企業が導入進める1on1面談~マネジメント能力アップ~
管理職になると、管理能力がもとめられます。
特に、チームマネジメント能力が重要となります。
チームの成果を高めるために必要なことが、部下の成長と、チーム内の協力関係です。
チームをまとめるために必要となるのが上司と部下、チーム内の信頼関係です。
これらマネジメントの課題解決の基盤となるのが、コミュニケーション能力です。
特に上司と部下の間のコミュニケーションのスムーズさによって、仕事の生産性が変わります。
そこで、管理職のチームマネジメント能力強化を目的に、1on1ミーティングを採用する企業が増えています。
1on1ミーティングの効果を高める、大切なポイントについて説明します。
1on1ミーティングは、上司のコミュニケーション能力によって効果が大きく左右されます。
ただの雑談にならないことが大切です。
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【目次】 |
マネジメント能力とは
マネジメント能力とは、シンプルに表現すると「管理能力」です。
マネジメントとリーダーシップの違いが議論に上がるケースがあります。
しかし、あまり分けて考える必要は無いように感じます。
リーダーには、管理能力がもとめられます。
管理職にも、リーダーシップがもとめられます。
敢えて分けるなら、リーダーシップは方向性を示してひっぱる力、マネジメントはその方向に効率よく進めるようにコーディネートする力です。
マネジメント能力といっても、対象範囲は広いです。
マネジメントの対象は多い
経営者や管理職が管理、マネジメントしなければならない事柄は幅広く存在します。
主な項目は、次のようなものでしょう。
・仕事の進捗マネジメント
仕事の目標と期限を設定し、計画通りに進むように調整します。
・チームマネジメント
仕事の生産性を高めるために、適材適所に人材を配置し、組織をワンチームになるよう調整します。
・モチベーションマネジメント
社員のモチベーションを高めるようにコントロールします。
・メンタルヘルスマネジメント
社員のメンタルヘルスが悪化しないように、ストレス要因をコントロールします。
・リスクマネジメント
地政学リスクや災害リスク、競合他社の動き、事業の失敗などにより、経営に対する影響を最小限にするように調整します。
・お金のマネジメント
割り当てられた予算を、最も生産性が高まるように配分します。
・人材育成のマネジメント
人材の成長がない限り、会社は成長しません。社員が成長できるように調整します。
・タイムマネジメント
時間も限りある資源です。時間をいかに有効に使えるかが生産性に影響します。時間の使い方をコントロールします。
・アンガーマネジメント
近年は、アンガーマネジメントも注目されています。怒りで失敗を起こさないように、感情をコントロールします。
これら以外にも、管理が必要なものは、マネジメント能力がもとめられます。
情報収集力と意思決定力
マネジメント能力は、迅速な意思決定力がもとめられます。
しかし、素早く間違った意思決定をしたら困ります。
意思決定の精度アップが必要です。
意思決定の精度を高めるために必要なのは、情報収集力です。
意思決定に必要な情報をどれだけ集められるかが、マネジメント能力を左右します。
例えばリスクについて、災害リスクについては考慮できていたけど、感染症の世界レベルの拡大リスクを見落としていたらどうなるでしょう。
もしもの時のために1年分の運転資金を蓄えている会社と、自転車操業している会社ではリスクマネジメントのレベルの差は大きいです。
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管理職は人材育成能力がもとめられる
会社のマネジメントにおいて、最も大切なのは人材育成に関するマネジメント能力です。
なぜなら、すべてのマネジメントを経営者一人で行うのは無理だからです。
また、質の高い情報を得られるかどうかは、人材の専門家度によって左右されます。
マネジメント能力を高めるには、人材育成能力の強化は欠かせません。
成果の拡大と人材育成
マネジメントの目的は、成果の最大化です。
そのために、生産性を高めなければなりません。
生産性を高めるには、能力ある人材を適材適所に配置がもとめられます。
そのためには、能力ある人材を育成しなければなりません。
人材が育たなければ、リーダーのサポートが必要となり、生産性が低下します。
人材育成の効果とモチベーション
人材育成に関するマネジメントを、リーダーにはもとめられます。
人材育成の効果を高めるためには、モチベーションマネジメントが必要になります。
モチベーションの低い社員、モチベーションの高い社員は、人材育成の効率に差がでます。
リーダーには、社員のやる気をマネジメントする能力がもとめられます。
近年、社員のモチベーションをマネジメントする方法と注目されているのが、1on1ミーティングです。
部下の成長を促す1on1ミーティング
1on1ミーティングは、部下の成長を目的に行われるケースが多いです。
指示命令だけでは、部下が動かないからです。
また、仕事量が増えているのに対し、人手不足が進んでいます。
上司と部下とのコミュニケーションが、希薄化していることも、問題の背景にあります。
1on1ミーティングについて説明します。
1on1ミーティングとは
1on1ミーティングとは、上司と部下の1対1の面談をいいます。
ただし、評価面談とは目的が異なります。
評価面談と異なる点は、頻度と話す内容です。
頻度は、週1回~月1回のペースで行います。
内容は、なんでもOKですが、仕事の課題以外のテーマにするのが一般的です。
最も大きな特徴は、上司が指導、アドバイスをするミーティングではなく、部下が「自分自身で考える」をサポートするミーティングです。
面談中、ほとんど部下が話しているという状態になります。
マネジメントに活用する1on1ミーティング
1on1ミーティングをマネジメントに活用がもとめられています。
仕事の進捗を管理するとは、部下の行動を管理するです。
部下が期待通りに行動してもらう必要があるため、部下のモチベーションマネジメントが管理職の主な仕事になります。
そのモチベーションマネジメント方法として、1on1ミーティングの活用が広がっているのです。
1on1ミーティングのメリット
1on1ミーティングの一番のメリットは、上司と部下の信頼関係の構築です。
上司と部下で本音で話せる回数を増えると、1on1ミーティング以外でもコミュニケーションをとりやすくなります。
その結果、仕事の生産性が向上します。
上司も部下も、お互いの考え方を理解しやすくなります。
働き方改革で働く時間が短くなる一方、人手不足で仕事量が増えています。
いかにコミュニケーションの質を上げていくかが、大きな課題になっています。
部下の本音を引く出すコミュニケーションが、内発的動機づけを行う可能性も高まります。
・仕事の生産性の向上
・従業員満足度の向上
・メンタルヘルスの向上
・上司と部下の信頼関係の向上
など
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1on1ミーティングで話す内容
1on1ミーティングを導入したは良いが、「何を話せばよいのか」と戸惑う上司も多いようです。
極端に言えば、上司は聴き役に徹するので、何も話さなくて良いです。
ただ、部下が話しやすいように、話を促すのはもとめられます。
1on1ミーティングの進め方
1on1ミーティングについて、進め方のルールはありません。
しかし、ただの雑談になっても、モチベーションアップの目的を果たせません。
そこで、話の流れにGROWモデルに沿って進めるのをオススメします。
GROWモデルとは、次の単語の頭文字をとったものです。
Goal(ゴール)
Reality(現状)
Option(選択肢)
Will(意思)
話の流れは、次のようになります。
1.部下に「話したいテーマ」を確認する
2.テーマに対して、どうなったら良いのか?ゴールの状態を具体化する
3.ゴールに対して現状どうなっているのかを具体化する
4.ゴールと現状のギャップを埋めるために、何をする必要があるのか行動(選択肢)を具体化する
5.まず、どの行動から始めるか意思を示してもらう
最後に行動を促すのが大切です。
話す内容のマネジメント
おそらく1on1ミーティングで困る状況は、次のようなケースではないでしょうか。
・質問しても、一言しか答えない
・沈黙が困る
・期待した答えが返ってこない
・ただ愚痴を聞かされる場になる
まず大切なポイント。
1on1ミーティングが高頻度で行う理由は、「1回だけでは上手くいかない」が前提だからです。
そのため、上手くいかなくてOKという感じで、上司もリラックスして行うのが大切です。
緊張した場面になると、部下も緊張して話せなくなります。
愚痴があるなら、愚痴を全部吐き出させるぐらい聴いてあげてください。
まずは、信頼関係づくりが大切です。
信頼関係ができたら「どうなったら良いのか?」ゴールを尋ねてみましょう。
話す内容のマネジメント方法は奥が深いので、コーチングスキルの習得をオススメします。
【コラム】テレワークによるコミュニケーション不足の課題に対する対策方法
1on1ミーティングの留意点
有効な1on1ミーティングですが、留意点もあります。
「効果が出るまで時間がかかる」「上司のスキルに左右される」です。
1on1ミーティングを始めた瞬間から、すぐに効果が得られるわけではありません。
極端に言えば、部下から苦手と感じられていたら効果が出にくいです。
まずは、信頼関係構築から取り組まなければなりません。
1on1ミーティングの留意点について説明します。
人事評価制度と切り離す
1on1ミーティングは、評価面談とは異なります。
人事評価制度と切り離すことが大切です。
評価されるとわかれば、部下も警戒しながら話をするでしょう。
1on1ミーティングで重要な「本音を引き出す」ができなくなります。
人事評価制度と切り離していても、上司が評価するような話し方をすると、評価しているのと同じになります。
「それはもっと頑張った方がいいな」のように言うと、評価されているように感じられます。
なんでも話しても大丈夫という、環境づくりが大切です。
1on1ミーティングは継続が大切
1on1ミーティングは、意外に難しいです。
「評価しない」が、慣れるまで難しいです。
部下も、最初は警戒します。
また、部下から苦手と感じられている場合も同様です。
「なんでも話してもいいよ」と言われても警戒します。
だからお互い慣れるまでは、1on1ミーティングとして機能しません。
上手くいかないからと、止めてしまっても効果がでません。
だから信頼関係ができるまで根気よく、「頻度を上げて、継続する」が大切です。
上司の負担が大きい
1on1ミーティングの特徴は、高頻度であることです。
1人30分を、週1回のペースで行っていたとします。
部下が10人いたとしたら、毎週5時間1on1ミーティングに費やすことになります。
余裕を見て考えると、週1日、上司は自分の仕事ができなくなります。
週1日分の仕事を、上司から減らさなければなりません。
また、最初は部下の不平、不満を聞かされる場になるケースも多いでしょう。
給料が低いなどの不満をきかさせられても、上司にはどうすることもできないかもしれません。
話は聴いてあげるものの対応できない状況に、上司自身のストレスになってくる可能性があります。
上司自身も、さらに上司から1on1ミーティングを受けることが大切です。
上司のスキルに効果が左右される
1on1ミーティングの効果は、上司のコミュニケーション能力に大きく左右されます。
1on1ミーティングはすぐに効果が現れるものでは無いです。
そして、コミュニケーション能力が無いと、いつまでたっても効果が現れない可能性があります。
1on1ミーティングは、傾聴力、質問力、フィードバック力がもとめられます。
傾聴力が無いと、部下はほとんど話さない、本音を話さない状況になります。
質問力が無いと、部下を質問攻めになるかもしれません。
フィードバック力が無いと、評価面談と変わらない面談になるかもしれません。
1on1ミーティングを導入するなら、上司のコミュニケーション能力アップが大切です。
1on1ミーティングとコーチングスキル
1on1ミーティングは、信頼関係ができるまで効果が出ないため、難しいです。
1on1ミーティングのスキルアップの方法は、コーチングスキルをオススメします。
1on1ミーティングの内容は、ほぼコーチングセッションと同じだからです。
コーチングセッションは、トレーニングのカリキュラムが確立されているからです。
コーチングスキルとは
コーチングスキルとは、「傾聴」「質問」「フィードバック」で構成され、相手に本音でたくさん話してもらうスキルです。
1on1ミーティングと、目的は同じです。
コーチングスキルの強化によって、相手は本音でたくさん話してくれるようになります。
コーチングスキルも、トレーニングが必要なスキルです。
多くの方が上達に苦労します。
聴く力を強化する
相手に本音でたくさん話してもらう力を「聴く力」といいます。
「聴く力」を強化する壁が、いくつか存在します。
まず日本語であることです。
「聴く力」が無くても、「聴けてる気分」になれるからです。
次に「上司は、指示、命令、アドバイスが得意」という点です。
聴くに徹するよりも、アドバイスしたくなります。
その方が早いからです。
だから「聴く力」を強化するには、「丁寧にアドバイスをしない」を意識して、トレーニングを継続する必要があります。
【コラム】連鎖退職とは~若手社員が連鎖退職する原因と対処方法
1on1ミーティングで組織力強化
1on1ミーティングを続けると、上司と部下の信頼関係が構築され、部下は安心して上司に報連相できるようになります。
仕事がスムーズに進むようになり、生産性が上がります。
職場のコミュニケーションが活性化すると、組織力がアップするのです。
組織をワンチームにする
2019年流行語大賞に、ワンチームが選ばれました。
組織に一体感をつくる取り組みをいいます。
組織の一体感を醸成する場合、組織の3要素を強化する必要があります。
・共通目的
・貢献意欲
・コミュニケーション
コミュニケーションは、組織の強化に必要な要素なのです。
問題が発生しても、「報告したら、怒られるから止めとこう」となったら、問題が先送りにされてしまいます。
問題が発生したとき、すぐに報告できる関係性が築かれているかどうかで、生産性が大きく変わるのです。
聴く力コミュニケーションの重要性
1on1ミーティング、コーチングセッションの継続で強化されるのが聴く力です。
報連相をしてもらえる力です。
上司と部下の信頼関係ができていなければ、部下は報連相しないでしょう。
良いアイデアがあっても、自分の中で押し殺すでしょう。
イノベーションも生まれない、生産性の低いチームができます。
組織を生産性の高いワンチームにするには、聴く力コミュニケーションが重要なのです。
コーチングスキルを取り入れた、コミュニケーション能力の強化が大切です。
【コラム】傾聴力・質問力とは~トレーニングとコーチング・コミュニケーション
コミュニケーション能力を強化する
会社では、上司と部下のコミュニケーションが、常に課題でありつづけます。
逆に言えば、コミュニケーションの課題を改善できた職場ほど、生産性のアップにつながります。
コミュニケーションは、通信です。
「送信」と「受信」があって、初めて成り立ちます。
つまり、「話す力」と「聴く力」です。
多くの方は「聴く力」が低いです。
逆に言えば、「聴く力」の強化によって、大幅にコミュニケーション能力が高まります。
コーチング・コミュニケーションをマスターして、1on1ミーティングを効果的に行うコミュニケーション能力を高めましょう。