人材育成の効果を高める1on1面談とOJTの方法
企業間競争は経営資源である人材の強さの競争と捉えています。
知識や経験の豊富な大企業が倒産するケースもあれば、小さなベンチャー企業が急成長するケースもあります。
その差は、所属する人材の成長意欲の差が現れていると考えています。1時間に1個しか売れない社員と100個売る社員では生産性が大きく変わります。
企業にとって人材育成の効果を高めるのは必須の課題です。特に重要となるのが面談です。
社員が退職する理由の上位に、「評価してもらえない」「成長を感じられない」「希望を聞いてもらえない」などが存在します。
一方的に上司の意見をきかせるだけの面談は、社員のモチベーションを低下させます。
人材育成の効果はバラつきます。とくに誰が人材育成の担当になるかが大きな影響を与えます。
さらには、人材育成が成功する絶対的な方法はありません。
人材育成の効果を高めるのに注目されているコーチングについて説明します。
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【目次】 |
人材育成の課題
数多くの経営課題の中で、人材育成は最も難しい部類に入ると考えます。なぜなら、課題の対象がさまざまな個性をもった人間だからです。
数多くの人材育成マニュアルの通りに行ったところで、効果が現れる人もいれば、効果が全く現れない人もいます。このようにしたら人材育成が成功する絶対的な方法はありません。
ティーチング(教える)の限界
日本の伝統的な人材育成方法はティーチング(教える)一辺倒の傾向がありました。ティーチングだけに頼るのは限界にきています。
日本の教育システムも、先生が生徒に一方的に教える詰込み型教育とか暗記型教育といわれています。基本的にはわからない問題は教えてもらった方が早いです。
ただし、それは答えが一つだけの時に限ります。
現代はさまざまな事柄が複雑に入り組んでいます。競争環境がグローバルに広がり、正解が一つとは言えない状況が多くなってきました。
絶対こうしなければならないとの答えが合わなくなってきたので、教えるのが難しくなってきました。
教わる方も「教えてもらう」に慣れきっており、教えてもらうまで行動しないケースがあります。
「教えられない先輩」と「教えてもらえないと動けない後輩」が共存してしまうと生産性が低下します。
また教わる方の価値観も多様化しています。
「先輩が後輩に教えるが当たり前」との価値観であれば、後輩は素直に教えてもらおうとの姿勢になります。
しかし、「会社の考え方が古い」などと異なる価値観であれば、押し付けられていると反抗的な気分になるかもしれません。
モチベーションが効果を左右する
人材育成の効果は、教えてもらう側のモチベーションに左右されます。
教える側も「やる気のない社員」を育成しようとしてもなかなか上手くいかないでしょう。教わる側もやりたくない学びを押し付けられても素直に学ぶ気がしないでしょう。
教わる側のモチベーションが上がらないのは、それを学ぶメリットがわからないからです。
「仕事を増やされる」「責任が重くなる」「失敗する可能性がある」などのデメリット面が前面にくると学ぶモチベーションが低下します。
人材育成の効果を高めるには、まず教わる側のモチベーションを高める仕掛けをつくらなければなりません。
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人材育成の効果を高めるコーチングとは
人材育成の効果を高める方法として、コーチングを活用する企業が増えています。
コーチングとは、教わる側のモチベーションを高めるスキルです。コーチングの基本を説明します。
ティーチングとコーチングの違い
コーチングとは、ティーチングの反対語と捉えてください。
ティーチングは、教える、アドバイス、指示する行為で、先生がクライアントに対して、先生の持っている知識や経験を与えます。
コーチングは答え(知識や経験)は、クライアントが持っている前提にたつので、原則、教えるやアドバイスは行いません。
コーチングではクライアントの話(答え)を引き出すに専念します。
ティーチングのメリットは速さです。デメリットは、考える機会を奪います。状況変化が複雑に絡み合う現代では、考える力が失われるのは大きなデメリットです。
コーチングのメリットは逆に考える力が強化されます。問題にぶつかったときの課題対応力がつきます。
デメリットは試行錯誤を要するので、時間、考える力が成長するまでの時間が必要です。
大切なポイントですが、ティーチングが不要なわけではありません。どちらもメリット・デメリットが存在するので、上手に補完しながら活用がもとめられます。
現時点では、ティーチングの比重が大きいところが多いので、コーチングの比重アップをオススメします。
人材育成の効果を高めるモチベーションアップの効果はコーチングの方が高いです。
「〇〇をやる気を出して取り組むように」と指示されるよりも、「やりたいことって何?」って確認されて、自分自身のやりたいことに取り組める方がモチベーションが高くなります。
コーチングの基本
コーチングも目的はティーチングと同じです。クライアントの目標達成のサポートです。ただしアプローチ方法が上述したように異なります。
コーチングとは、定期的に行うコーチングセッションを含んだ一連の流れをいいます。コーチングセッションとは、30分~2時間程度の面談です。
コーチングセッション終了時に次回のコーチングセッションまでの行動を宣言してもらいます。
コーチングセッション⇒行動⇒コーチングセッション⇒行動⇒・・の繰り返しによってクライアントの目標達成をサポートします。この一連の流れをコーチングと呼びます。
コーチングスキルとは、コーチングセッションで活用されるスキルです。「傾聴」「質問」「フィードバック」で構成されます。
コーチングスキルを活用して、クライアントから答えを引き出します。
大切なポイントは、クライアントから本音を引き出すです。
「これをやりたい」といっても否定されるだろうなと思われていたら、相手は本当にやりたいことを言いません。それではモチベーションを引き出せなくなります。
コーチングの効果を引き出すには、信頼関係の構築が最優先になります。
人材育成にコーチングを活用する
コーチングは聴く力に特化したコミュニケーションスキルであり、汎用性は高く、さまざまなシーンで活用できます。今回は1on1面談とOJTへの活用を説明します。
コーチングを活用した1on1面談
コーチングを活用した1on1面談(1on1ミーティング)が大企業を中心に行われています。1on1面談の進め方はコーチングセッションとほぼ同じです。
GROWモデルに沿った進め方を説明します。
【大切なポイント】
・話すテーマは部下が決める
・上司は聴き役に徹する「指示、指導、否定、批判、アドバイス」などは避ける
これらにより、何でも話しても大丈夫な環境づくりを行います。
GROWモデルとは次の単語の頭文字をとったものです。
Goal(ゴール)
Reality(現状)
Option(選択肢)
Will(意思)
GROWの順に沿って、1on1面談を行います。(テーマがキャリアプランの場合)
1.キャリアプランについて、なりたいキャリア(ゴール)の確認
2.ゴールに対して、現在の進捗状況(現状)の確認
3.ゴールと現状の差を埋める行動(選択肢)を確認
4.次の1on1面談までにする行動(意思)の宣言をしてもらう
部下がなりたいキャリアに向けて上司がサポートの繰り返しにより、部下のモチベーションは高まり、主体的に行動するようになります。
コーチングを活用したOJT
1on1面談は面談者のスキルの熟練度や時間が必要で実施側の負担が大きくなります。
人材育成の基本といえばOJTでしょう。OJTとは、実際の業務を行いながら先輩社員が後輩社員を指導する教育方法になります。
OJTのデメリットは「やらされ感」が出てくるのと、「教えてもらって当たり前感」がでてくることです。
自ら考えて行動するを促すコーチングを活用します。 1on1面談の流れGROWモデルを応用します。
1.教えるテーマについて、「何のための作業」なのか、「できるようになったらどうなる」など、ゴールを明確に伝えます。(本人のモチベーションが高まるように、メリットを重点的に伝えます)
2.ゴールに対して、現状(どこまで理解できているか)を部下に話してもらいます。(前回からの進捗を認めて、成長を実感させてモチベーションを高めます)
3.ゴールまでに、行動しなければならない選択肢を確認します。
4.今回する行動の意思を宣言してもらいます。
コーチングをOJTに活用すると、「やらさせられている感」を無くし、「自分がやりたいからやっている」「確実に成長している」感覚を与え、モチベーションアップにつなげます。
繰り返しによって、主体的行動が促され、逆に部下から教えてほしいと来る可能性が高まります。
【コラム】テレワークによるコミュニケーション不足の課題に対する対策方法
人材育成力の差が企業間競争を左右する
会社の経営課題としてもっとも興味が高いのが収益性向上でしょう。その中でも売上アップが一番わかりやすい経営課題として挙げられます。
売上アップに魅力的な商品開発、事業戦略の策定、マーケティングなどを考えます。
とても重要なポイントは、それらを行うのが社員である点です。
どんなに会社が力を入れているといっても、社員が成長している会社かそうでない会社かによって各経営課題の質が変わります。
どのような経営課題もそれにかかわる社員の能力次第の点です。
社員の能力高めるには、人材育成を強化する必要があります。
人材育成の効果を高めるには、社員のモチベーションを先に高めなければいけません。
社員のモチベーションを高めるのに、コーチングの活用が広がっています。ぜひ人材育成力の強化につとめてください。