優先されがちです。
上司自身も会社から、結果をもとめられています。
だから、部下が「指示・命令通りに動く」を期待します。
本来、上司は、部下のレベルに合わせて言葉を変えて指示、命令が必要です。
しかし、結果を出すプレッシャーがあるので、部下のレベルを確認せずに指示、命令など、権限を利用した「話す力」に頼る傾向にあります。
部下は、上司が話している内容を正しく理解できなかった場合、コミュニケーションに失敗します。
できる部下、できない部下が存在し、できない部下への不満があるかもしれません。
しかし、さまざまな部下の個性に合わせて、モチベーションを引き出し、部下をまとめる仕事が上司の役割です。
仕事の効率優先も、ビジネスコミュニケーションの壁となります。
イントラネット、グループウェア、テレワーク、ビジネスチャットなど、コミュニケーションツールは増え続けています。
IT技術の進化によって、コミュニケーションの量は、ますます増えつづけています。
処理しきれないぐらいに増え続けています。
一見、コミュニケーションが活発に行われているように見えますが、どんどん質が希薄化します。
1人当たりに関わるコミュニケーションの量が、ますます少なくなる可能性が高まっています。
業務の効率化を優先するあまり、ビジネスコミュニケーションが後回しにされる。
成果を急ぐあまりに、話を聴く時間が少なくなる。
このような理由で、ビジネスコミュニケーションが改善方向に進みません。
コミュニケーション能力強化
ビジネスコミュニケーション能力強化は、経営者や経営幹部のリーダーシップが欠かせません。
上述したように、ビジネスコミュニケーションよりも、仕事優先するリーダーのもとでは、改善が進まないからです。
リーダーシップがあることを前提に、コミュニケーション能力強化の施策を説明します。
上司と部下にわけて、施策の設計が大切です。
どちらのコミュニケーション能力強化に共通するのは、練習、トレーニングが必要だという点です。
一朝一夕で、コミュニケーション能力は強化できません。
部下のコミュニケーション能力強化
部下が必要なコミュニケーション能力は、「自分の考えを論理的にまとめ、相手に分かりやすく伝える力」です。
このコミュニケーション能力の強化方法は、OJTとOFF-JTの両方をバランスよく組み合わせると良いでしょう。
OJTとは、社内で仕事をしながら、上司先輩に教えてもらう方法です。
OFF-JTとは、企業研修など、社外の講師に教えてもらう方法です。
営業力、プレゼンテーション能力、報連相など、何のコミュニケーション能力が必要なのか?
社内で育成できるのか?
などを確認します。
社内で教育できるのであれば、上司や先輩社員によるOJT。
社内で教育できないのであれば、社外の研修などを活用したOFF-JTを行います。
大切なのはトレーニングです。
「試して」「修正して」を、何度も繰り返さないかぎり上達しません。
そこで大切なのは、上司の「聴く力」です。
報連相やプレゼンテーションのたびに罵倒されるのでは、消極的になります。
トレーニング量が減少し、部下のコミュニケーション能力強化に失敗します。
部下がコミュニケーションのトレーニングしやすい、環境の整備が大切です。
会議で発言を促す。
朝礼などでスピーチ練習の機会をつくる。
報連相しやすい場をつくる。
「話す力」のトレーニング機会をつくり、部下のコミュニケーション能力強化を促します。
上司のコミュニケーション能力強化
上司に必要なコミュニケーション能力は、「聴く力」です。
具体的には、以下の能力強化が必要です。
・傾聴力
・質問力
・フィードバック力
「聴く力」の強化方法、企業研修の活用など、OFF-JTがメインになります。
「聴く力」強化には、コーチング・コミュニケーションを学ぶ研修セミナーがオススメです。
コーチング・コミュニケーションとは、コーチングスキルを活用したコミュニケーションスキルです。
コーチングスキルとは、「傾聴」「質問」「フィードバック」で構成されるスキルです。
コーチング・コミュニケーションのトレーニングによって、「聴く力」が強化されます。
注意点を紹介します。
・「聴く力は難しい」という意識が大切です。
・「難しい」ので、長期的なトレーニングが必要です。
・能力強化に時間がかかります。仕事の成果を優先した場合、ふりだしに戻る可能性があります。
・仕事である以上、成果も大切。会社との相互理解が大切です。
「聴く力」強化により、組織内のコミュニケーションが活発になります。
次のようなメリットが期待できます。
・発言のしやすい職場づくり
・評価面談の効果アップ
・1on1ミーティングの効果アップ
・会議での発言が活発になる
・仕事の生産性が高まる
・部下のモチベーションアップ
・ワンチームをつくれる
職場のコミュニケーションを改善できるかどうかは、上司の「聴く力」コミュニケーション能力に左右されます。
【コラム】ハードスキルとソフトスキルの違い~メリット・デメリット~
会社の協力が重要
IT技術の進化が、ますます速くなってきます。
結果、私たちが一日に処理しなければならない情報量も増えてきます。
短い時間で、質の高いコミュニケーションをしなければなりません。
ビジネスには、コミュニケーションが大切だとは、大昔から言われ続けてきました。
しかし、なかなか改善しません。
テレワークが広がる中、その傾向はますます強くなるでしょう。
改善されないのは、会社側のコミュニケーションに対する理解が少ないからです。
「コミュニケーションをしっかりとっていこう!」と呼びかけるだけで、対策できていると勘違いします。
「コミュニケーションをしっかりとっていこう!」といいながら、メールを送っただけで、コミュニケーションがとれていると勘違いします。
そして、コミュニケーションよりも、成果を重視します。
コミュニケーション能力が高まらないと、成果も高まらないのにです。
サンリオピューロランドをV字回復させた、小巻亜矢館長が意識したのは、「社員の話をしっかり聴くところから」だったそうです。
トップの考え方が変われば、会社が変わる良い事例だと思います。
経営者からプレッシャーをかけられている状態では、中間管理職も聴くのが難しいでしょう。
経営者がプレッシャーをかける会社は、会社全体がピリピリした、発言しづらい企業風土になるでしょう。
企業風土改善には、「聴く力」の強化が大切です。
まず、経営者、管理職の「聴く力」強化に取り組んでください。
弊社では、「聴く力」強化のための、コーチング・コミュニケーション研修セミナーを実施しています。
ぜひご活用ください。