1on1ミーティングとは~目的とメリット・デメリット~
働き方改革、終身雇用制度の崩壊、新卒の一括採用の廃止、同一労働同一賃金など、社員の働く環境が大きく変化しています。
管理職には、今まで以上に、チームの結束力強化がもとめられています。
部下の「チームに協力しよう」というモチベーションの高さが、チームの生産性に影響を与えるからです。
そこで、部下のモチベーションアップを目的に、導入が広がっているのが「1on1ミーティング」です。
1on1ミーティングは、上司と部下の1対1の面談です。
「評価面談と何が違うの?」
「何を話せばいいの?」
「本当に効果があるの?」
思いながら活用させられている管理職も多いです。
1on1ミーティングといいながら、ただの部下の愚痴を聴く場になっている場合も多くあります。
1on1ミーティングの活用には、「目的と効果」「メリット・デメリット」をしっかり理解することが大切です。
【コラム】チームワークの一体感を醸成するコミュニケーション方法
【目次】 |
1on1ミーティングが必要な理由
1on1ミーティングとは、上司と部下が、1対1で対話する面談です。
1on1ミーティングは評価面談とは異なり、部下の成長を目的としています。
そして、1on1ミーティングは、上司と部下のコミュニケーションの質を改善する効果も期待されています。
1on1ミーティングが必要とされる理由は、仕事の効率化の優先によって、職場内でのコミュニケーションが希薄化したからです。
メールやグループウェアなど、文字でのコミュニケーションが増え、対面でのコミュニケーションが減りました。
処理しなければならない情報量が急増したことにより、処理しきれないようになってきました。
「上司と部下のコミュニケーション=1on1ミーティング」が注目されている背景を説明します。
希薄化する職場内のコミュニケーション
職場内のコミュニケーションが希薄化している要因は、仕事が忙しく、時間が無いからです。
仕事量は増加していますが、人手不足の影響により、社員は仕事に追われる状況が続いています。
企業は業務の効率化を最優先とします。
グループウェアなどで業務を一括管理し、オンラインでコミュニケーションする機会が増加しています。
オンラインで複数の人と同時にコミュニケーションをとる場面が増えました。
その結果、一人当たりの対面でのコミュニケーション時間と量が減少しました。
さらには、文字でのコミュニケーションの割合が高くなっているのも原因です。
文字でのコミュニケーションは、微妙なニュアンスが伝わらないから、難しいのです。
コミュニケーションの希薄化により、生産性の問題だけではなく、メンタルヘルスの問題や離職率の問題へとつながっています。
コミュニケーションの質改善が、必要とされているのです。
コミュニケーションの質を改善するには、対面でのコミュニケーションの機会を増やさなければなりません。
そこで、1on1ミーティングが注目され始めました。
生産性低下の問題
コミュニケーションの希薄化は、生産性の低下につながります。
IT技術の導入により、情報交換のデータ量は増えています。
しかし、量よりも質(内容)が重要です。
希薄化が生産性を低下させるのは、以下のような問題が生じるからです。
・指示命令したとおりに部下が動かない
・報連相が無く、問題への対応が遅れる
・会議で発言が無く、アイデアが出てこない
・仕事の負担が偏る
・人間関係の悪化により、社員が退社する。もしくはメンタルヘルスが悪化し休職する
以上のような問題が発生すると、仕事がスムーズに進まなくなります。
コミュニケーションの質の向上が、もとめられているのです。
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人材育成の前にモチベーションアップ
職場での人材育成に限らず、学校の教育でも同じです。
本人のやる気が高まっていないのに、教育しても効果は薄いものになります。
人材育成の前に、モチベーションアップの方が大切です。
しかし、部下のモチベーションを上げるには、どうすれば良いのだろうか?
管理職が最も頭を抱えるところです。
部下の頃と違って、管理職になると部下を育成する新しいスキルが必要になります。
モチベーションとは何なのか?
正しい理解が必要です。
モチベーションに対する勘違い
多くの管理職に、次のような考え方の傾向がみられます。
・仕事は、やる気を出して取り組むべきだ
・上司からの指示は絶対だ
・会社に入ったからには、会社に従うのは当然だ
・自分と同じようにやれば、部下も同じように成長できる
・自分ができることは、部下もできて当然だ
・自分にとっての仕事のやりがいは、部下も同じだ
管理職の価値観の基準で、仕事の評価が設定されがちです。
管理職自身は、その考え方で成果を出し、出世したのでしょう。
たしかに、管理職自身の仕事のスキルは、素晴らしいと感じます。
逆に言えば、管理職以外の人は、まだそのレベルに到達していないのです。
だから、管理職自身が期待するような仕事はできません。
部下のモチベーションに悩むのは、管理職が「全員、自分と同じ価値観で、仕事に取り組まなければいけない」と考えてしまうからです。
別に悪気はありません。
なぜなら管理職自身は、その価値観のおかげで成功してきたからです。
ただし、残念ながら全員、持っている価値観は異なります。
あまりに管理職の価値観を押し付けようとすると、反発が生まれます。
パワハラとかブラック上司と呼ばれる恐れがでてきます。
自分がやりがいを感じることに、他の人がやりがいを感じるとはかぎりません。
全員の価値観は異なる前提での、人材育成が大切です。
モチベーション理論に学ぶ
管理職自身もわかっていると思います。
やりたくない仕事に対して、いくら「やる気をだせ!」と言われても、やる気はでません。
人材育成では、本人の「やりたい」という気持ちを引き出すのが大切です。
ハーズバーグの動機づけ-衛生理論によると、給料や福利厚生などでモチベーションを高めようとしても、一時的な効果しかあらわれません。
継続的にモチベーションを持続するには、動機づけ要因を刺激し続けるのが大切としています。
マズローの欲求段階説によると、「本人が自ら成長していきたい」と考えられるようになるには、「承認欲求」を満たさなければなりません。
上司が、部下の存在を認める行為によって、はじめて部下はモチベーションが高まります。
「うちには良い人材がいない」が口癖の上司は、部下のモチベーションを下げてしまうということです。
「やる気を出せ」という言葉は「やる気出してない」と評価していると伝わる可能性がでてきます。
部下のモチベーションが低下するかもしれません。
上司の関わり方で、人材育成の効果が変わります。
部下とのかかわり方を改善し、動機づけ要因を引き出す方法として1on1ミーティングが広がっています。
【コラム】テレワークによるコミュニケーション不足の課題に対する対策方法
コミュニケーションを改善する1on1
上司と部下のコミュニケーションを改善するには、「コミュニケーションの機会を増やす」です。
しかし、単純にコミュニケーションの時間をつくったからといって、改善するわけでは無いです。
否定批判ばかりのコミュニケーションが、増えても逆効果です。
量が大切ですが、ある程度の質も重要です。
コミュニケーションの取り方にも工夫が必要です。
モチベーションアップのノウハウを詰め込んだコミュニケーション手法が、1on1ミーティングです。
しかし、1on1ミーティングもメリット・デメリットが存在します。
メリット・デメリットをしっかり理解して活用するのが大切です。
1on1ミーティングとは
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1の対面で行うコミュニケーションです。
年に1,2回の評価面談とは異なり、1週間に1回から1月に1回の短いサイクルで行います。
1on1ミーティングは、頻度が高いのが特徴です。
また、1on1ミーティングは評価面談ではないので、「話すテーマ」は部下が自由に決めます。
自由ですが、1on1ミーティングの目的には「部下の成長」も含まれます。
部下の成長につながるテーマが望ましいです。
たとえば「キャリアプラン」や「スキルアップ」などがテーマとして挙げられます。
大切なポイントは、そのテーマについて「上司がアドバイスを与える」のでは無く、「部下に考えてもらう」です。
1on1ミーティングは、部下の考える力を育み、成長につなげます。
◆目的は部下の成長
部下のモチベーションを高め、主体的な行動を促し、成長を期待します。
◆頻度が多い
年に1,2回の評価面談と異なり、週1回~月1回のペースで行います。コミュニケーションの機会が多いのが特徴です。
◆話をするのは部下
評価面談と異なり、ほとんどを部下が話している状態をつくります。話したい内容も部下が決めます。
◆評価しない
評価しないので、部下は安心して本音で話せます。
メリット、デメリット
1on1ミーティングは注意点も存在します。
メリット・デメリットについて紹介します。
【メリット】
・上司、部下の間に信頼関係が構築され、コミュニケーションの質が改善する
・部下の成長が促進される
・部下のモチベーションがアップする
・結果的に生産性が改善する
【デメリット】
・上司に負担がかかる
・上司の仕事する時間がうばわれる
・効果が出るまで時間がかかる(継続しないと効果が出ない)
・会社の理解が無いとできない
・上司のスキルレベルによっては、部下のストレス(逆効果)になる
短いサイクルで何度も1on1ミーティングを行った結果、上司と部下のコミュニケーションの質改善が期待されます。
なぜなら、信頼関係を高めるためのテクニックが含まれているからです。
しかし、場合によっては「部下のモチベーションが下がる」「生産性が低下する」など、逆効果になる可能性を理解しておかなければなりません。
1on1ミーティングの効果を高める
1on1ミーティングは、「単に会話をする」とは異なります。
「部下の話を聴く場」という意識が必要です。
1on1ミーティングの間は「部下が大半発言をしていた」という状態をつくるのが大切です。
また、1on1ミーティングで部下が話す内容は「本音で」が重要です。
「建前」だけでの会話になったら、何も生まれない場になります。
部下に「今は本音で話しても大丈夫なのだ」と思わせる環境づくりが、大切なポイントになります。
ここでは、「1on1ミーティング」で効果を出す進め方と大切なポイントを詳しく解説します。
1on1ミーティングの進め方
1on1ミーティングは、1回30分間~1時間の面談を、週1回~月1回のペースで行います。
そして、1on1ミーティングの進め方は以下のとおりです。
1.アイスブレイク
部下が話しやすい環境をつくる時間です。
5分間程度とります。
本題とは関係の無い「最近、何か良い出来事あった?」のような話題で会話をします。
継続的に行っている場合は、「前回のミーティングの後どうだった?」などでも良いです。
2.テーマ確認
何について話をしたいか、部下に決めてもらいます。
「今抱えている課題」「個人的な目標」などをテーマにします。
3.本題
そのテーマについて、上司は部下から話を引き出します。
話の進め方について、「GROWモデル」を活用すると良いでしょう。
GROWモデルとは、以下の順でミーティングを進めます。
・Goal:ゴールの状態
「ゴールは、具体的にどうなったら良いのか?」
・Reality:現状
「ゴールに対して、現状はどうなっているのか?」
・Option:選択肢
「ゴールと現状のギャップを埋めていくには何をする必要があるのか?」
・Will:行動の意思
「まず何から始める?」
4.まとめ
1on1ミーティングを受けての感想を話してもらいます。
以上のような進め方を、毎回の1on1ミーティングで行います。
1on1ミーティングが終わった時点で、部下の行動が決まっているのが望ましいです。
「行動する」が、部下の成長に大切だからです。
効果を高める大切なポイント
1on1ミーティングの進め方を紹介しました。
さらに、1on1ミーティングの効果を高める大切なポイントを説明します。
・アドバイスや提案を最小限に抑え、「部下自身が考える」をサポートする
・話を否定せず、受け止める。部下が「発言しやすい環境をつくる」を優先する
・結果を急ぐとアドバイスに走りやすいので、焦らない
・上司と部下の性格によって、「効果が出るまでの時間に差がでる」も認める
・仕事量など上司の負担が大きくならないように、全社的にサポートする
以上のようなポイントを考慮したうえで、1on1ミーティングを実施します。
1on1ミーティングは、上司のコミュニケーション能力の差によって効果に差が出ます。
勉強会などを行い、ブラッシュアップが大切です。
特に大きな壁が、全社的なサポートです。
会社は、早く結果を出すことをもとめます。
1on1ミーティングは、結果が出るまで時間がかかります。
課長が1on1ミーティングをしたくても、部長が課長にプレッシャーを与える環境では、評価面談になりがちです。
会社全体で、1on1ミーティングの理解が必要です。
【コラム】傾聴力・質問力とは~コーチングスキルを活用したトレーニング方法
聴く力を強化するコーチングスキル
1on1ミーティングは、聴く力が無いと効果が生まれません。
管理職の「聴く力」のスキルによって効果が左右されます。
聴く力の強化方法として、コーチングスキルのトレーニングをオススメします。
コーチングとは
コーチングとは、「相手の成長をサポートするスキル」です。
成長をサポートしますが、アドバイスはしません。
相手から「気づき」を引き出すに専念します。
1on1ミーティングと同じです。
つまり、コーチングスキルを強化すると、聴く力が強化され、1on1ミーティングのスキルも向上します。
コーチングスキルを強化する
コーチングスキルは「傾聴」「質問」「フィードバック」で構成されています。
◆傾聴
相手が本音でたくさん話してくれる環境づくりです。
「質問」「フィードバック」を活かすベースになります。
これが無いと、相手は建前でしか話をしてくれません。
◆質問
相手の視点を広げ、思い込みや可能性などを引き出します。
◆フィードバック
コーチが感じたことを、そのまま相手に伝えます。
鏡のような役割をします。
自分のことについて、自分では気づいていない部分が多く存在します。
フィードバックにより気づきが引き出されます。
これらを強化によって「聴く力」が強化されます。
重要なのは、トレーニングです。
管理職研修で、単発のコーチング研修がありますが、逆効果になる場合があります。
信頼関係ができてないないのに質問攻めをして、さらに部下からの信頼を失うケースがあるからです。
人材育成の効果を高めるには、聴く力のトレーニングを重視する企業研修を受けましょう。
【コラム】部下のモチベーション低下の理由~退職を決意する前に気づく~
会社の競争力を高める1on1ミーティング
管理職になると、チームをまとめなければなりません。
自分勝手な行動をする部下がいると、チームの雰囲気を悪化させるからです。
チームの雰囲気が悪くなると、生産性が低下します。
チームの雰囲気を良くするためには、コミュニケーションの質の改善が欠かせません。
コミュニケーションの質の改善には、信頼関係の構築が欠かせません。
そこで、1on1ミーティングが注目されています。
1on1ミーティングを取り入れると、職場内のコミュニケーションの質が改善されます。
さらには、部下のモチベーションアップにつながります。
その結果、会社の競争力の向上につながります。
しかし、1on1ミーティングには、メリットだけでなくデメリットも存在します。
それは、「難しい」という点です。
効果が、上司のコミュニケーション能力に左右されます。
さらに、効果が出るまで時間がかかります。
そのため、「上司のコミュニケーション能力強化」と「1on1ミーティングを長期間継続する」が大切です。
職場の雰囲気を改善し、生産性の高いチーム作りをしましょう。