人材育成とは~目的と課題と大切なポイント~
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、企業の人手不足感は解消されつつあります。
しかし、長期的に見れば人口が減少する日本は、人手不足の問題はまたやってくると考えられます。
そこで大切なのは、優秀な人材の囲い込みです。
しかし、優秀な人材は、獲得コストが高額になりがちです。
優秀な人材を、社内で育成する人材育成の仕組みが必要です。
人材育成は大切といわれながら、効果的に行うことは難しいです。
なぜなら、ビジネス環境も人材の価値観も変化し続けるからです。
人材育成に大切なポイントを説明します。
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【目次】 |
人材育成の強化に意味があるのか?
人材育成に力を入れていても、期待する効果が得られない場合、人材育成を強化する意味があるのか?と感じるかもしれません。
優秀な人材を確保した方が良いのではないかと。
残念ながら優秀な人材は、「すぐに見つからない」「獲得コストが高い」特徴があります。
経営資源をタイムリーに配分したいのであれば、もっとも手に入りにくい経営資源である人材を、コントロールする力がもとめられます。
社員の成長が生産性向上を左右する
結論的に言えば、社員が成長しないかぎり、会社も成長しません。
1時間に処理できる作業量の多い社員を抱えている会社ほど、生産性は高くなります。
斬新な商品、サービスを開発できる社員を抱えている会社ほど、競争力は強くなります。
会社を成長させたい経営者は、人材育成の強化が必要です。
従業員満足度に影響がある
人材育成は、従業満足度にも影響があります。
もちろん、「指示された仕事をただこなすだけが良い」「余計な仕事はしたくない」社員がいるのも現実です。
しかし、会社側がどのような人材が欲しいと考えているかが重要です。
「もし成長意欲の高い社員が欲しい」のであれば、人材育成の強化が必要です。
「この会社では成長できない」と感じたら、成長意欲の高い社員は、不満を感じて辞めてしまうかもしれません。
優秀な人材の囲い込みにも、人材育成の強化は意味があります。
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人材育成の対象と方法
人材育成といっても、仕事によって種類もさまざまです。
人材育成の対象と方法で、主な種類を紹介します。
階層別研修とビジネススキル研修
人材育成の対象ごとに、研修内容が異なります。
まず階層別研修があります。
新入社員研修、管理職研修などです。
役職ごとに必要なスキルを学ぶ研修です。
新入社員であれば、マナーや会社のルールなどを学びます。
管理職であれば、チームビルディング、人事評価方法などについて学びます。
また、仕事の種類ごとに、必要なスキルを学ぶビジネススキル研修があります。
研究開発部門であれば、知的資産や各種基礎技術に関する研修。
事務部門であれば、WORD、EXCELなどパソコンソフトの使い方研修などです。
社内教育(OJT)
人材育成方法として、主となるのは社内で仕事をしながら上司や先輩社員が仕事を教えるOJTです。
【メリット】
・コストが安い
・その会社ならではのスキルを学べる
【デメリット】
・教える側の仕事が止まる
・教える人の能力に左右される
・社内にない新しいスキルを教えられない
社外教育(OFF-JT)
仕事をしながら人材育成を行うOJTに対して、仕事を止めて人材育成を行う方法がOFF-JTです。
上述した、階層別研修やビジネススキル研修など、社外の講師から学ぶものが主になります。
メリット、デメリットはOJTの逆になります。
「コストが高いわりに、効果がすぐにあらわれるかわからない」ので、慎重に選ばれます。
しかし、会社を成長させるには、会社にない知識や情報を積極的に外部から取り込みも大切です。
OJTとOFF-JTを、バランスよく使い分けがもとめられます。
自己啓発
社員が自主的に能力開発するものです。
業務範囲外なので、会社側が指示できるものでは無いです。
自己啓発する社員もいれば、しない社員もいるでしょう。
会社側が、社員に自己啓発を望むのであれば、自己啓発したくなる仕組みの整備が大切です。
企業によっては、資格手当を支給する会社も存在します。
給料がアップする、希望する仕事へ移動できるなど、社員のメリットの提示が大切です。
そうでない場合、転職を目的に自己啓発されるかもしれません。
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人材育成の目標とスケジュール管理
人材育成で大切なポイントは、人材育成の効果の最大化です。
人材育成に力を入れているのに、いつまでも成長しない方法は避けなければなりません。
人材育成のPDCAサイクルを回し続ける取り組みが大切です。
人材育成の計画作成
人材育成のPDCAサイクルを回すのに、最初に必要なのが計画作成です。
人材育成計画は「経営戦略⇒人事戦略⇒人材育成計画」とおりてきます。
会社の経営戦略を達成するには、適材適所の人材配置が必要です。
必要なタイミングで適材の人材が必要です。
必要なタイミングに合わせて人材を育成していきます。
理想的には・・・
実際は、獲得できた人材のレベルに合わせて計画を作成する必要があります。
目標が高すぎると「無理」となって、チャレンジする前にあきらめるかもしれません。
目標が低すぎると「余裕」となって、努力をしないかもしれません。
本人とコミュニケーションをとりながら、モチベーションが高まる目標を設定し、それに向けてのスケジュール、計画を作成します。
人材育成の評価
スケジュールを作成したら、計画通りに進んでいるかPDCAサイクルのCheckが必要になります。
目標管理制度などに組み込んで、評価面談の中で確認するケースが多いでしょう。
大切なポイントは「できたか、できなかったか」ではなく、それらの要因の確認です。
「できた理由」は強化し、「できなかった理由」を取り除きます。
また、「努力したけどできなかった」場合にどう評価するかの視点も大切です。
評価面談の目的は、社員のモチベーションアップだからです。
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人材育成の課題
人材育成が難しいのは、多くの課題が複雑に絡み合うからです。
人材育成の課題について、主なものを紹介します。
重要なのは、モチベーションを引き出せるかに、効果が左右される点です。
大企業・中小企業ならではの課題
大企業、中小企業それぞれの場合の人材育成の課題を紹介します。
【大企業の課題】
・保守的、受け身な社員が多い
・責任を避ける
・会社の常識の枠に縛られる
いわゆる大企業病といわれるものに、陥る可能性があります。
そして、思うような人材育成の効果を上げられない場合があります。
優秀な人材を抱えながら、業績低迷に苦しい会社は大企業病の傾向が強いでしょう。
【中小企業の課題】
・教育訓練費が少ない
・人材育成の仕組みが無い
・人材育成のスキルが無い
・人材育成の時間が取れない
・会社の成長が期待できない
会社が成長しない⇒人材育成にお金と時間をかけられない⇒人材が成長しない⇒会社が成長しない⇒・・・
負のスパイラルに入ってしまうと、人材育成が難しくなります。
急成長するベンチャー企業は、会社の将来性を前面に押し出して、優秀な人材を集めて正のスパイラルを作り出します。
中小企業であっても、将来は大きく成長していくビジョンを示し、社員に信用されることが大切でしょう。
社員教育の効果も担当者の能力に左右される
上述したように、社員教育のメインはOJTです。
仕事を教える上司や先輩社員の教える能力によって、人材育成の効果は左右されます。
大企業の場合は、人材も豊富で、OJTの仕組みも整っているので、わりと効果的に行われます。
しかし、中には教えるのが下手な人もいます。
教えるのが下手な上司の下についた社員は不幸です。
OJT担当者の人材育成も課題です。
中小企業の場合は、人材も少なく仕組みも無いところが多いです。
また熟練の技術者などは、「見て覚えろ」「技を盗め」も存在します。
「教え方も、時代とともに変えていかなければならない」考え方が必要です。
若手社員の価値観は、毎年変化し続けます。
教える側は、変化に合わせられないといけないのです。
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人材育成で大切なポイント
人材育成で大切なポイントを説明します。
重要なのは、教えられる側のモチベーションの状態です。
やる気のない社員に教えるのは大変です。
まず、やる気を高める施策が大切です。
教えられる側のモチベーションを高める
会社は、社員の仕事に対するモチベーションを高める施策が必要です。
社員自身が「もっと仕事ができるようになりたい」となるから、人材育成の効果が高まるのです。
すぐに思いつくのが「もっと給料が欲しいから仕事ができるようになりたい」要望に応えて、給料などでモチベーションを引き出す方法です。
給料などご褒美でモチベーションを引き出す効果は、即効性がありますが、長続きしません。
何度も続けるには、大きなコストを伴います。
会社にもとめられるのは、「仕事そのもの」に対するモチベーションを引き出すマネジメントスキルです。
ティーチングだけでなくコーチングも活用する
人材育成の方法としてティーチング(教える)だけの方法は見直されています。
指示待ち、受け身の社員に育ってしまう可能性があるからです。
それに代わって、コーチング(考えさせる)の活用が広がっています。
コーチングは、「自分で考えて行動する」を繰り返す方法です。
自分の力で物事を達成している感覚が、得られる成長を実感しやすくなります。
達成感と自信が生まれ、さらに高めたいモチベーションを引き出します。
仕事は未知の課題への対応が多いので、「考える力」が重要です。
コーチングの活用が注目されていますが、ティーチングが不要なわけではないです。
コーチングは、ティーチングよりも時間がかかります。
大切なのは、ティーチングとコーチングのバランスです。
人材育成の方法・手法・やり方に正解は無い
どうすれば人材育成が効率よくできるのか?
人材育成の方法、手法、やり方などを知りたいと考えるでしょう。
人材育成は、会社の仕組みが始まってから、ずっと必要とされています。
それでもいまだに課題となっているのは、絶対的な人材育成方法が見つからないからでしょう。
ビジネス環境が大きく変わり、社員にもとめられる能力が大きく変化してるからです。
大量生産時代の上の指示を聞いていればよかった時代と、自ら新しいものを生み出さなければならない時代とは異なります。
社員が感じるプレッシャーは、今の方がはるかに大きいでしょう。
人材育成の方法は、常に「去年よりいい方法は無いか」と、PDCAサイクルを回し続ける方法しか無いでしょう。
【コラム】一体感の醸成方法~チームワークとコミュニケーション~
人材育成能力の高い会社が強くなる
会社の目的は、会社ごとにそれぞれ持っていると思いますが、持続的成長をしなければ目的を果たせません。
会社が持続的成長するには、売れる商品・サービスの開発、販売力の強化となるかもしれません。
しかし商品、サービス開発、販売、マーケティングなども担当するのは人材です。
新しいIT技術などの導入を決めるのも扱うのも人材です。
人材のレベルの高さによって、会社の競争優位性は変わってきます。
会社の競争力を高めたいのであれば、人材育成能力の強化が大切です。